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建築設計図が語る北大の歴史

シリーズ 虫と石18 北海道大学総合博物館が収蔵している450万点の標本から地球上で最も繁栄している生物・昆虫と、地球の歴史を物語っている“石”を紹介します。

大原 昌宏 ヤナギルリハムシ

バイオミメティクス(Biomimetics)は、「生物模倣技術」と訳される。

ヤモリが壁を登り天井から落下しないのは、指先の数万本の細かい襞(ひだ)の先と壁とが分子間力(ファンデルワールス力)で互いに引っ張られているから。指先の接触面の角度を微妙に変えることで、指は簡単に壁からはがれる。この指先の微細構造を真似て、ゲッコーテープという接着剤のいらない粘着テープが開発された。このように生物の特殊な能力やデザインを分析し真似て、生活に役立つ製品を開発する技術がバイオミメティクスである。

北大キャンパスのヤナギの葉上に多いヤナギルリハムシPlagioderaversicoloraも、ヤモリ同様、ガラス窓を落ちずに垂直に歩くことができる。脚(符節)の裏には、15マイクロメートルの刺毛(吸着毛ともいわれる)が密に生え、この刺毛をガラスに吸着させて歩く。昆虫は、分子間力に加え、刺毛の先から液を分泌し吸着効果を上げる。ヤモリとは違う吸着技術がそこにある。

バイオミメティクスの研究例として、マジックテープは、ゴボウの実が犬の毛にくっつく構造を真似たもの。トンネルに入るときの衝撃や音がしない500系新幹線の先端は、カワセミの嘴(くちばし)。オリンピックで使用禁止になった速く泳げる水着は、サメの肌。最近では、カタツムリの殻表面を真似た汚れない外壁、蛾の目を真似た無反射フィルムなども開発されている。コンピュータやロボット工学、ナノテクノロジーの進歩で、人間の技術力が上がり微小生物の模倣も可能になってきた。

さて、さらなる新製品開発には、真似するモデル生物を多く観察しなければならない。生物標本を保管しているのは博物館。博物館標本を電子顕微鏡で詳しく観察し、電顕画像を集めたデータベースを作成し、工学者がそれを閲覧することで、新技術のアイディアに気づくかもしれない。あるいは生物学者が不思議に思う生物の能力が、工学者の計測や実験で解明されるかもしれない。

自然から学ぶ(真似る)技術は際限がない。新発見を求めて生物学者と工学者が博物館の標本を有効に使う協力をはじめた。今年1月22日から「自然に学ぶネイチャー・テクノロジーとライフサイエンス展」が開催された。今後も、博物館標本の新たな利用と活用が期待されている。

(総合博物館 おおはら まさひろ)

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