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| 写真1 整理整頓されている部屋も、地震が来ると・・・ |
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| 写真2 危険な部屋に一変(北海道南西沖地震) |
わたしたちは今,大量消費を追い求めた20世紀文明に行き詰まりを感じ,それを突き破る新しい知的創造を必要としています。そのキーワードの一つは,全体から個への重点移行に伴った【多様性への対応】ではないかと思います。たとえば20世紀の産業界の戦略は製品価格優先政策に則った画一大量生産でしたが,21世紀は多様な顧客ニーズへのきめ細かな対応・サービスに戦略変更が強く求められています。そのような社会変革の波の中で,防災とはどうあるべきなのかを,考えなければなりません。防災とは安全を作りその状態を保持することです。社会環境が変われば,その対策も変わらなければならないはずです。
身近な例で考えてみましょう。写真1は地震前,写真2は地震後の部屋の状況です。整理整頓されている部屋も,地震で大混乱となります。けが人の多くはこのような状況で発生しています。安全な部屋とはどういう部屋でしょうか。図1と図2は,居間に家具を設えた例です。どちらが安全だと思いますか。われわれの研究室で開発した室内危険度診断システムで診断しますと(床の色が赤いところが大変に危険・ピンク色が危険・黄色がやや危険な箇所を示しています),図1は部屋の周壁全体に家具を分散配置させた例で,転倒の危険度が部屋全体で薄められているのが分かります。部屋の中を活発に動き回る子供にとっては安全な配置と言えましょう。しかし高齢の方にはむしろ図2の配置法をお勧めします。これは家具をコーナーに集中させた例で,非常に危険な空間が一部にできあがりますが,家具が転倒してこない極めて安全な空間(ソファの前の白い箇所)も保存されています。動作が緩慢な人にとっては平常時に長時間いる空間が絶対的に安全(ゼロリスク)であることが望ましいのです。その部屋を利用する人の運動能力(災害回避能力)や部屋の利用のしかたにより,安全の捉え方も変わってくるのです。同じ居住者でも年齢と共に部屋の危険性が変わってくるのです。安全性に関しても画一的に捉えるのではなく,個々人に最適な安全を提供すること―多様性への対応―がこれからの防災の一つのあり方だと思っています。
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| 図1 家具の配置例(子供向け) |
図2 家具配置例(高齢者向け) |
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写真3 高架道路の崩壊
(兵庫県南部地震) |
都市防災も同様です。地震災害というと多くの方は阪神淡路大震災時の高速道路崩壊の図を思い出されることでしょう(写真3)。注目を浴びる都市災害には地域のインフラ未整備に関わることが多いので,防災というと,行政が主導の都市防災をイメージすることが多いと思います。行政は,東京をひな形とする大都市圏防災対策指針に右ならえしがちです。しかし対象が変われば,災害は形を変えて,襲ってきます。大都市圏の防災対策をそのまま他の自治体へ適用するのは考えものです。わが町・地域の個性を意識したオーダーメイドの防災対策が必要です。われわれはそのために地域に密着した災害シナリオの作成とそれに基づいた防災対策意思決定の提案を続けています。
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