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北海道大学大学院公共政策学教育部
(公共政策大学院)1年次
山下 直樹 |
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私は,2005年の春に北大教育学部を卒業し,同じ時期に開講された専門職大学院・北大公共政策大学院に第1期生として進学しました。教育学部に在籍中は,教育史・比較教育ゼミに所属し,私の出身地である北海道・岩内町の近代教育史について勉強しました。自分の出身地であるがゆえに,その地域の歴史は非常に身近なものとして捉えることができ,また,岩内と北海道・日本全体の歴史とを照らし合わせたときに浮かび上がってくる新たな歴史像は,私の歴史・社会・教育に対する認識を大きく変えてゆくものでした。そうした学部時代の知的興奮の連続は,忘れられない体験です。
そうしたなかで,今後の地域社会のあり方全体に興味を持つようになり,北大公共政策大学院(Hokkaido University School of Policy Studies 以下,HOPSと略す)への進学を決めました。以下では,HOPSに入学して以来の体験を中心にお話したいと思います。
「教育の問題は,教育のことだけを考えていても解決されていかないのではないか」―私が教育学部生時代に強く持っていたこの疑問が,HOPSへの進学を志望した際の動機のひとつでした。教育問題には政治・経済・財政などさまざまな領域が関わりあいます。例えば,最近「義務教育費国庫負担」に関する問題が大きくクローズアップされていますが,この問題に関して,「教育」の観点からは「教育費を地方の裁量に委ねるのは,教育費の削減を招き,教育権の保障を困難にする」という主張がなされることがあります。しかし,この論理を主張し批判するだけでは,実際に政策の方向性を変えてゆくのは難しいのではないか,と私は思うのです。国や地方の財政は教育費だけで構成されているわけではありません。行政・財政全体が今どのような問題を抱えており,教育はその中でどう位置づけられ,どういった政治過程を経て政策が決定されてゆくのか,そうしたことを考慮してゆかなければ,有効な対案を示すことはできないのではないでしょうか。そういった意味で,政治・経済・財政・法律などさまざまな領域を「政策」という観点から学べるこの大学院は,私にとって魅力的でした。
HOPSは「文理融合」を特色として打ち出しています。本当に融合できるのかといった懐疑論もありますが,文系出身の私が理系の授業を受けてみると目からウロコでした。例えば,現在「環境技術政策論」という講義を受講していますが,そこでは「水資源をいかに確保するか」という問題が提起されます。それに関して,文系出身の私は,例えば「ダムの設置に際しての行政と住民の対立」などといった問題を想起するのですが,しかし実際の授業では「全国民が水に不自由しないためには,一人当たりどれだけの土地面積が必要か」といったような根本的な問題から考えてゆくのです。そういった前提的な知識,「理系」の実証的な知識なくして,先に私が想起したような問題を考えてゆくのはそもそも無理であると強く感じました。
今,院生の中で社会人院生は20名ほどであり,約半分をも占めています。そして面白いのは,彼らの経歴がさまざまなことです。例えば,現役の政治家から,北海道庁や札幌市役所の職員,あるいは小規模自治体の職員,障害者支援のNPOを立ち上げた方,他県から週に一回通う自治体職員,建設会社で働く方等々がおり,本当に多彩な方々と同じ院生として共に学んでいます。そうした実際の現場で経験している方々との会話は,やはり面白い。どのような仕事に取り組み,どのような問題に直面したのか。裏事情は何か。実務家教員からだけではなく,同じ院生からもそういったさまざまな領域における切実な現実問題を認識させてもらえるのです。一方学部卒院生も,法学部出身者だけでなく,私も教育学部出身であるし,工学部出身者もいます。院生同士の議論がさまざまな視点からなされることは言うまでもありません。
このように,自己の興味関心領域をスペシャライズしてゆくのはもちろんですが,それと同時に,「いかにジェネラルな視点を形成してゆくか」が重要です。それを「現実の政策実践」との関わりから取り組んでゆける場が公共政策大学院だと私は考えています。HOPSでは,特にその点が意識されています。HOPSを志望し,私たちと共に広いフィールドから政策を議論して行こうと思う方々が出てこられることを期待しています。 |
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