特集 国立大学の法人化からみる、北大と北海道の未来像
北海道ティー・エル・オーの現状と今後

元副学長 北海道TLO(株)社長
放送大学北海道学習センター長


冨田 房男
Tomita Fusao


       はじめに
 わが国の慢性的な不況は、経済界の活力を失わせる結果となっている。産業界の研究開発への投資は少しずつ回復基調にあるがまだまだである。わが国は天然資源に恵まれておらず、人的資源を十二分に活用することが望まれ、科学技術創造立国を目指して様々の政策がとられているところである。その一つとして、大学などの科学技術を産業界に移転し、産業経済の振興を図るとともに、大学などにおける研究成果の活用と研究活動の活性化を目的として、「大学等技術移転促進法(略称)」が1998年8月に施行された。折りしも、大学等の研究教育を巡る環境にも大きな変化があらわれ、国立大学の非公務員型独立行政法人化などを含め、大学等の研究成果の社会貢献のニーズが高まっている。
 この流れは、かなり急速であり且つ複雑でもあるが、社会の流れは止めることはできない。それでもこの流れの基は大学からの研究成果がどのように社会に貢献しているかが見えにくいことや大学が一般社会からかけ離れた「白い巨塔」となっていたことにもあるように見える。

       設立の経緯
 北海道ティー・エル・オー(株)(以下HTLOと略す)の設立に当たり、先ず北海道大学内で出資あるいは参加希望者のアンケートを行ったところ多くの教職員が設立を期待し、支援して下さることがわかった。次に、北海道内の大学などをメンバーとする北海道アカデミックコンソーシアムを設立し、HTLOのあり方を検討した。その結果北海道全域をカバーするものと決定された。早速幹事が選出され筆者が委員長となって大学、北海道経済連合会、道庁、北海道通産局などからのメンバーを主体とする設立準備委員会を設立し、会社の設立を素早く行うこととなった。つまりオール北海道の体制とした。できるだけ早く設立すべきとの北海道アカデミックコンソーシアムの意をうけて、わずか3ヶ月後の1999年12月6日にHTLOを株式会社として設立することができた。そして同年12月24日全国10番目の承認TLO(2003年12月現在、承認TLOは37)となった。このようにHTLOが北海道アカデミックコンソーシアムの決定とオール北海道の意と期待を受けて設立されたことは常に念頭においておく必要があり、環境変化があっても基本的な理念として忘れてはならないことである。

       現 状
 大学等関係者が現在の株主内約90%を、資本金6千万円の内約60%を占めている。また役員10名の内6名は現職の大学教官である。大学等が主体的に設立した企業である。事務所は北海道大学の中にあるが、北海道内すべての大学などの研究成果を対象にしている。HTLOの業務は、当初から図1に示すように、技術移転、受託研究、会員サービスを行ってきている。技術移転の平成15年10月末現在の実績(設立以来の累計、国内特許出願件数101件、外国特許出願件数29件、技術移転件数19件であり、全国的に技術移転の比率は平均的であるが、外国特許出願の比率は高い。なお、技術移転の実績を高めるため、今年度から目利き人材の強化や技術移転専門企業との連携を開始した。受託研究などの平成14年度の実績は、技術指導、受託研究 6件、研究者、研究シーズの紹介51件、技術相談、コンサルティング27件と多くなっている。また、会員サービスについては、先述の技術相談に加えウエッブ上や年4回発行の機関紙(Transfer)で情報提供を行っている。これに加えて、3年ほど前から起業化促進事業として大学等教官がベンチャーを設立するにあたり、特許性の調査、ビジネスモデルの策定、設立業務支援等を専門家とともに行い、平成14年度に設立支援5社、平成15年度に設立支援2社(10月末現在)を行ってきている。

       今後のあり方
 現在、HTLOの事業活動は、国からの支援、道内企業からの4名の人材派遣や会費による資金の提供、北海道からの若手職員の研修派遣等に依存している。承認TLOとしての技術移転業務における機能強化を図らなければならないことは第一のことであるが、一方国立大学が独立行政法人化されるに伴い承認TLOへの出資、大学等発の知財を全て掌握、有望な発明に対する周辺を固めるための体制も作れるようになることなどを活用していただき、北海道大学の知財本部とHTLOが図2に示すように一体としての体制を組むことが重要であると考える。また、いわゆる目利き(HTLO発足当時に任命した北大のアンカーパーソンや他大学での研究交流担当教官)の大学等における位置づけと機能強化もまた重要である。図2には含まれていないが道内の知財担当とも同様の関係を構築することで十分な機能を果たし、自立性・自律性のあるHTLOとして地域経済は勿論、世界に向かって新技術などを発信する体制ができるものと確信している。


広報誌のページへ

北海道大学のホームページへ

目次に戻る