北大大学院理学研究科 渡部重十
宇宙飛行士は、宇宙を飛びながら、一体、何をしているのだろうか。
スペースシャトルには、通常、コマンダーとパイロット、そしてミッション・スペシャリストとペイロード・スペシャリストの四種類の搭乗員がいる。
ミッション・スペシャリストは、搭載した荷物と宇宙での実験に関すること全般について責任を負い、船外活動や人工衛星の回収・放出などを行う。また、打上げと着陸時にはコマンダーとパイロットのすぐ後ろの席に着き、緊急事態が発生した時にはフライト・エンジニアとして補助的な役割を受け持つ。
それに対しペイロード・スペシャリストは、科学者がなる。彼らは、研究に関する専門的知識を生かし、スペースシャトルに載せた装置を使って、宇宙空間で実験を行うのだ。1992年、日本人として初めてスペースシャトル・エンデバーに搭乗した毛利衛さんは、このペイロード・スペシャリストだった。
毛利さんは8日間にわたり43テーマの実験を行った。この第一次材料実験(ふわっと'92)は、材料、生命など、さまざまな分野にわたる初の本格的な宇宙実験である。ペイロード・スペシャリストは、実験でトラブルが発生したとき、的確に問題点を地上に伝え、実験を成功に導く責任がある。
毛利さんはまた、多忙な宇宙実験の合間に子ども達に宇宙の面白さを伝える宇宙授業を行った。毛利さんという宇宙飛行士は、宇宙の科学者・教育者なのである。
私は、宇宙飛行士になりたかった。そして毛利さんにあこがれ、北大に来た。人類の豊かな未来のために、宇宙に活動を広げていくのは、私たちに課せられた挑戦である。スペースシャトルから眺めた一番印象深い光景は、オーロラだったと、毛利さんはいう。私も、宇宙空間で実験し、オーロラを眺めたい。
北大総長 中村睦男
『毛利衛、ふわっと宇宙へ』という本には、高校1年生だった毛利さんが、学校をさぼって網走に出かけ、そこで観測した皆既日食の感動が、しだいに宇宙への憧れに変わったことが、書かれています。
若いときに本物の自然やそのさまざまな現象に接し、科学への強烈な問題意識を持ち続け、抜群の知力と体力で自分の夢を実現した人ですね。私は、毛利さんが宇宙飛行士に選ばれたときから、北大出身者だったこともあって、その言動に注目してきました。それもあり、昨年春の北大の入学式にお招きして講演してもらったのですが、イメージしていたとおり、明るく行動的で、スマートな方でした。お話も抜群に面白くて、新入生たちも顔を紅潮させて、聴き入っていたようです。