| S教授 |
そう。ナポリ・ハコダテ・ウッズホール、それをもじって作ってみた国際水産海洋都市構想の実現へ向けたキャッチフレーズなんだよ。語呂もいいだろ。ナポリもウッズホールも観光と海洋研究で著名な国際都市なんだ。函館も、これらに互する街に育って欲しいという思いを込めているんだよ。 |
| O君 |
ところで、「国際水産海洋都市構想」っていうのは、どんなプロジェクトなんですか? |
| S教授 |
昨年から、函館市の産学官が連携して、海洋科学創成研究会というものが組織されたんだ。そこで、函館をナポリやウッズホールと並ぶ観光と研究の楽園にしようという大きな志を具現化するために案をねってきた。もうじき、その構想案が発表になると思うが、私なりの解釈で、かいつまんで話そう。まず、函館西部地区を「函館まるごとテーマパーク」として開発・再開発する。対象となるのは、摩周丸シーポートプラザ、朝市・赤レンガ倉庫群、元町地区、その他の西部地区ウォーターフロント、大門地区、函館海岸等。ここでは、閉じられた空間の施設で入場料を取って観覧してもらおうという商業的に採算の取りにくいものではなく、西部地区全体を市民や観光客や研究者が自由に往来できる、開かれた空間づくりを目指してるんだ。中でも元町周辺には、明治以来の歴史的に価値があり、レトロな景観作りに一役買っている建設物がたくさんあるが、再利用されていないものも多く、これらの建築物の維持・保存は大きな課題なんだ。そこで、これらの建築物のレトロな外観は維持しながら、内部を水産・海洋研究のための最先端の機器を配せるよう超機能的に改造し、世界中の研究者に使っていただくということも、アイデアの一つにある。また、函館港の中には、緑の島という人工島があるんだけど、ここを今回の構想の中心と位置づけ、各省庁・独立法人、水産・海洋関連研究機関や高等教育機関、ベンチャーインキュベーション施設を整備。マリンバイオやマリンインフォマティックスなど最先端産業活動の拠点づくりを目指す、海洋科学研究コンソーシアムを形成することも、構想の中に入っている。もちろん近くには、ヨットハーバー、安くておいしいシーフードレストラン、ジャズの生演奏がいつ行っても聴けるシーマンズクラブ、そして安く泊まれるB&B式ホテルなんかもあるといいなあ〜。それからね〜、O君、まだまだ私の夢はあるんだよ・・・・。 |
| O君 |
先生、ちょっと待って下さい。(心の中で「ちょっとまずいなあ〜、このままだと、あと1〜2時間先生のホラ話止まらないなあ〜」)。先生、そろそろお時間のほうも宜しいようで。 |
| S教授 |
あっ、そう。まあ、もう少し、いいじゃないか。 |
| O君 |
そうですか〜。ところで、今回、お話になられた構想と、先生の御専門の海洋生物学とは、どうつながるんですか。 |
| S教授 |
それに答える前に、O君、日本が自由に経済活動に使える200海里経済水域を設定すると、国土の何倍くらいになると思うかね。 |
| O君 |
さあ、あまり考えたことないんで判りませんけど、2〜3倍ですかね。 |
| S教授 |
それがさ、約12倍もあるんだね。 |
| O君 |
へぇ〜。 |
| S教授 |
この国土の12倍もの広大な海面にさ、昆布・若布・海苔などの大型の有用藻類、海の向こうじゃ、ケルプと称するんだが、このケルプを津々浦々植付けて、海の牧草とし、ここに様々な魚介類を養殖し、ついでに、マグロやイルカやクジラなんかも飼育しちゃう。このシステムはほぼ完全にリサイクル型で、ゼロエミッション産業になり得る。これで、日本のエネルギーや、食糧問題にもかなり貢献できると思う。また、今、問題になっている我が国での 削減・排出権なども、私には計算法とか詳しいことは判らないんだけど、このシステムで解決可能とみる専門家もいるんだ。 |
| O君 |
いや〜、先生の話は大きくて、夢があるけどなんか、ついてゆけなくなってきました。どこまで、今回の構想で実現可能なんですか。 |
| S教授 |
それがさ、世の中にはいろんな人がいるんだね。もう、すでに、先程話した、海洋牧場プロジェクトに関して幾つかの会社から問い合わせがあり、この六月にも、ある会社が、函館西部地区のウォーターフロントに進出して、この海洋牧場プロジェクトに呼応して、ケルプの種苗生産・中間育成・養殖管理に関する研究・企業化を目指す「海藻技術研究所」を設置することを決定済みなんだよ。 |
| O君 |
そうですか、もう具体的に動き出しているプロジェクトもあるんですね。それから、先生がこのごろ提唱している。「フル・マリン・カタログ」による起業化のことも聞かせていただけますか。 |
| S教授 |
これはね、海洋に生息する世界中の生物種がおそらく数十万種はあると思うんだが、とりあえず、この10年間で10万種を同定、カタログデータベース化し、かつ、保存をする。数十年かけて完成させるという計画なんだ。 |
| O君 |
しかし、同定・データベース化はまだしも、保存は何十万という莫大な株の植継ぎ問題などで不可能では・・・・・・。 |
| S教授 |
私達の研究室で開発した、海洋生物の凍結保存法を用いれば展望はあるんだよ。海洋植物などは、実際、これでよく保存できるようになったしね。できれば、液体窒素タンク内の保存だけでなく、南極の氷の中や、月の裏側なんかの天然の極低温下で海洋生物を保存することも、考えているんだ。 |
| O君 |
海洋から、南極、そして宇宙ですか。なんか、気宇壮大すぎて、益々、ついていけなくなってきたな〜。 |
| S教授 |
誇大妄想って言いたいんじゃないの〜。 |
| O君 |
いえいえ。 |
| S教授 |
でもさ、ほんとに世の中には、いろんな人がいるもんで、この「フル・マリン・カタログ」プロジェクトには、欧米の資産家からの問い合わせもいくつかあり、もし、私たちが起業するんなら投資しようと考えている人もいるようなんだ。ほんとに世の中には変わった人もいるもんだね〜。 |
| O君 |
S先生ほどじゃないですよ。先生も相当変ですよ。 |
| S教授 |
そうかね。そういうO君も、かなり変わった趣味を持っているね。 |
| O君 |
えっ! |
| S教授 |
近頃、君、不動産の免許取ったそうじゃないか。博士号を持った不動産屋かい?それとも、不動産業をサイドビジネスにした研究者にでもなるつもりかい。なんか、夜間の経理学校にも通っているという噂もあるよ。 |
| O君 |
不動産免許は取りましたが、経理学校はまだです。でも、そのうち経理面の勉強もしたいですね。博士号取得後は、経理学修士にも挑戦したいです。 |