講義試聴室

新しいタイプの面白い講義を目指す先生達──
ちょっと聴いてみませんか?


 そもそも科学とは《歴史の中の実験》
杉 山 滋 郎

日本のこれまでの科学教育は,科学知識を教えることに専ら目を向け,専門研究者を目指さない人々(いわゆる文系の学生)のための科学教育は,専門家養成用の教育プログラムを薄めたもので済ます,という傾向があったように思います。「数式を使わない○○」などがその典型です。それに対しこの講義は,科学をまったく違った切り口から教えるもの,「科学とはそもそもどういうものか」について考察するものです。歴史上の実験を,ときには体験(再現)しながら,科学的事実は,専門家たちの間でどのようにして確立していくものなのか,その科学的事実が科学者と非専門家との間に「緊張」を生んだとき,それはどのように決着していくのか等々を,過去の事例を通して学ぶのです。
 遺伝子組換え食品や各種の医療技術の是非など,市民が,科学技術に関わる問題について意思表明を求められる機会がますます増えています。科学技術のことは専門家にゲタを預けておけばよい,と考えられる時代ではなくなっているからです。とはいえ,市民が市民として(=非専門家として)適切な意思表明をするには,専門家なみの科学知識を身につけている必要はないでしょう。「科学とはそもそもどういうものか」を知ってさえいれば,あとは一市民(非専門家)として,専門家とは違った視点から発言し,専門家たちと対話を重ねていけばいいのです。
 この講義は,専門家と非専門家とのコミュニケーションの基盤を作ろうとするものです。ですから,将来的には,いわゆる理系の学生も含めた討論を含む授業に発展させていきたいと考えています。
(理学研究科教授)


 ”アルコール学”を企画した背景《お酒の科学》
大 塚 吉 則

 保健管理センターでは他部局教官と共に健康科学の講義を担当していますが,昨年度からセンター独自のプログラムに基づく健康教育を開始することができ,その中でアルコールの体に与える影響,一気飲みの危険性などを説明しています。
 一昨年の秋頃,飲酒問題に取り組んでいる恵迪寮の学生が来室しました。飲酒による事故を防止するための講義を半年間の授業として企画して欲しい。そして単にアルコールの危険性を講義するだけでなく,アルコールの製造法を含めたアルコールに関する全てを知りたい,という要望でした。分野が余りにも広すぎて私一人の力ではどうしようもなく,学生と相談を重ねました。その結果,テーマを幾つかに絞ってそれぞれの専門家に講義をしていただこうということになりました。幸い北海道大学にはそれぞれのテーマを引き受けていただけそうな教官が多数いらっしゃり,メールと学内便による講義依頼を発送したところ,好意的なお返事をいただくことができました。まさに,文系教官と理系教官とが協力して,文系・理系にとらわれない学際的な講義プログラム(複合科目)健康と社会(お酒の科学−お酒との上手な付き合い方−)が出来上がったのです。
 さて,具体的な講義内容を紹介します。まず,私のオリエンテーションに引き続き,農学部の淺野行藏先生が「アルコール飲料製造方法の面白さ」,農学部三島徳三先生は「日本酒と焼酎−本物を求めて−」,文学部の山岸俊男先生は「アルコールと社会心理」,法学部白取祐司先生は「お酒にまつわる法律」,獣医学部の藤田正一先生は「お酒の毒性学」,歯学部の鈴木邦明先生は「アルコールの薬理作用」,言語文化部の古賀弘人先生は「イタリア文学とワイン」,退官された文学部の神谷忠孝先生は「文学と酒,名作に学ぶ酒の飲み方」を非常勤講師としてお願いしました。最後に私が講義の総括と「健康的なアルコールの飲み方」というテーマで講義の予定を立てております。
 この講義に対する学生の反応には物凄いものがありました。初回のオリエンテーションのために用意されていた定員300名の教室には入りきれず,急遽教務掛に走って相談し,大講堂(定員500名)に移動しました。ところがそこにも入りきらず結局700名の履修希望者のうち200名を断らなければなりませんでした。
 この講義が成立したのは複数部局の教官の協力と学生の熱意とがあったからです。実務を行う事務方の皆様も含め,ここに感謝の気持ちを表したいと思います。どうも有難うございました。来年度もよろしくお願いします!? 
(北海道大学保健管理センター・医学研究科助教授)