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技術シーズ発展型と企業ニーズ発展型
産学官連携による事業化へのプロセスは(1)「技術シーズ発展型」と(2)「企業ニーズ発展型」に分けて考えることができます。「技術シーズ発展型」では大学や各研究機関が持つ産業技術シーズを基に新規事業やベンチャー企業創出を図ります。ここではIT、バイオ(医薬系バイオ、農業・食品系バイオを含む)、新素材など先端的科学技術が主力になり、創成科学研究機構、次世代ポストゲノム研究組織、ナノテクノロジー研究センター、触媒化学研究センターの複合・融合研究が土台になります。事業化へは知的財産権の活用、事業主体の立ち上げなどで大学の知的財産本部、TLO、北キャンパスエリアに研究成果活用プラザをもつ科学技術振興機構(JST)の各種支援メニューが活用できます。ベンチャーキャピタルなどの金融機関との連携も必要になりますが、先端科学技術共同研究センターのリエゾン機能が金融機関との融合を図ることができます。北大発のベンチャー企業や新事業が今、続々と生まれています。
次に、「企業ニーズ発展型」の産学官連携では、企業、特に地場企業のニーズに大学や各種研究機関が応えるもので、広い範囲の産業分野での連携が可能になります。技術の土台となるものは先端的科学技術から一般的知識・技術の範囲と考えられるものまで多様なものとなります。大学・研究機関との研究には広く工学部、農学部など全学から参加していただかなければなりません。このプロセスでは企業と研究者の出会いから実際に産業技術化研究を進める研究スペース、知的財産権の管理と移転、事業展開を支援する自治体の施策、金融機関の活動の一体化が必要不可欠です。基礎研究を志向する大学と経済活動を優先する企業との二者の連携だけでは難しいのです。ここで技術研究の面で重要な役割を担うのは、地場企業との連携を本来の使命とする公設研究機関です。北キャンパスエリアには北海道立工業試験場をはじめとする4つの試験研究機関があり、また産業技術化研究に向けたレンタルラボ(貸し研究スペース)機能を持つ「コラボほっかいどう」や「研究成果活用プラザ」があり、基礎研究から製品化研究に至るまで切れ目の無い連携機関群が集積しています。各機関の役割は図3のように表すことができます。
学内外の連携の推進
図3に示したような広範囲の機関のマッチングを作るためには、大学の持っている機能だけでは不十分です。大学の範囲を超えて企業や自治体と連携したスーパーリエゾンオフィス(串刺し連携室?)とでも呼ぶべきヘッドクォーター(司令塔)機能が必要となります。
北キャンパスを総合的産学官連携活動の拠点に育てるため、道内企業・経済団体・中央省庁の地方局・自治体(道、札幌市等)は様々な取り組みを実施しています。北大リサーチ&ビジネスパーク構想が北大、北海道、北海道経済連合会をはじめとした関係機関の連携によって進められています。この機能を広く利用してもらうため、産業技術総合研究所の提案により、産学官合同のリサーチ&ビジネスパークのサテライトオフィスが札幌市の都心に開設される予定です。このオフィスはワンストップの産学官連携窓口機能を目指します。また札幌市と北海道の努力によって北キャンパスエリアは「さっぽろベンチャー創出特区」としての認可も得ています。北大では北キャンパスエリアにおいて基礎研究から事業化までの一貫した産学官連携システムを構築するため、これを文部科学省の科学技術振興調整費事業として強力に推進しています。先端科学技術共同研究センターのリエゾンオフィス(連携室)では、各分野の専門家を客員教授や研究員として招聘し、大学・経済界・省庁地方局・自治体・連携支援機構及び財団・金融機関が融合したリエゾン機能の充実を図っています。
大切なことは、北海道が必要とする連携システムのあるべき姿のイメージを鮮明にし、各機関がその実現に向けて各々の持てる力を発揮することにあります。ヘッドクォーター機能は連携の中に自ずから生まれるのです。
点から面の産学官連携へ
持続的な産学官連携とそれによる経済効果を生み出すためには、従来型の一企業と一研究者による共同研究の枠組みを超えて、複数企業と複数研究者による新産業創造を目指した日常的な交流が必要です。そこから新たな製品のアイディアやビジネスプランが継続的に生まれてくるのです。それは産学官連携を「点」の活動から、自律的発展性を持ち「面」へ広がる活動へと変換させることになります。
先端科学技術共同研究センターと100社を越える道内中小企業は2001年に産学官連携研究会(北海道プラットフォーム・エントランス;HoPE)を作りました。大学や各研究機関の研究者と企業経営者が月一回の例会を開き、企業経営者の技術革新を取り入れる意欲の向上と研究者の地域連携に対する意識改革を通して新たな産業技術化研究を生み出し、事業化を目指そうとするものでした。そのシステムを図4に示します。
発足以来2年半を経過して現在会員企業170社を越え、8研究会が自律的に活動しています。その中でも「凍結路面対策研究会」の活動は新聞紙上を賑わしています。HoPEの活動では研究者等のアドバイザーグループに理系研究者ばかりでなく、技術・知的財産管理、経営・資金、法務の専門家を配置し、事業化ステップに対応できるシステムを構築しています。北キャンパスエリアの諸機能と連携し、数多くの競争的資金も獲得しながら新たな事業展開を始めました。
HoPE活動を通して、新産業の形成に必要な産学官連携のテーマは、従来から言われている「産側のニーズと学側のシーズのマッチング」よりも、「産と学の出会いによる企業ニーズ(アイディア)の創生」から多く生まれてくることが分かりました。「企業ニーズの創成→製品化研究→事業化」のサイクルを繰り返すことにより「面」の産学官連携が実現していきます。HoPEの活動は、新産業の形成に産学官がどのように関わっていけば実効を伴うものになるかという具体的なプロセスを例示しているものとして今後の北キャンパスエリアの活動に多くの示唆を与えるものといえるでしょう。現在HoPEの事務局は北海道中小企業家同友会にありますが、「オール北海道」のHoPEへの転換を検討しています。各地域、各分野でHoPEのような自律的展開機能を持つ産学官連携組織を立ち上げることから、産学官連携による地域経済の活性化が実現されるものと期待されます。 |