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シリーズ 虫と石18 北海道大学総合博物館が収蔵している450万点の標本から地球上で最も繁栄している生物・昆虫と、地球の歴史を物語っている“石”を紹介します。

松枝 大治 黄鉄鉱(パイライト)

黄鉄鉱(パイライトPyrite)は等軸(立方)晶系に属する鉄の硫化鉱物(FeS2)で、真鍮黄色の金属光沢をもち、天然では塊状や不規則集合体、コロフォーム状をなして産出する。条痕色(粉末の色)は帯褐黒色を示し、見かけが酷似する黄銅鉱(緑黒色)とは区別できる。単結晶は、生成条件の違い等で立方体や五角十二面体(パイライトヘドロン)、八面体及びこれらの面の組み合わせや発達の程度で多様な見かけ(晶相)を示す。しばしば、各結晶面には特徴的に複数の面の組み合わせからなる平行な筋(条線)が現れ、互いに直交する。

硫化鉱物としては珍しく硬く、ハンマーなどで叩くと火花を出すことから、英名はギリシャ語の「火」を意味するpyrに由来し、ラテン語pyrites[燧石(ひうちいし)]に語源がある。1862(文久2)年幕府洋書所発行の辞書には火打石と訳され、黄鉄鉱の和訳は1878(明治11)年和田維四郎による。その特徴からしばしば金と間違えられたことにより、「fool's gold愚者の金」とも呼ばれた。黄鉄鉱が風化作用などの変質により、元の形を残したまま褐鉄鉱に変化(仮晶)したものを升石、あるいは武石(長野県武石村産に因む)などと呼ぶ。

黄鉄鉱は、火成岩、堆積岩、変成岩や各種の金属鉱床産鉱石及び熱水変質岩中など、天然では最も普通に出てくる鉱物のひとつである。良好な結晶外形を示すものは、スペイン、メキシコ、ペルー、イタリア、フランス、日本、アメリカなど世界各地から産出が知られている。この鉱物は古くから宝石としても利用され、古代ギリシャやローマ、インカ帝国などの都市遺跡から発見されている。ラピスラズリ(アフガニスタン)、エメラルド(コロンビア)、トルコ石、ダイヤモンド、サファイア中に包有される例もある。また、アンモナイトやウミユリなどの化石がその形を残して黄鉄鉱に置き換えられていることもある。

堆積岩の層理面に沿って針状結晶が放射状に集合し、円盤状になったものはパイライトサン(黄鉄鉱太陽)と呼ばれる。これは初生的に白鉄鉱(Marcasite斜方晶系)として晶出し、後に黄鉄鉱に変化したものと考えられる。白鉄鉱は黄鉄鉱と多形(同一化学組成で異なる結晶構造)の鉱物で、天然における低温・酸性条件で生成するが、準安定相のため黄鉄鉱に変化しやすい。

アメリカ南西部の先住民は、磨いた黄鉄鉱を板にはめ込んで鏡にしたといわれる。過去には、硫酸を取るために黄鉄鉱が使用されたこともあるが、現在では石油精製(脱硫)の際の副産物などとして安価に取り出せるようになったため、産業的な用途がなくなった。方鉛鉱などと共に半導体の性質があることから、過去に鉱石検波器として鉱石ラジオに用いられたこともあるが、近年では高性能な薄膜太陽電池の材料としての利用が注目を浴び、工業的価値の見直しが進んでいる。

(総合博物館 まつえだ ひろはる)

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