毛利 衛さん
    宇宙を語る
●特別記事


「宇宙開発事業団(NASDA )提供」
●略 歴●
毛利 衛(もうり まもる)
1948年、後志管内余市町生まれ。
70年に北大理学部卒業、
76年に北大工学部原子工学科助手、
82年に助教授。
92年、日本人として初めてスペース
シャトルに搭乗し、
今年2月に2度目の搭乗。

毛利さんからのメッセージ

「地球および宇宙をも視野にいれた透明で強い意志、そして生命全体をも考えた優しさがこれから二一世紀を生きる人に必要」

 これは、毛利さんが2回目の宇宙飛行中に音声を通じて地上に語りかけたメッセージです。
 私が宇宙から地球を見たときに、人間の存在はどのように感じられたか、お話しましょう。私たち人類は数百万年前から生物種のひとつとして存在してきました。では40億年前の遺伝子は、現在のわれわれに何を語っているのでしょうか?
 人間の営みというのは宇宙から見るとあまり見えてきません。森林、砂漠、珊瑚礁などが生き物として見えてきます。しかしその中で港の施設のような幾何学的な模様が、むしろ人間の営みを感じさせます。地球の夜を照らすのはもはや月だけではなくなりました。夜になると、人工の光を見つけて人間の存在を感じます。
 人間というのは、地球にくらべればまだ生まれたばかり。宇宙から見るといろいろな生物種の一つとして人間が見えてきます。エンデバーにいると、まさに人間が宇宙へ飛び出そうとしているのを感じます。これから地球の生物種の一つとして宇宙に飛び立って行くように感じます。
 われわれは絶えず変わってゆくけれど、次の世代に自分を伝えていくなかで、地球全体を見る目が必要です。全部の世界が納得しなくてはいけないのです。個人として強い意志を持っていなくてはいけない。
 自分の頭の中で考えて自分で行動する。透明で強い意志。空気、水を共有するのは、人間だけでなく、他の生物種もいるのだということを改めて実感してほしいと思います。それを考えてはじめて社会に一人立ちできるのです。

北大における講演会
エンデバー号内でトレーニング中の毛利さん
「宇宙開発事業団(NASDA )提供」

 4月17日、北大体育館において、本学出身の宇宙飛行士・毛利衛さんが、今年2月に搭乗したスペースシャトル・エンデバー号での飛行の様子を中心に、新入生に対して講演を行いました。
 スペースシャトルからの映像の放映に先立ち、この宇宙からのメッセージをどう解釈するか、という疑問を、会場を埋めつくした新入生たちに投げかけられました。
 「地球はいつまでも良いところ・まほろばであってほしい」という毛利さんのことばに続いて、『地球を見る旅―まほろば』を、N H K の協力のもとハイビジョン映像で始めました。

「環境汚染からの回復はまだ間に合う」

 スペースシャトルに搭載されているレーダーを用いた、地球陸域の8割にも及ぶ立体地図作成という重務に携わる様子を、「宇宙から眺めた地球は、まだまだ森林が多く、海は汚れていない。環境汚染の回復はまだ間に合う」というコメントと共に紹介されました。
 映像ではH D T V カメラによる地球の撮影の様子も紹介されました。H D T Vカメラを用いるとひじょうに鮮明な撮影が可能となり、火山の噴火や森林火災の様子をもとらえることができます。そのため、今後、災害予測の観点からたいへん有益であること、また日本の最先端応用技術がこの撮影を可能にしたことを強調されました。

「自分で考えなさい」

 会場の学生との質疑応答から、次のような学生の持つべき態度を教えて頂きました。

質問(理学部学生)
「無重力状態でくしゃみや息をすると体は後ろに下がるのですか?」
その質問に対して、毛利さんは逆に、工学部志望の学生にこう質問しました。
「あなたなら、どう答えますか?」
返答(工学部志望の学生)
「僕は下がると思う。ニュートンの法則。F =m a だから」
毛利さん
「式がそうだからそうなるの?確かめたの?式で理解しようとしているよね。現実にあてはめると実は難しいよね。式がわからないひとにはどうやって説明するの?子どもに説明するにはもっと難しいよね」

 高校までは、答えは一つという訓練をされているけれど、それは非常に限られた条件下の問題でしかありません。しかしこれからは、社会に出るための訓練がはじまります。決して理想通りのパラメーターでは進めません。教科書に書いていないことを自分でどこまで深く掘り下げられるかという意識が大切になってきます。大学では、自分の理論で、先生の期待するものと違うことを考えていくことが大切です。先生のいうことを信じてはいけません。大学ではそんなことを望んでいません。自分の理論で、先生と違うことを考えていくことが大切で、そのほうが評価に値するんです」
質問(原子工学科学生)
「1回目と2回目の飛行の間の8年間には何をしていたのですか?」
毛利さん
「ミッションスペシャリストの資格をとるための訓練とその予習で、とてもほかのことをする余裕はありませんでした。材料分野、生物分野など他の研究者の代わりとなって仕事をするのが前回の飛行の私の役目。2回目の今回は、技術者としての役割が多かったのです」
質問(法学部学生)
「立体地形図作成の目的についてですが、軍事的に利用されたりはしないですか?」
毛利さん
「もともと地図というのは軍事目的で作り始められたものです。全米のトラック協会からすぐに電話があって、エネルギー効率を上げるために早く地図がほしいと言われました。詳しい地図は、いろいろな利用の仕方があるんですね」
名誉博士号授与


 講演に先だって毛利さんには、総長より北海道大学名誉博士号が授与されました。1992年9月に初の日本人宇宙飛行士としてスペースシャトルに搭乗し、科学の振興に重要な役割を果たしたこと、宇宙での共同実験に貢献したことなどの功績が讃えられたのです。