特集 アジアに広がり花開く北大のフィールド科学

地球環境(森林火災)のモニタリングと修復

工学研究科 助教授


早坂 洋史
Hayasaka Hiroshi

 現在、多くの人工衛星が打ち上げられ、地球環境のモニタリング(監視)が行われています。天気予報の時に耳にする『ひまわり』、この他、ランドサット、ノア、イコノスなどが観測を続けています。これらの衛星のお陰で、天気ばかりでなく、地球全体の環境の変動を監視できています。

       森林火災の現状と衛星監視の問題点
 日本の森林火災の現状は、年間発生は約2,800件、焼損面積は約1,600ha(=16km2)です。この数字を世界と比較すると、例えば、カナダでは、年平均1万件弱の発生で、焼損面積は25,000km2です。全世界の焼損面積は、日本の国土面積約38万km2の7割近くの約25万km2になります。
 は、衛星画像から得られた、1992年4月から1993年3月までの月ごとに発生した火災の分布図で、一年中世界各地で火災が発生していることがわかります。をよく見ると、アフリカや南アメリカの赤道直下の白い部分は熱帯雨林ですが、その周りの色は濃く、火災が多発していることがわかります。ここは、サバンナと呼ばれる植生帯に一致します。サバンナでは、草本・低木類が乾期に燃えます。このサバンナ火災の焼損面積は年間650万km2に達します。
 のように、地球上で発生する火災は衛星でよく監視できるようになってきています。ただ、衛星監視での問題点は、(1)衛星センサーからの信号処理の方法によっては、太陽光の雲や水面での反射を火災と誤認識する、(2)ノア衛星のように、空間分解能が1.1kmと粗く、焼損面積を過大評価する、(3)雲下の火災は発見し難い、などがあります。この問題点とは別に、衛星による監視の結果は、地上調査での情報を基に検証する必要があります。火災の場合、火災現場へ行くこと自体が難しく、かつ危険です。ここでは、検証の代わりに、現地調査の結果から、森林火災の背景を理解して下さい。

       シベリアでの現地調査
 シベリアタイガと呼ばれる大森林地帯を調査しています。北緯62度のヤクーツクの年平均気温は、マイナス10度で、寒すぎて森林火災など発生するとは思えません。ところが、夏は白夜で、日中の最高気温は30度を越え、年間降雨量300mm程度と少ないため、夏に森林火災が発生します。2002年夏、大森林火災がヤクーツク周辺で発生しました。焼損面積は過去50年間で最大の23,000km2でした。写真は、この時の火災の衛星写真です。森林火災からの白い煙が長く数百kmにも伸びています。火災の原因は、温暖化による1980年代からの気温上昇と降雨量減少の傾向が原因と考えています。

       インドネシアでの現地調査
 カリマンタン島パランカラヤ市周辺の熱帯雨湿地林での森林火災を調査しました。南緯2度のパランカラヤの年平均気温は26.7度、年間降雨量は3,000mmで、雨の多い所での森林火災は想像できません。しかし、乾期には雨の降らない日が1〜2月も続く事があり、長い日照り下で森林火災は発生します。1997〜1998年のインドネシア大森林火災の焼損面積は、8,000km2に達しましたが、火災からの煙害も問題になりました。この煙害の原因は、厚く堆積した泥炭層のくん焼が原因でした。

       地球環境(森林)の修復
 1997年、大森林火災がシベリア、インドネシアなど世界各地で頻発し、マスコミは、『地球が燃えた年』と報道しました。確かに、1997年以降、大火災が世界各地で頻発しています。人為火災の増加に加え、雷が原因の火災も増える傾向にあります。火災後の森林修復は、修復手法が確立されていないこと、修復の経過を見るには少なくとも数十年の期間が必要なことなどを考えると、困難と言えます。現在の気候変動による森林火災の急増という状況下では、自然のサイクルに合わないような、所謂“不必要な火災”が発生した場合には、火災を放置しないで、消火活動を積極的に行う必要があると考えています。
 この火災の見極めや森林の植生の状況把握などのために、ますます衛星での監視の重要性が高まってきています。現在、北海道大学の北ユーラシア・北太平洋地域研究センターを核として、森林火災の早期検知・抑制システムの確立に励んでいます。


広報誌のページへ

北海道大学のホームページへ

目次に戻る