知らない世界,誰も見たことのない世界を,知りたい,見てみたい,という感情は人間誰もがもっているものでしょう。そういう世界を山々はもっており,二度と同じ場面を見られないという状況が,それをより魅力的なものにしています。僕たちは,そういう世界を求めて,ネパール海外遠征という山旅へ出かけました。
 2月6日,札幌を出発,バンコク経由でネパールの首都カトマンズへ。あまりにも雑然としたこの街で,14日まで最終準備をする。山登りは,移動した後,16日から始まった。
 日本人メンバー5人,ネパール人メンバー7人,ポーター43人という大所帯で,鬱蒼とした樹林帯を通り,高山植物帯を抜け,真っ白な雪の世界へと至る。天気の良い乾期とはいえ,まだ冬,雪の多さから思ったように進まない。本格的な登山活動を展開させる基地(Base Camp: BC, 4800 m)についた時点で,早くも予定より4日遅れていた。
 目標とする山,ドルジェ・ラクパ峰は頂上に向かって一直線に伸びる3本の尾根が印象的な美しい山で,僕たちは,この尾根の一本,西稜にルートを取り頂上を狙いました。登山活動は,日本人メンバー5人とネパール人メンバー3人の計8人を,3つの小隊に分け,最前線でのルート工作,それのサポート,BCから荷物の補給,と役割を分担して行った。BCから頂上までかなり距離があるので,途中,5400 m,5650 m,6050 mの3カ所に高所キャンプを設けた。BCから頂上まで標高差約2000 m,短いように感じるが,一日に新しくルート工作できるのはせいぜい200m程度ということを考慮すると,その遠さが分かる。
 腿まで埋まる雪の斜面をラッセルし,氷の斜面を登る。核心部では,両側数百m切れ落ちた細い稜線,堅く締まったブルーアイスの壁を行く。行く手を阻むのはルート状況だけではなく,高所という条件も大きい。5000 mにおける酸素濃度は,地上の約半分しかない。この低酸素,低圧が,体の動きと判断力を鈍らせる。
 核心部全て(6500 mまで)をルート工作した後,僕たちには,頂上を狙うチャンスは3回しか残されていなかった。1,2回目のアタックチャンスを天候の変化により断念させられる。あと1回。
 3月19日,岡,富山,ゲルブ・シェルパの3人で,6050 mのラストキャンプから最後のアタックに出発する。時間は2:40,もちろん真っ暗,ヘッドランプと月明かりを頼りにロープをたどって進む。氷壁,クレバスをかわし,荒い呼吸で最後の斜面をのぼる。12:41,頂上着,6966 mの頂上からは世界最高峰エベレストが見えた。しかし,自分たちが世界のてっぺんにいるように感じられた。慎重に下山し,ラストキャンプに戻ったのは18:40,実に16時間の行動だった。

 

 

 

BCから望むドルジェ・ラクパ峰
核心部のナイフリッジと氷壁
 
日本人メンバーと現地スタッフ
(前列左から二人目が僕です)