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伊藤 |
創成機構にはどのような研究部門があるのですか。 |
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長田 |
特定研究部門、流動研究部門、プロジェクト研究部門、次世代ポストゲノムの四部門です。それぞれたいへん特徴的です。
特定研究部門は、5年から7年の任期で創成専属の教授、助教授のポストを設けます。すでに二人の教授の人選を終え、日本のトップリーダーをお招きする予定です。せっかく素晴らしい方に来ていただくのですから、この専門の方はぜひ多くの先生方とチームを組んで充実した研究をしてほしいと願っています。
二番目の流動研究部門は、学内の各部局から選りすぐった先生に任期を決めて集まっていただき、その間は委員会などのことは忘れて研究に専念してもらいます。先ほどの四部門を中心に、いま何人かの若手の方たちが活動を開始しています。ここでの研究が終われば、もとの部局に帰ることになります。
プロジェクト研究部門は、外部資金で大きな研究をされている方々が対象です。研究室だけだと何かと不便です。機構に移動してもらい、共通の研究室や装置を使っていただく。これにはプロジェクトどうしの行き来も期待できます。
最後の次世代ポストゲノムですが、これまでもゲノム部門はありました。将来重要な研究なので、新たにこの部門の戦略プロジェクトとして20人から30人で活動してもらっています。 |
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伊藤 |
流動研究部門には、生命系、ナノテクノロジー・材料系、エネルギー系、環境系、広域文化系、未踏系があって、すでに学内の教官が配置されているとお聞きしました。教官は公募で? |
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長田 |
ええ。公募して、各部局から書類を送ってもらい、選考しました。 |
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伊藤 |
広域文化系、未踏系とは、またユニークな名前ですね。 |
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長田 |
新しい研究分野をつくるには、既存の分野だけでなく、さまざまな分野の融合、複合が必要です。既存の枠からはみ出たり収まらない分野を育てるのが広域文化系です。
未踏系というのは「前人未踏」の言葉が示すとおり、たいへんパイオニア的な部門です。ひょっとしたらこれから新しい分野となりうるかもしれないという分野ですね。そういうテーマをエンカレッジするためにつくった部門で、これもすでに活動しています。 |
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伊藤 |
夢がありますね。ただ、そういう研究の評価はたいへん難しいですね。 |
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長田 |
そうですね。私たちは質の高いサイエンスを生み出さなければなりません、いまの時代は何から何まで評価です。評価されるために、現在はトラックいっぱいになるほどの書類提出を要求されます。しかし、書いたペーパーの数や学会発表の数で決まるような評価はするべきではありません。学内ではわれわれは、お互いの研究の価値や内容のスタンスを知りうるのに、なぜそんなに書類を積み上げる必要があるのでしょうか。
これからは研究の質そのものを評価する眼力をもつべきです。それは評価されるほうも、評価するほうもたいへんな作業です。とくに評価するほうがたいへんです。どういう項目をどう評価するか、じつはそれ自体が研究対象になるほど難しいことです。決して評価疲れをおこすような方法はいけません。評価がひとり歩きしてしまうのです。
そうなると自転車操業のように短時間で結果が出る研究ばかりで、研究に深みがなくなります。これでは大学の研究はおしまいです。 |
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伊藤 |
みんなが力を出すための評価でなければいけないのに、本来の目的とは本末転倒になりますね。 |
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長田 |
本当の学問の基礎や知をつくりあげるために、それをサポートするような評価でなければなりません。場合によっては、研究の動機は個人の趣味の世界だったり、ちょっとした冒険や思いつきだったりすることもあります。そういう学問の芽といえるような研究を、未踏係で評価したいと思っています。そして、その芽を潰さないようお互いが保障しあうことが必要です。 |
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野口 |
大学は、一本のスケールで物事を評価してはいけない。マルチブルな物差しをたくさん用意することが必要ですね。 |
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長田 |
時間のスケールも、人によって、あるいは研究によって違うはずです。10年、20年に一つ出る論文があってもいいのです。 |
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伊藤 |
森林関係の研究をしている方はよく、結論が出るのは30年後だと言います。いま発表されているものは、その前の前の先生の仕事の積重ねということもあります。長いスパンで考える必要もあるのですね。 |
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長田 |
ただ、そのあいだに何をしているかを、研究者は説明できなければいけません。木は成長が遅いから結論は30年後と言っても、その先生は30年間寝ているはずはありません。たくさんの研究をし、観察もしたはずです。私たちはその内容を知りたいのです。 |
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伊藤 |
北大のさまざまな新しい可能性をお聞きして、未来が明るくなりました。 |