
| 放射性同位元素,X線,国際規制物資について一言述べたいと思います。放射性同位元素は放射線を出す物質のことであり,かの有名なキュリー夫人が発見したものです。また,近年のライフサイエンスの目覚ましい発展はこの放射性同位元素の利用があったからに他なりません。X線は胸部や胃などの診断に使われ,またX線CTと言う言葉もしばしば聞いていることと思います。がんの治療にも利用されます。国際規制物資はウランなどの核原料・核燃料になる物質のことで,身近では電子顕微鏡の試料作成に使われる酢酸ウランなどが相当します。 放射性同位元素から出る放射線とX線は使用によっては大変危険なものになりますし,核原料・核燃料は核兵器製造のもとになります。したがって,その使用に当たっては厳しい法律が適用されております。日本では,放射性同位元素について昭和32年(1957年)に「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」,昭和35年(1960年)にその法律の施行規則(総理府令)が制定されております。X線に関しては,昭和38年(1963年)に人事院規則10-5「職員の放射線障害の防止」および昭和47年労働安全衛生法とその施行規則である「電離放射線障害予防規則」(厚生労働省令)が制定されております。国際規制物資については昭和32年(1957年)に「核原料物資・核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」(法律)が制定されております。 現在,北海道大学ではこれら三つを放射性同位元素等管理専門委員会一つでカバーしております。しかしながら,それぞれ異なる法令の規制下にあり,来年度(平成16年)から国立大学は国立大学法人になり,X線に関する適用法令も人事院規則10-5から労働安全衛生法に変わる事などから,それぞれ別の専門委員会を設置した方がより現実的であるとして,検討を始めることにしました。 さて,この様に法律で厳しくかつきめ細かに使用規制がなされていてもそこは人間のすることですから,全くミスが無いとは言い切れません。特に,法律は時代に対応して適宜改正されますので,その都度それに適合した措置を取らなければなりません。しかし,ときにはそれを見逃してしまうこともあります。4月下旬に工学研究科のある研究室で未登録,未承認の放射性同位元素が発見され,文部科学省のホームページの他おもな全国紙に掲載されたことから皆さんもご存知のことと思います。詳しく調査した結果,この放射性同位元素は法律が出来た昭和32年以前に購入されたもので,当時は法律が無いため登録や承認を得る必要性は無く,法律違反にはなりませんでしたが,昭和32年に法律が制定された段階で科学技術庁原子力局放射線安全課(現文部科学省科学技術学術政策局原子力安全課)に登録とその使用室等の承認を申請しなければなりませんでした。当時購入された先生はその放射性同位元素の存在を忘れてしまったのか,法律制定をうっかり見逃してしまったのか,今となっては昔のことなので推定の域を出ませんが, いずれにしても人為的ミスであることは確かです。現在,全学を挙げて再調査しておりますが,この原稿が掲載される頃にはまた新たな問題が出ていないとも限りません。人の注意力に限りがあるとするならば,それを補える制度あるいは体制作りもまた国立大学法人化に向けての課題かも知れません。
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放射性同位元素等管理専門委員会 |