札幌駅北口周辺や厚別テクノパークなどには情報産品を生み出す企業が250社以上集中しています。それらはまだ25才以下と若く、困難に直面している北海道の中で、これからぐんぐんと力をつけていく企業です。このような札幌における情報産業の集中はカリフォルニアのシリコン・バレーにちなんでサッポロバレーとよばれています。まず情報産業とはどのようなものなのか紹介しましょう。
 ▼生活ソフト開発▲
 ソフトというのは英語のsoftwareを短縮した言葉で、hardware(機械部分)に対する表現です。ハードがあってもそれを動かすソフトがないとコンピューターは働きません。身近なソフトのなかで、家庭経済をあずかる人たちに重宝なものが家計簿ソフトです。品名と価格を打ち込むと自動的にいまの残高を計算したり、月ごとの消費傾向などを示してくれます。

 ▼業務ソフト供給▲
 企業では収入と支出をとりまとめて損益計算表を作成します。これは家計簿を複雑にしたものですから、アイデアの基本は共通です。また従業員がタイムカードを押したときに、その情報をもとにして勤務時間を管理するソフトを使えば、あと何日有給休暇があるか、何日病気で休めるかなどが即座にわかります。

 ▼映像・音楽▲
 ビデオで運動会の様子を撮影したとしましょう。ひとむかし前ならビデオ鑑賞だけで盛り上がったものです。いまではビデオカメラが撮影した画像の光の強さや色を数字にして保存しておくデジタルビデオがあれば、コンピューターを使った編集ができます。子供が走る映像にCG(コンピューター・グラフィックス)の競争馬がならんで走っているところを合わせて編集することも可能です。

 ▼安全管理▲
 カメラによって住居や道路の状態を監視し、それをパソコンの画面に表示して、人間の目で異常があるかどうか確認するのは、初歩的な安全検索システムです。監視する場所の画像をコンピューターに記憶させておき、それと異なるところがあった場合に、異常が存在すると判断できるようになれば高度な安全検索システムとなります。

 イ ン タ ビ ュ ー 

 北海道大学はこれらの企業にどのような貢献をしてきたのでしょうか。大学院工学研究科の青木由直教授にお話をうかがいました。

 ― 青木先生を中心にした、マイクロ・コンピューターとよばれる小さな計算機を自作するグループが、札幌の情報産業をつくるのに大きな力があったそうですね。

 大学がすぐれた技術者を輩出していくのに加えて、いろいろな分野にまたがった人的なネットワークでつなぐ中心にいることが大事です。

▲青木 由直教授
 ― 外的なものとしては、札幌に情報産業が集中する要因は何だったのですか。

 北海道のように東海道産業ベルトから遠い地域では、高い付加価値をつける情報産業が有力であるということで、札幌市が1980年代初めにテクノパークを計画し実現に向けて動き出しました。バブルがはじけた1990年以降は札幌駅北側に多くの賃料の安いインテリジェント・オフィースがあったので、そこに若い企業が集まってサッポロバレーのコアのひとつができました。

 ― 日本の情報産業集中地の中でサッポロバレーの特徴は。

 ここではビジネス(金もうけ)よりも技術とものつくりに興味をもつ若者がサッポロバレーに集まってきます。いわゆる職人気質が旺盛なのですね。

 ― ベンチャー企業をおこす環境はどのようなものでしょうか。

 現在のようにベンチャーをおこさなければいけないという社会の要請が強すぎる時代よりも、冒険心とすこし余裕のある昔のほうが条件がよかったと思います。私は三つの自由があってこそベンチャーをおこせると信じています。それは「既得権からの自由」、「権威からの自由」そして「失敗からの自由」です。既得権があるとそれを守ろうとします。自分に権威があると思っているとそれに頼り
ます。この結果として失敗を恐れます。こんな状態ではとてもベンチャーなどに挑戦できません。

― 学生へのメッセージをいただけますか。

 社会全体のムードが暗いので学生諸君も元気がないようです。しかしサッポロバレーには有望なIT企業が集中しているので、大学で学んだ知識や技術を生か
せる場所があります。それを明るい材料と受け取って奮起してほしい。

◆インタビューを終わって 
三つの自由という言葉が最も印象に残りました。ベンチャーだけでなく、多の大事な局面でも心しておくべき点だと感じました。
(池田記)