1年前、北大の門をくぐった3人が、山口佳三理事・副学長(平成25年4月第18代総長就任予定)を訪ねました。
入学後、自分の可能性をさらに広げている3人との対話から、充実したキャンパス・ライフのヒントを探ってください。
― すべての学部が集結するキャンパス
山口●僕が受験生の時、東京大学を受けようとしたところ学生紛争で入試が中止になったんです。そこで京都大学を受けたんですが京大でも紛争が激しく、機動隊に囲まれての入試でした。入学しても10月まで学生ストで講義がまったくできない。“自分の勉強は自分でする”それが京大で教わったことでした。その後、大学院生の時に指導教官が北大に赴任することになったので付いていきました。1978年のことですから、それから34年間、ずっと北大です。これが私の北大に来た経緯。山本さんは、外国の学校から北大に来たそうですね。
山本●はい。スイスにあるスイス公文学園を卒業しました。実家は大阪です。スイス公文学園は日本人学校ですが、学生の半分以上はアメリカ人やカナダ、イギリス人でした。ここを卒業し、浪人して北大に入りました。北大に決めたのは、オープンキャンパスで見た北大のキャンパスがあまりにも素晴らしかったからです。キャンパスにほれました。
大場●生まれは滝川市ですが、育ったのは苫小牧市です。道内の高校なので、先生は進学先として北大を第一に生徒に勧めます。また親も道内の大学に進んでほしいと言います。オープンキャンパスの時に教育学部だけを見たので、中央食堂あたりまでが北大だと思っていたんですが、はるか北まであったんですね(笑)。
笹森●生まれたのは仙台です。小さい時に新潟に移り、小中高は東京でした。北大を選んだのは、姉が北大生だったこと、すべての学部がひとつのキャンパスにあり、いろんな学部の子と友だちになれるかなと思ったことからです。私は医学部なんですが、医学部だけが離れている大学って多いじゃないですか。
山口●戦前からの総合大学は都市の過密化とともに移転したところが多く、大学病院の関係で医学部だけが都市部に残ったのです。すべての学部がひとつのキャンパスにあるのは北大の特徴ですね。4、5年前に新しい大学院として総合化学院をつくりましたが、先生は工学部と理学部から来ています。これはよそではまねができない。工学部と理学部が同じキャンパスにあるところはほとんどないのです。
山本●道内の人が少なくてビックリしました。
山口●全国から学生が集まっているのも特徴ですね。平成24年度は、道外の学生の比率が57%。道内の学生は43%にすぎません。これも珍しいですよ。東京大学でも関東圏の学生が5割を超えています。九州大学だと九州に山口県を加えた割合が9割以上です。大場君は苫小牧から通っているの。
大場●いえ、やはり苫小牧からは遠いので、大学の近くで自炊しています。
山口●大場君のように道内の学生でも親元から離れている学生が多く、自宅外の割合は7割を超えているんじゃないだろうか。アンケートを採ると、だいたい北大の卒業生は母校への思いが強い。親元を離れ、ひとつのキャンパスで同じ飯を食った仲間という思いが強いのでしょうね。さて北大の講義はどうですか。
― 開かれた学内研究ネットワーク
山本●以前から動物が好きで、獣医師になりたいと思っていました。最近は「脳」に興味が湧き、脳科学に関わる講義を取ったところ、文学部の先生がいるのにビックリ。北大ならではと思いました。獣医学部の卒業生のほとんどは獣医師にならずに研究者になります。それも驚きました。
大場●僕は教員志望で、専門的な勉強を積んでから先生になった方が良いと考えて、文学部を選んだんですが、北大の教育学部は教員になるより教育学という学問に力を入れているんですね。高校の頃は分からなかった。
山口●北大の文学部も特徴があるんです。かつて大学には教養部という課程がありました。これは戦前の旧制高校が戦後に大学と合併してできたもので、もともと別な学校です。ところが北大では大学附属の予科を設けて旧制高校課程の代わりにしており、先生が各学部に所属していました。文系学部は戦後の発足ですが、こうした経緯で戦前から文系の先生がおり、そのため戦後発足の学部としては規模が大きいんです。大概のジャンルの先生がいます。
笹森●私は医学部ですから医師免許を取るだろうとは思いますが、高校時代から遺伝子や生命科学への関心が高いので、その方面の研究もしたい。また障がい者福祉への関心もあり、その方面に進むことにも興味があります。まだひとつに決めないで、いろいろな勉強をしたいですね。北大ならばそれが可能です。
山口●北大は国立大学の中で最も学部数が多いんです。水産学部と獣医学部が並んであるのは北大だけ。中でも生物科学の比率が高い。これも北大の一大特徴でしょう。生命科学院という大学院もあります。医学部でも研究が盛んですね。
北海道大学1年(学部別入試・医学部医学科)
笹森 瞳
北海道大学1年(学部別入試・文学部)
大場 健太
北海道大学1年(総合入試・理系)
山本 梨絵
― 進化する総合入試
山口●平成23年度から総合入試を設けたのは、今の高校では理科の勉強が足りないので、大学でしっかり勉強してほしい、という思いもあったんですよ。大学で生命科学を学ぼうと思えば、必ず化学も数学も必要となりますから、高校の生物だけでは足りない。
山本●やはり総合入試で入学した学生は、テストの成績で進む学部学科が決まるので、普段から必死ですよね。
山口●たしかに生物系に進もうと思えば競争が大変かもしれない。化学も人気ですが、分野が幅広いから選択できる学部もたくさんある。1年生のうちからアンテナ張り巡らせて見ていれば、案外あちこちに選択肢のあることがかわると思うし、専門に進んでからでも、またやりようがあるんです。だから進路を選ぶのに成績だけで考えることはないんです。
笹森●私の医学部のように進む学部が決まっている人でも、総合の人を見習って頑張らないといけないという気持ちになっています。
山口●総合入試の考え方をより進めて、文系から理系、理系から文系へと移れるようにしました。すると高度な数学が求められハードルが高いはずなのに、文系から理系に移ろうとする学生が思いのほか多くビックリしました。こういうチャンスを設けて良かったと思いましたね。
― たくさんのチャンスを活かして
山口●サークル活動はどうですか。
大場●僕は混声合唱団に入っています。他大学の学生が多く、1年生16人中4人が他大学ですね。
笹森●私のサークルは医学部の水泳部ですが、50人ほどの部員で医学部生は20人ぐらい。総合理系の人や理学部や工学部、院の人や他大学の人もいるんですよ。ほかには、障がいのある学生をサポートする団体を立ち上げて積極的に活動しています。
山本●私はまだサークルには入っていないんです。学部が決まったら入ろうと思います。
山口●新しい取組みの一つを紹介します。平成25年度から始まる「新渡戸カレッジ」は、北大の前身である札幌農学校第2期生で国際連盟事務次長を務めた新渡戸稲造氏にちなんだ、全学部を横断する特別教育プログラムです。国際社会の中で日本人としての自覚をもって生き抜くグローバルリーダーを育成するため、入学者の中から毎年200名を募集します。語学力を身に付けたい、海外でも活躍してみたい、そんな思いを持っている人には、ぜひ挑戦してもらいたい。最後に3人から後輩に向けて一言。
山本●北大の1年は過ぎるのが速い。自分の理想を求めて北大に入るのも良いけれど、北大は先入観を打ち破ってくれます。
大場●まず、自分はここで何をしたいのか、はっきりさせることが大切だと思います。入ってからも十分選択ができるので、1年かけてじっくり何がしたいか考えてほしい。
笹森●私は「北大元気プロジェクト」という学生の活動を支援するプログラムを利用して、障がいを持った高校生に大学を体験してもらうプロジェクトを立ち上げました。勉強はもちろん大切ですが、時間をつくろうと思えばつくれるので、いろんなことに挑戦してほしい。きっと楽しいことがあります。そしてここは、その挑戦を応援してくれる大学です。
山口●ありがとう。北大は、みんなが夢を持ち、そしてチャンスを活かせるような環境をこれからも、つくっていきます。

(2012年12月21日 高等教育推進機構長室にて)

