特集 国立大学の法人化からみる、北大と北海道の未来像
「知」の創造から「知」の活用へ 創成科学研究機構

副学長 創成科学研究機構長


長田 義仁
Osada Yoshihito

 知の文化をつくることは大学の基本的仕事であります。しかしこれだけでは充分ではありません。これからの大学には、社会とのつながりをより以上に意識し、強くし、そしてそれを知らせていくことが求められると思います。基礎研究であっても、それが最後には市民社会に繋がっているということを忘れてはなりません。その研究がどんなに世間や実社会から離れているように見えても、公開することが大切だと考えています。優れた研究を耳にすることで市民の方々も自分たちの文化に誇りを持ってくれるのではないでしょうか。こういう視点が大学には欠けていたように思います。
 これまでの大学は各個人がそれぞれの研究室に閉じこもって研究するきらいがありましたが、それでは情報、戦略、研究の幅が限られてしまいます。研究そのものは個人で推進するものですが、新しい研究分野をつくるには、既存の分野だけでなく、さまざまな分野の融合が必要です。
 北大は、その研究分野を広げ、新しい領域を伸ばすために平成14年に創成科学研究機構を設立しました。創成科学研究機構は大学を横断する組織であり、社会と連携するという大切な役割を担っております。この機構の最終目標は、創造した知の社会活用であり、北海道経済の活性化に役立てることです。

       創成科学研究機構組織図
 創成科学研究機構は、特定研究、流動研究、プロジェクト研究および戦略的プログラム研究(次世代ポストゲノム)の4研究部門及び、それらの支援を行う研究企画室、事務部、技術部から成り立っています(図1)。
 機構のマネージメントは、機構長を中心として運営会議、研究評価委員会によって行われます。

       戦略重点分野
 機構で戦略的に実施される重点研究分野は、生命、情報、環境、ナノテクノロジー・材料、エネルギー、広域文化、未踏領域の7分野で、ここから新しい「知」が創造されます(図2)。創造された「知」は、北大・北キャンパスに隣接する各研究機関の協力を得て、各機関が持つ機能をフルに活用する事で、社会に還元されるような仕組みを作っております。機構は、創造された「知」を社会に還元する為の全く新しいシステムを作りました。その一つが包括連携制度です。包括連携に参加する企業には、「知」の創造段階から参加願い、協力しあってビジネスモデルを作成し、そのモデルを基に特許網を作り、共同で知的財産権を確保します。こうして確保された知的財産権をベースに、北大は、日本国内、北海道、全世界での新産業創成に寄与します。

       機構人材交流の仕組み
 特定研究部門では、3から7年の任期付きで学内外からの公募による完全研究専念教官により、流動研究部門では、3から7年の任期付きで部局等から機構に移籍した教育義務及び管理運営義務の減免された教官により、研究が行われます。またプロジェクト研究部門では、外部などからの大型資金を獲得した研究者が、オープンラボの配分を受け、時限付きで研究を行います(図3)。

       研究企画室
 研究企画室は学術研究・研究開発に関して十分な調査・企画能力を持つアカデミックスタッフと事務職員で構成され、機構の研究戦略立案と執行を担当します。

       北キャンパス
 機構の立地する北キャンパスは、約30ヘクタールの広大な土地に北大関連の研究施設、科学技術振興事業団・研究成果活用プラザ北海道、北海道道立の4試験研究機関、北海道産学官協働センター等のまさに「知」の一大集積地です。ここで構成される産学官の研究開発拠点は、この度「さっぽろベンチャー創出特区」として認可を受けました。機構は、この研究開発拠点のヘッドクォーターとして「知」の創造とその社会還元を推進して行きます。この拠点は、科学技術駆動型の経済・地域活性化を目指し、その成果を全道・全国に発信していきたいと願っております(図4)。

 創成科学研究機構は平成15年度科学技術振興調整費・戦略的研究拠点育成プログラム「北大リサーチ&ビジネスパーク構想」に申請しました。多数の方々のご支援を得て幸い採択されました。この構想で目指す目標は以下のとおりです。
1 研究とマネージメントの機能分離
2 知の創造から社会還元までの一貫責任体制
3 自由裁量権と競争環境を与えた若手研究者育成
4 北キャンパスに立地する関係諸機関との連携研究推進体の形成
5 科学技術駆動型の経済・地域活性化
6 研究開発型NPO
 (仮称:北大SEEDS)の設立

(SEEDS:Science and Engineering Enterprise for Development of Seeds)

 創成科学研究機構は、まだ生まれたばかりですが他大学にはない仕組みと知恵で大学の知のありかたを先導しようとしています。皆様の変わらぬご支援をお願いしたいと思います。


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