Academia Populi
●研究紹介
平成7年の阪神・淡路大震災を契機に、わが国でもボランティア活動が注目されるようになりました。以前から、高齢者・障害者福祉、自然環境保護、青少年育成、草の根レベルの国際交流などの分野で、ボランティア活動は活発に行われてきました。北大でも、学生ボランティア活動相談室が開設され、ボランティア活動に関心のある学生の相談や活動の場に関する情報提供などが行われてきました(写真)。このような社会変化に則して、平成10年にはNPO法が施行され、ボランティア団体すなわちNPO(非営利組織)の法人格取得が容易になりました。
 |
学生ボランティア活動相談室での車椅子体験 |
ボランティア活動は、ボランティアがNPOに加入せずに行うことも可能ですが、今日ではNPOに加入して行うことが一般的です。この傾向は今後一層強まるものと考えられます。人間が個人として達成できないことを他の人々との協働によって達成しようとした時に、組織が生まれます。このような組織では、異質な人々の活動を目標達成に向けて調整する必要が生じます。この調整活動がマネジメントと呼ばれます。どんな組織にも作業活動とは独立したマネジメントは必要です。
もともとマネジメントの概念や手法は、営利企業を対象にしたものでした。NPOにおいてもマネジメントは不可欠な活動です。私は、北海道いのちの電話、北海道国際女性協会、北海道YMCAなどのNPOのマネジメントを研究し(図1 )、これらのNPOのマネジメントには、営利企業のマネジメントよりも優れた点があることを明らかにしてきました。
営利企業とNPOのマネジメントを比較・検討することは、マネジメント研究の幅を拡げることになると考えています。これらの研究で得られる成果は、現在のような不透明な時代における営利企業のマネジメントに対しても有益な示唆を与えるはずです。
 |
図1 NPOマネジメントの分析枠組 |
旅 |
をする寄生虫 |
|
|
〜Wandering Parasite〜 |
|
エキノコックス
 |
|
| 神 谷 正 男 |
親のすねをかじって生きている「パラサイト・シングル」という生き物がいますが、寄生虫PARASITE の語源はギリシャ語のπαρα(そばで)+σιτοδ(食物)の意から、貴族などの食卓のそばにいて余った食べ物をいただく階層に由来するようです。他の生き物(宿主)に寄生して生活の維持を図っているのがパラサイトです。宿主にほとんど病害をもたらさず共存・進化するもの、重い病気を引き起こすもの、また、宿主と一緒に絶滅するものなど、様々です。地球上にどのくらいの寄生虫が?どのような生活をしているのか?動物やヒトはどのようにして病気になるのか?その治療、予防は?の疑問に、系統分類学、生態学、分子生物学などからせまっています。その過程では答えよりも多くの新たな問題を発見、解決する悦びがあります。地球を一個の生命体のごとくに「空想する眼」とフィールドワークに強い「考える足」を備えていたいと、アフリカ、南北アメリカ大陸、東南アジア、中央アジアへと旅にでかけます。寄生虫学者にとって、この惑星はミール・チケット(meal- ticket)でいっぱいです。
国公立の獣医学大学ではわが国唯一の寄生虫学教室は、1994年にケンブリッジ大学とともにOIE(国際獣疫機構:獣医版WHO)から人獣共通寄生虫・エキノコックス研究拠点機関に指定されました。しかし、スペースも施設も充分ではないため1999年から北大先端科学技術共同研究センター(CAST)に感染源対策の研究室を賃貸しています。寄生虫の研究が地域と連携して産業化にも国際貢献にもつながる分野であると唱えてもイメージが結びつかないので、その一例を紹介しましょう。

エキノコックス(多包条虫)は、サナダムシの仲間です。キツネなどのイヌ科動物の腸に寄生します。糞に排泄される虫卵が食べ物、水などを介して口から入ると人で肝臓ガンのように増殖し致死的な病気をもたらします。国際的にも問題となっていますが、北海道ではキツネで6割の他、飼い犬の感染が報告されています。最近、本州にもこの寄生虫が定着したようです。人から人には感染しません。北海道では半世紀以上もヒト中心の対策で臨んできましたが、患者が増えています。現在、手術を受けた患者が約400名ですが、専門家は「氷山の一角」と考えています。放置すれば新たな患者がでるばかりでなく観光や農業も含め大きな被害を受けることになります。「元から絶つ」対策しかありません。
 |
図2 抗原検出法の特徴 |
そこで、環境浄化のシナリオを図1に示します。感染源の診断法として糞便内抗原検出法を開発・実用化しました(図2 )。これをエキノコックスの生態解析と感染キツネに対する駆虫薬散布の効果判定に利用して、キツネ感染率の軽減・ゼロを図っています。
環境の枠組みが壊れれば経済は成り立たないことを、かつて日本は公害対策で世界に示しました。公害をエキノコックスに置き換えると理解しやすいのではないでしょうか。 |