【特集 大志を抱け 1】


総長が語る大学の魅力


中村総長(15872 byte) 北大総長

中村 睦男



■「大志を抱け」が北大のモットー■

総長 やあ、いらっしゃい。合格おめでとう。心から歓迎します。
(新入生A、B)――
お時間をいただき、ありがとうございます。
今日は、北大がどんなところか、教えていただこうと思ってやってきました。その旗が、北大の校旗なんですね。

北大の校旗(3885 byte)

総長 そうです。みなさんの先輩で、日本人初の宇宙飛行士である毛利衛さんがこの校旗を宇宙船へ持って行きました。
――
この旗が宇宙を旅したんですか、すごいなあ。
総長 こちらにある額は、やはり北大の先輩で、国際連盟の事務局次長を務めた新渡戸稲造が書いたものです。この"Be Ambitious"は、まさに北大のモットーですからね。

motto.jpg(4617 byte)

――
「大志を抱け」ですね。
総長 北大はクラーク博士の "Be Ambitious" の言葉に代表される、建学の精神、あるいはフロンティア精神をもっています。それが大学の個性、特色でもあり、ここで育った先輩たちは、高く大きな志を抱いて、世界へ、宇宙へ翔いたのですよ。


■都心にある広大なキャンパス■

――
キャンパスが広いので、驚きました。
総長 しかも、札幌という人口が180万人を超える大都市の真ん中にありますからね。キャンパスの南端はJR札幌駅のすぐそば、北端は北24条で、地下鉄で移動すると三駅分の距離になります。そして、函館にある水産学部以外の11の学部と14の大学院研究科が、この一つのキャンパスに集中していることが大きな特徴です。
――
キャンパスを散歩すると、緑が多くて、森林浴もできそうです。
総長 植物園も大きいです。実は、北大の学生は植物園にただで入れるんですよ。だから植物園でゼミをやるなんてところもあります。そこでもまた森林浴ができますね。
――
観光客や市民も、キャンパスに自由に入れるんですね。
総長 そうです。キャンパスビジットといって、学生がボランティアを組織して、高校生や市民の方にキャンパスを案内することもやっています。
――
開かれた大学ですね。
総長 大学で研究する時間についても、とくに制限はありません。自然系の大学院は、夜昼がないですからね。夕方に来てそれから勉強したりするので、1日中稼働していることになります。法科大学院の図書館も24時間開けています。


■大きな自然のなかで勉強できる■

――
私は北海道にあこがれて北大に入ったのですが、北大の学生の特徴ってありますか。
総長 北大の学生の45%が道内出身で、55%が道外出身です。道外から来る学生は46の都府県すべてから来ています。そうすると大学に入って、いろんな所から来ている人と友だちになれる。いままで違った環境に置かれてきた人たちが、いっしょになって勉強する、そして生活するということは、ある種の異文化体験となって、学問的な刺激にもつながると、私は思っています。
――
九州や沖縄からも来ているんですね。
総長 北海道人はよい意味でも悪い意味でものんびりしていて、外からの文化を、異質なものを排除することなく、積極的に受け入れるんですね。だから、よそから来た人は、北海道は住みやすいと言います。のんびりしすぎていると言う人も多いですが(笑)。
――
私は山登りが好きなので、北海道の大学に魅力を感じました。
総長 大きな自然の中に置かれている大学ですからね。北大が好きというより、山登りが好きだとか、スキーが好きだとか、そういう人も多いと思います。クラブ活動も盛んです。実際、北大の学問のなかには、北海道のもつ自然を生かしたものが多いんです。教育の中身も、できるだけ自然環境を生かす形で行われています。たとえば水産学部は、船を2隻持っていますし、生物にしろ、環境にしろ、いろんな分野で北海道の自然と関係のある学問内容になっています。また、広大な演習林も北海道の中にあり、洞爺湖には臨湖実験所があります。そういうところで、大きな自然に触れながら勉強できるんです。


■総長が北大生だった時代■

――
総長は法学部のご出身ですよね。なぜ北大を選ばれたのですか。
総長 いまは大学進学率がとても高く45%ぐらいで、多くの人が大学に行ける時代です。私が北大に入学した1957年頃は、おそらく7〜8%だったはずです。今は文系でも14クラス(約660人)もありますが、当時は四クラス(270人)でした。高校進学率だって50%までいっていない、日本はまだ貧しい時代でした。国立大学の授業料は、高校より安かったのですよ(笑)。それに比べて私立大学はとても高かった。当時は文系でも国立大学の方がレベルが高く、経済的条件からも地元の国立大学、それも何でもできる総合大学を選ぶというごく普通の選択をしたに過ぎません。北海道のなかでは、北大生というと一目置かれる。エリートとして扱われやんちゃしても、大目に見てもらえるという(笑)…そういう時代背景もありました。

総長の学生時代(36546 byte)
1958年8月:阿寒湖キャンプ(前列中央が総長)

――
最初から法学部をめざして勉強されたのですか。
総長 私は初めから法律をやりたいと思っていたわけではありません。大学で勉強したいという漠然とした動機で入学しましたが、当時注目を浴びていたフランス文化や歴史に憧れて第二外国語にはフランス語を選びました。何となく文学部へ行こうかと思ってはいました。僕らの頃、北大は文類、理類、水産類それに医学進学課程に分かれており、入学後1年半経った段階でそれぞれの学部学科に分かれてゆくシステムでした。それで1年半後に法学部を選んだわけです。いくつかの学科に別れていた文学部よりは選択の幅があり、つぶしがききそうな法学部にしたという、どちらかというと消極的な選択でしたね。
――
どんな学生でしたか。
総長 自宅生でした。皆と同じように本代を稼ぐためのアルバイトをし、授業はそこそこという普通の学生でした。ときどき当時全盛時代の日本映画やフランス映画を観ました。小津安二郎作品はよく観ましたし、ルネ・クレマンの「禁じられた遊び」は三回も観ました。2年生の夏にはクラスの友人たちと阿寒へキャンプ旅行をしました。4年生になる前には、5人で二週間ほどの九州旅行をしました。ええ、もちろん往復とも青函連絡船と鉄道ですよ。研究はおもしろいと思いはじめたのは、4年生のときに選んだ深瀬忠一ゼミで、イギリスの著名な憲法学者ダイシーの"Introduction to th Study of the Law of the Constitution" を原書で読んでからです。フランス留学をおえたばかりの気鋭の深瀬先生が学問に打ち込む姿に強く惹かれたのも事実です。


■COEプログラム採択件数は全国6位■

――
北大は、文部科学省の「21世紀COEプログラム」でも、かなり多くの研究が採択されていますね。研究の面で、国際的な成果が上がっているということでしょうか。
総長 それはぜひ、強調したいところです(笑)。「21世紀COEプログラム」は2002年から3年間、募集されました。2002年は4件、03年は6件、そして04年は2件選ばれました。一つの大学で3件選ばれたのが東工大、2件選ばれたのが東大と北大、あとの大学は1件ずつという状況でした。北大は3年間合計で12件となり、全国で六位です。教育についても、「特色ある大学教育支援プログラム」に2003年は「進化するコアカリキュラム―北海道大学の教養教育とそのシステム」が、2004年も獣医学部が「国際獣医学教育協力推進プログラム―アジア・アフリカ諸国を視野において」で選ばれました。それからもう一つ、IT関連の「大学院・社会人教育支援e-カリキュラム」と、もう一件は、練習船や演習林などを使って環境教育を行う「北方地域人間環境科学教育プログラム―総合的環境科学教育による地域活性化」です。

※21世紀COEプログラム
COEはCenters of Excellenceの略。平成14年度から文部科学省に新規事業として設置した「研究拠点形成補助金」により開始。日本の大学に、世界最高水準の研究教育拠点を学問分野毎に形成し、研究水準の向上と世界をリードする創造的な人材育成を図るために、重点的な支援を行い、国際競争力のある個性輝く大学づくりを推進することを目的とする。


――
全部の文部科学省の支援プログラムに、北大は選ばれたんですね。
総長 まあ、成功しているということですね。その理由は、一学部だけで取り組むのではなく、全学をあげて取り組んできたことです。「COEプログラム」は、とくにそうでした。北大は大学全体のまとまりがよく、全体で何かをやろうという雰囲気が出ています。大きな大学ではよく学部の壁が非常に高いといわれますが、北大はその点、壁が低いと言えると思います。


■地道な基礎研究も大切にしたい■

――
国立大学が法人化してから、何か変わったことはあるのでしょうか。
総長 学生を大事にしないといけないという意識が出てきたことでしょうね。私立大学は授業料に直接響くから、その点は敏感だったのですが、国立大学はもともと関心が低かった。学生がいない方が自分の研究ができるという人がいたくらいですから(笑)。いまはそうではなくて、大学は人を集められるだけの魅力を発揮する必要があります。先ほどの「COEプログラム」についても、市民に向けて「北大・未知への ambition」(北海道大学図書刊行会)という本を出しており、北大の学問をできるだけ身近に感じてもらえるよう努力しています。
――
大学も生き残れるかどうか、大変な時代になったんですね。
総長 われわれは地球が相手、自然環境が相手で、すぐ結果を出せというよりは、地道にやって長い目で成果を見ていただきたいというところがあります。下手すると、そういう研究は金にならないから切り捨てるというようになりかねない。われわれは、競争的資金だけでは困るんです。半分は基礎的な研究に渡してほしい。ただ「COEプログラム」では、そういうグループも入っていますから、売れるものだけというわけではなく、いろんな研究を評価しているんですね。役に立つか立たないかは20年、30年後にならなければ分からないのが、基礎研究です。地道に続けて、本当に真剣に取り組んでいる研究なら、残していくことが大事ですね。競争原理が入ってくること自体は、けっして悪いことではありません。競争原理と基礎的な研究をうまく調和させればいいんだと考えています。


■好奇心のある人間は必ず伸びる■

――
私たちは、北大でどう学ぶべきなのでしょうか? 最後に、総長からメッセージをいただきたいと思います。
総長 まず、きちんとした自分を持っているということが大切ですね。もちろん、何をやるか、何をやりたいか、自分で意思と目的を持つ。親から言われたからとか、周りがやるからどうこうではなくて、自分でしっかりこれをやりたいという決意を持ってもらいたい。なにも狭い意味での勉強でなくてもいいんですよ。たとえば、北海道の山に登りたいとか、自然が好きとかね。そういう動機で北大に来てもいいんです。そうして山歩きしているうちに動物や生物に興味を持ったり、地質に関心を持ったり、いろいろな方面に関心がひろがります。自然や社会に対して好奇心のある人間は、必ず伸びるものなんです





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