特色ある大学教育支援プログラム レポート
 
特色GP・現代GP取組活動フォーラム/パネル展
「知のフロンティアへ」開催
 
 
 
 平成18年3月17日(金)本学クラーク会館講堂で,文部科学省が実施する教育改革支援事業(特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)・現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP))に採択された5つの教育取組のフォーラムとパネル展を開催しました。
 このたびのフォーラムとパネル展は,本学の優れた教育取組の活動内容や成果等を,学内や他大学の教育改善等の取組に役立ててもらうこと,また本学新入生や本学への入学を希望する高校生には,主体的な勉学活動への動機付けの指針となることを期待して開催したものです。
 当日のフォーラムには,市内の高等学校の生徒,4月入学予定者,他大学のGP取組担当教員や一般市民等,150名の幅広い参加者に集まっていただきました。
 フォーラムでは,各取組の照会のあと,参加者の質問に答えるかたちで活発な討論が行われ,北大の教育改革の取組に対する学外の市民等の関心・期待の高さを知ることができました。
 
 プログラムの内容は以下のとおりです。
 
○パネル展示 17:00〜19:00
 「平成15〜17年度 特色GP・現代GP取組」
 
 
進化するコアカリキュラム−北海道大学の教養教育とそのシステム−
高機能センター 教授 小笠原正明
 北大の教養教育は,札幌農学校の「全人教育」の伝統を受け継ぎ,平成13年度以降,フィールド体験型の一般教育演習(練習船,牧場,演習林などでの合宿授業),PMF・札響と連携した芸術科目などを加えて年々進化しています。18年度からは,数学・理科の基礎科目,自然科学実験,外国語科目,情報科目も一新されます。
 今回のフォーラムの成果を活かして,18年度には,より広範な高校生の参加を期待して,7月下旬のオープンキャンパスの中で,初習理科の模擬授業(演示実験)等を含む独自のフォーラムを開催することにしました。
 
 
アジア・アフリカ諸国を視野においた国際獣医学教育協力体制の確立
獣医学研究科 教授 前出吉光
 本プログラムでは,獣医学研究科の学生と教員をアフリカのザンビア大学と韓国のソウル大学に派遣して,日本では経験できない家畜の伝染病を学ぶとともに,現地の学生や教員との交流を深めることによって,将来,我が国のみならずアジア・アフリカ諸国発展のために貢献できる国際的視野を持つ人材の養成を目指します。
〔実施した取組の成果と今後の事業への反映〕
 初年度(16年度)は,教員6名,大学院学生3名がザンビア大学獣医学部を訪問して,本取組の概要をザンビア大学教官に説明し,協力を要請しました。2回の両校教官合同会議の結果,両校間の相互教育の実施が了承され,ザンビア大学獣医学部長との間で合意文書が取り交わされました。同会議の席上で,ザンビア大学の教官の1人が,「これまで自分たちは日本から援助を受けるばかりであったが,今度は自分たちがお返しをする番であり,自分たちの教育能力が試されることになる。」と述べたことが印象的でした。
 平成17年8月,教員6名,大学院学生4名及び学部学生7名(自主参加)がザンビア大学において,前年度の両校合意に基づく教育研修に参加しました。本研修では,家畜の熱帯性伝染病や野生動物保護についてザンビア大学教官による講義,実習が連日行われました。全て英語による授業にもかかわらず,参加学生は全員非常に熱心に聴講し,質問も活発で,日本での彼らとは別人のようでした。さらに,本研修では,教員と学生が同じ宿舎で寝食をともにしました(安全対策のため)が,約1ヶ月の共同生活で,学生同士及び学生と教員との相互の理解が深まったことは,学生の人間的成長にも良い影響を与えたようです。また,ザンビアとの交流を通して,あるいは,JICAザンビア事務書の行為で,ザンビア国内で活動する青年海外協力隊の諸君との親善交流が行われたことなどにより,参加学生の国際協力に対する関心も高まったようです。このように,今回の研修では本プログラムの目的とする学生教育を実践することができました。研修終了後,参加学生,教員全員に今回の研修に対する評価と提言を含む感想文の提出を求め,それらをまとめて研修報告書を作成し,関係各位に配布しました。今後は,参加者の提言を次回の研修に反映させ,本プログラムの更なる充実を図りたいと思います。なお,ザンビア研修報告書をご希望の方は,お送りいたしますのでお知らせください。
(問合せ先 : 札幌市北区北18条西9丁目北大獣医学部 前出吉光宛) 
 
 
大学院・社会人教育支援e-カリキュラム
情報科学研究科 教授 本間利久
 インターネット(e-learining)を利用して,学内外から北大大学院の講義を受講することができます。講義内容は,脳科学や情報科学など最先端の研究分野を中心に構成され,個性豊かな教員の講義をいつでもどこでも聴くことができます。また,講義のビデオやスライド,テキスト,アニメーションなど,多彩なマルチメディアを組み合わせた教材を多数用意しており,初学者から専門家まで満足のいく内容を提供しています。
〔取り組み成果と今後の事業への反映〕
1)これまでに、単位付与科目として、情報科学研究科の特論科目4教科のe-カリキュラムを作成し、実講義の履修生にテスト配信した。
2)今後は、社会人博士課程の学生(遠隔居住者も含む)を主対象として、情報系の履修科目数を継続的に増やし、一方、工学研究科の特論科目のe-カリキュラム化を進めて、履修環境の充実を図る。
3)履修対象を社会人博士課程の学生から、一般の博士課程学生、大学院修士課程学生、一般社会人へと拡大し、さらには、他大学との連携を図る。
4)履修条件充足型科目は、異分野の専門領域に属する社会人博士課程の学生を主対象として、専門性の高い科目を履修できるような基礎知識提供を主目的とした教材である。これまで、1教科が、6単元のe-カリキュラムを作成してきたが、単なる異分野学生の基礎レベル向上にとどまらず、一般社会人の教育ニーズにも対応できる要素が強いことが分かってきた。
5)今後は、一般社会人の教育ニーズを注視しながら、教材制作・配信を進める。また、受講対象を卒業生や一般社会人にまで広げる。
 
 
北方地域環境科学教育プログラム−総合的環境教育による地域活性化−
北方生物圏フィールド科学センター 教授 上田 宏
 北海道大学の全国無比の多重・多様なフィールド施設において行われている地域に固有な自然・文化・社会・産業に関わる総合的な教育プログラムです。北海道地域全体を我が国における貴重な教育資源として開発し,国民全体に活用してもらうための環境教育と社会教育の基礎を整備し,地域活性化のノウハウの蓄積を図っています。
 
〔実施した取組の成果と今後の事業への反映〕
1.北方地域環境科学教育プログラム 平成17年度の主な活動
(1)磯の観察会&スノーケリング教室−今年は夜の海を見るよ− (2005年7月30〜31日)
対象:地域の小中学生 主催:臼尻水産実験所
(2)自然が教科書「森から学ぶ理科」(2005年8月3日,10日)
対象:地域の小学生と保護者 主催:和歌山研究林
(3)「北大農場探検ツアー」(2005年8月6日)
対象:一般市民 主催:生物生産研究農場
(4)公開講座「おといねっぷ自然塾」(2005年9月3〜4日)
対象:地域の小学生 主催:中川研究林
(5)森のたんけん隊2006冬(2006年1月12〜13日)
対象:北海道内の小学生 主催:雨龍研究林
※上記事業の他に以下のシンポジウムも開催しています。
全国大学フィールド科学シンポジウム(2005年7月7日)
北大−京大−琉大連携フィールド科学シンポジウム(2005年7月5〜7日)
2.博物館を核とした「知床学」教育プログラム 平成17年度の主な活動
(1)考古学の発掘調査と一般教育演習
 知床半島の自然環境と先史文化との係わりを明らかにする目的で、知床町立博物館と共同で「ウトロチャシコツ岬下B遺跡」の学術調査を、2005年9月19日から10月9日にかけて実施しました。この期間内の9月23〜30日には、全学の一般教育演習を行いました。
(2)斜里町立知床博物館企画展の準備
 平成18年度に、平成16−17年度における「知床学」の研究成果を斜里町立知床博物館の企画展として公開する予定です。そのプロセスにおいて、本学学生・大学院生のみならず、斜里町民も企画や制作段階に参加する仕組みを検討しました。
(3)北海道立斜里高校への授業提供(理科科目)
知床自然概論:2005年11月30日(2コマ) 2006年 1月25日(2コマ)
理科総合B :2005年12月 3日(4コマ)
3.道南を中心とした新・海洋水産業創成シーズ教育プログラム 平成17年度の主な活動
 道南圏の豊かな漁業生産を支える海洋環境と、この地域を代表する水産資源である「コンブ」をテーマとして、学生と市民がともに参加する実習、講座、見学研修および演習の4企画からなる一連事業「 The 昆布 」を実施しました。
(1)コンブ学体験実習: 2005年7月16日〜17日
開催場所:北方生物圏フィールド科学センター臼尻水産実験所
対象: 北大学生、院生、一般市民
(2)コンブ学入門講座:第1回 2005年7月30日、第2回 8月6日、第3回 8月13日
開催場所: 北海道大学函館キャンパス第二研究棟特別講義室
対象: 北大学生、院生、一般市民(高校生以上)
(3)コンブ学見学研修: 2005年8月20日
見学研修先: 道立工業技術センター、昆布研ショップよろずや、五島軒本店、海藻技術研究所アルガテックKyowa、マルキチ食品株式会社
対象: 北大学生、院生、一般市民
(4)Newコンブ産業創成シーズ演習:第1回 2005年9月17日、第2回 10月1日
対象: 北大学生、院生、一般市民(高校生以上)
(5)The昆布 アカデミックフォーラム公開発表会 2005年10月2日(日)
(6)参加者アンケート
「The昆布」では、各企画の参加者に対して企画実施後にアンケート調査を行い、のべ参加者205人のうち173人からの回答がありました。
 
平成18年度の活動計画
北方地域環境科学教育プログラム
(1) 文理融合した新しいフィールド体験型一般教育演習及び総合講義「フィールド体験型プログラムT−人間と環境科学−」を前期に、「フィールド体験型プログラムU−人間と環境科学−」を後期に開講します。
(2) 地域の小学・中学・高校生、修学旅行生および地域住民に対して地域活性に結びつく「地域学生フィールド体験学習、フィールド施設開放型環境教育及び地域住民対応型社会人教育」を実施します。
博物館を核とした「知床学」教育プログラム
(1) 本学学生・大学院生および斜里町民が企画・制作段階から参加して、斜里町立知床博物館・企画展として、平成16−17年度における「知床学」の研究成果を公開します。
(2) 企画展とともに、小中学生向けの教育プログラムも実施します。
道南を中心とした新・海洋水産業創成シーズ教育プログラム
 道南圏の豊かな水産資源を育む海洋環境とこの地域を代表する水産資源である「イカ」を対象に実施した多面的な講義等、水圏の生態系と環境についてダイビング調査、「イカ」の一連の産業プロセスを現場で体験実習等をもとに地域の環境と産業の抱える課題の提起等を考察するとともに、受講者の課題解決の方策と展望を発想し、シミュレーション化して、その結果を産学官連携で毎年開催する「道南アカデミックフォーラム」において、新たな海洋・水産業創成のためのシーズとして受講者自らが発表できる体制を構築します。
 
上記の活動計画を実施することにより、本補助事業から下記のような具体的な成果が期待される。
・大学と地域社会が連携して地域の自然環境・文化遺産と産業を見つめなおすという視点は、地域への愛着と誇りを育て、地域の活性化に大いに寄与することが期待される。
・北海道における総合的科学教育による地域活性化を目指すもので、計画の緻密性(講義・実習内容の企画など)および広域性(北海道全域にわたる)、多目的性、複合性などの特性から成果が期待される。
 
 
北海道臨床獣医学先進教育プログラム−北海道の「人と動物の共存先進地域化」を目指す大学と地域の教育連携−
獣医学研究科 教授 稲葉 睦
 現代社会や北海道地域のニーズに応えられる獣医師を育成するために,北海道大学と酪農学園大学の両獣医学部が連携し,新しい臨床獣医学教育を築くことを目指します。自治体や地域の獣医師の協力を得ながら,両大学の教育・研究における優れた特徴や一般市民・高校生向けの生涯教育を取り入れた学習課程作りに取り組みます。
   北海道は,本来,獣医学教育に最適の地域といえます。地域獣医師の教育参画と地域住民の理解を基盤に,北大と酪農大は,北海道の地域社会・文化と獣医療を十分に理解し,さらに,いかなる地域・場面でも活躍できる能力を備えた獣医師を養成するために,この教育改革プログラムを進化させていきます。
 
〔実施した取組の成果と今後の事業への反映〕
 本取組の基幹となるのは,ポリクリニック/特質的臨床教育,フィールド教育,ならびにPBL・テュートリアル教育による北大と酪農大との連携による教育体系作りと,市民あるいは地域獣医師を対象とした公開セミナー等の開催による学習プロセス・成果の地域社会還元です。平成17年度は,今後,これらを効果的に進めていくための準備期間と位置づけた取組を実施しました。北大・酪農大両校で構成する推進委員会内に設けた各ワーキンググループ(WG)が幾度も検討を重ねて具体化の指針を作ったことはもちろん,主に次のような成果が得られました。
(1)ニーズに応じた公開セミナーの企画・開催のために
 札幌,函館,旭川,帯広等北海道内各地域の学外教育協力者(NOSAI,自治体,民  間の獣医師等)との協議を行い,また産業動物・伴侶動物の獣医療・獣医学教育,あるいはそれらと社会生活との関わりについての地域公開セミナーを3回試行しました。これらによって,地域市民や獣医師の獣医学や獣医療に対する認識の現状や具体的な期待を把握でき,今後のセミナーの企画や学習課程の組み立てに有用な情報が得られました。
(2)ポリクリニック/特質的臨床教育,ならびにフィールド教育の実施のために
 推進委員会のWGで,具体的な授業科目,内容,カリキュラム,講師や日程,実施場所に関する詳細の策定を行いました。また,北大の学生・教員が酪農大に出向き,NOSAI獣医師の協力のもとで酪農大学生・教員とともに10日間のポリクリニック実習を試行し,これにより実際に生じる諸般の問題点の洗い出しを行いました。WGにて日程調整,開催場所の分散等の打開策を検討し,平成18年度計画に生かしています。また,札幌と函館で産業動物と伴侶動物の獣医学教育に関するセミナーを開催し,大学の臨床獣医学教育に関する問題点を大学の内外から改めて提起することができました。これらを,やはり今後の取組に反映させようと考えています。
(3)PBL・テュートリアル教育の本格的導入に向けて
 この取組では,様々な面でテュートリアル方式の教育・学習を取り入れようと考えています。そのためには,まずテューターの養成が肝腎です。そこで,主に両大学獣医学部教員と大学院生を対象として「PBL・テュートリアル教育とは何か?成功の秘訣」と題する教育研修セミナーを実施しました。その結果,PBL・テュートリアル方式についての理解と知識が高まり,アンケートでは参加者のほとんどが肯定的であり,9割以上がその本格的導入を望むという点で一致しました。平成18年度から,5年生を対象としたテュートリアル科目をスタートさせますが,あわせて特に要望の強い低学年時における導入を検討していく予定です。
 
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