まずは*図2を見てください。これは1993年に発表されたある分子性結晶の電気抵抗(縦軸)の温度(横軸)変化です。グラフの低温部分だけ取り出していますが、冷やしていくと、ほぼどの測定結果でも矢印のところで急に抵抗が下がり始め、約5K(-268℃)で突然電気抵抗がゼロになった様子が捉えられています。つまりこの温度以下でこの結晶は超伝導体(世の中で最も電気を良く流す物質)になっていることがわかります。このように常識的には絶縁体(電気を全く流さない物質)と思われがちな分子性結晶の伝導性は、化学変化、温度、圧力などを利用して様々に変えられることがわかってきました。われわれ“化け学”者の手にかかれば、絶縁体の分子性結晶を超伝導体に“化けさせる”ことさえ、もはや夢ではないのです。大昔の「錬金術師」たちの夢が、形を変えて現代に受け継がれているのかもしれません。いずれにせよ、この「多様に変えられる伝導性」と「分子が規則正しく整列していること」こそが、次世代ハイテク電子部品、つまりナノデバイスとしての可能性を匂わせているのです。さらにこの研究が進んで“夢”の続きをお話できる日が一日も早く来るよう、目下奮闘中の毎日です。
(*H. Kobayashi, T. Udagawa, H. Tomita, K. Bun, T. Naito and A.
Kobayashi, Chem. Lett., 1559 (1993).) |