就任のご挨拶
北海道大学総長 佐伯 浩
北海道大学第17代総長就任にあたり、皆様にご挨拶申し上げます。
21世紀を展望する時、人類が持続的発展を続けるためには、限られた資源を有効に活用するとともに、地球規模の環境の保全と地球への環境負荷の軽減が必要であります。加えて、自然災害の防止等による安全で豊かな社会の創出、さらには人類の健康増進や人類普遍の真理の探求が重要であります。高等教育を担う大学の使命は、教育と研究を通じて真理の探究と知識を創造するとともに、上述したような人類共通の課題の解決に向けて努力することと、次の世代を担う優秀な人材を養成することにあります。これらを実現するために、北海道大学は学問の自由を基本とした「知の創造」を通じ、人類に貢献することに努めるとともに、国立大学法人として国民からの付託にともなう責務に対しては、自らの責任において積極的に応えなければならないと思います。法人化して3年、中期目標期間の半ばを過ぎました。残り3年で中期目標を達成することは重要なことではありますが、本来、10年20年先の展望を描き、それに向けての将来構想を明確にした中で、次期中期目標を策定し実行していくようにせねばなりません。
大学が最高水準の教育・研究を維持し発展させるためには、安定した教育研究体制において、時間をかけて熟考し、教育研究活動に打ち込み、満足できる成果を達成しえる環境の整備が重要であります。さらに、21世紀に求められている学問間の融合化、学際的課題への取り組み、萌芽的分野や未踏分野の開拓と発展を確実にするためには、教員が教育研究に没頭できる環境づくりが必要ですし、事務職員の能力向上のための研修機会の拡大が重要と思います。その結果として教職員が一丸となった共働体制の構築と信頼される組織の確立が必要です。
次に教育研究についての基本的考え方について述べたいと思います。国際的な教育圏は、米国を中心とする北米、ボローニャ宣言に基づき、強い連携で結ばれたEU諸国それにアジアの三極構造になることが予想されています。本学も我が国を代表する拠点大学の一つであることは言うまでもありませんが、少なくともアジアの拠点大学を目指すべきと考えていますし、それが世界の拠点大学の一つになる第一歩であります。それが実現すれば、入学する学生の質の向上、留学生の増加等、波及効果は極めて高いものとなります。
人材育成を目的とする大学にとって、教育は極めて重要な柱であります。平成18年度入学の学部学生から実施されています「厳密な成績評価」と「単位の実質化」については、全学教育で一定の評価を受けつつあります。随時、学部専門教育、大学院へと広げていくことが必要ですし、外国語教育センターの設置とあいまって外国語教育の充実を計りたいと考えていますが、これらの事は本学の教育を国際化する第一歩であります。学部、大学院教育の中でも英語による講義を増やしていくことが必要ですし、大学院においては、英語の講義だけで修了に必要な単位がとれるようなシステムの導入も将来的には必要と考えています。また、安易な成績評価は国際的評価を下げる恐れもあります。教育面での国際化は早急に取り組むべき課題です。
次に研究に関する基本的取り組みについて述べさせていただきます。基礎的研究の基盤なくして応用研究は存在し得ません。応用研究の成果は産業界や社会へ流れ、それが再び大学へ還流してきます。この「知の循環」が大学の内で機能することが重要であります。この循環を確実なものにするためには基礎的研究成果のストックがあって初めて可能になります。そのためには、知財本部と創成科学共同研究機構リエゾン部との統合も必要になってくると思います。本学が世界的教育研究拠点へ成長するために、ここ数年、研究院、学院構想に代表されるように組織の弾力化、柔軟化策がとられ一定の成果を挙げてきました。部局を超えた教育研究拠点づくりが以前に比べて容易になりましたが、現在進行中のグローバルCOEを目指す、新たな教育研究拠点グループの形成と、新たなプログラムである国際的な教育研究拠点形成にも力を入れるべきと考えています。
法人化した大学においては、総長のリーダーシップの下、大学構成員がそれぞれ納得した上で、それぞれの任務を達成するためには、大学の長期展望やビジョン、それに基づいて定められる中期目標の基本的考え方を全構成員が共有することが大切であります。同時に、大学全体の運営に関する情報を全構成員が把握している必要があります。これが大学執行部と構成員間の信頼関係をより強化する第一歩になるものであり、組織への信頼に繋がるものと考えます。そのため、各総長室の審議結果等は可能な限り、公開していくべきと考えているところです。
北海道大学の4つの教育研究の基本理念に基づき、広い視野と高邁な理想を有し、高度の専門的知識と共に理解力、課題解決能力を持ち、国際性豊かな人材を養成すべく、全力で教育研究環境の充実に取り組むと同時に、真理の探究と創造性に満ちた研究活動を積極的に支援していく所存でございます。これからの4年間、皆様の御協力を得て、北海道大学の発達に全力で尽くしていきたいと思っています。
平成19年5月7日
北海道大学総長 佐 伯 浩