北海道大学に入学された皆さんに、北海道大学の教職員を代表して、心よりお祝いを申し上げます。また、今日の日まで皆さんの勉学と生活を支えてこられた御家族の方々に対して、心より敬意を表しますとともに、今後ともお子さんを温かく見守り、励まして下さいますよう、お願い申し上げます。
さて、今年の入学者は2,643名で、そのうち男子学生1,915名、女子学生728名で、全体の27.5%になります。留学生23名も入学者の中に含まれています。また、道内出身者は1,401名、道外出身者は1,242名で、道外出身者が全体の47%を占めています。生まれた地域も異なり、育った環境も異なっている多くの同期生が、この北海道大学という環境で学び、課外活動を通して切磋琢磨することになります。皆さんは生涯を友とするような友人を数多くつくってもらいたいものですし、それが皆さんの人生において大きな宝物となることを期待します。
さて、本学は1876年に創立された札幌農学校に始まり、東北帝国大学農科大学、北海道帝国大学、北海道大学と変化し、現在の国立大学法人北海道大学となり、創立以来、132年の歴史を積み重ねてまいりました。また、大学の規模も現在は12学部、17研究科・学院を有する我が国の基幹総合大学に成長してまいりました。4年前に、本学が法人化されるに際し、本学の教育研究の理念として、「フロンティア精神」「国際性の涵養」「全人教育」それに「実学の重視」の4つを掲げました。これは、創立時の教頭であったウィリアム・S・クラーク博士以来132年の歴史の中で醸成されてきた、本学の教育研究の基本姿勢をもとにしたものであります。本学は、これらの理念のもとに、教育研究を通して、皆さんを、将来の日本あるいは世界を、勇気を持って先導していくような人材に育てることを意図しているところであります。
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さて、皆さんが、これから4年間、あるいは6年間、本学で学ぶに当たって是非実行していただきたいことを述べたいと思います。
まず第一に「自学自習」の勧めであります。
今まで皆さんは、大学入学を目指して受験勉強をされてきました。教科書に書かれた、決められた範囲の勉強をしてきたわけであります。しかし、本学に入学された皆さんは、これからは、人間として、社会人として必要なこと、高度の職業人として指導的立場に立って活躍するために必要なこと、あるいは国際的な場で活躍するために必要なことの基本を学ぶことになります。
高度職業人としての学ぶべき事は、各学部・各学科のカリキュラムに示されていますが、その基礎になることについては、皆さんが入学後、最初に履修することになる全学教育(教養教育とも言いますが)、この全学教育の中で学びが始まり、学部在学中も自ら学び続ける必要があります。また、一生学び続けることにもなります。現在、二単位の講義科目は90時間の学習が必要とされています。皆さんは、90分の授業を15回受け、定期試験に合格して二単位を得ることができます。総講義時間は、22時間30分でありますから、残りの67時間30分は、その講義を完全に理解するために必要な予習・復習と関連する内容を調べることを想定したものとなっています。そのためには、他の人の力を借りず、自らが学ぶ必要があり、いわゆる「自学自習」が前提となっていることを充分理解しておいていただきたいと思います。また同時に、学んだ内容について、自らが考え、それに対する自らの意見なり考えを持っていただきたいものです。幅広い知識と教養に裏打ちされた、健全な批判力と本質を見る目を養っていただきたいものですし、自らの行動についても確固たる信念にもとづいたものであって欲しいものです。
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本学では、卒業生に対して、本学の教育に関するアンケート調査を実施し、数ヶ月前にその結果の報告書ができました。4つの文系・理系学部の卒業生で、年代も卒業後5年、10年それに20年経った方々を対象としました。その中で、学生時代に、もっとしっかり学び、身に付けておけば良かった科目として、一番目が外国語、二番目が学部専門科目の講義内容、そして三番目が、これから皆様方が学ばれる全学教育科目の講義でありました。これは卒業学部、卒業年代に関係なく同様の結果でありました。皆さんの先輩の方々の率直な反省でありますので、素直に耳を傾けていただきたいと思います。現在、大学においても、社会においても急速に国際化が進行しています。皆さんが社会に出る頃には、もっと国際化が進んでいて、皆さん方それぞれが国際化の渦の中で働かなければならない情況になっていると思います。本学の基本理念である「国際性の涵養」を実現するためには、我が国の文化や歴史に関する知識を持つことは当然のことでありますが、それと同時に異文化理解等にも力を入れるとともに、外国人とのコミュニケーション能力の一層の向上が望まれます。本学においては、昨年度、外国語教育センターを設立し、より効果的な外国語教育に取り組んでいるところであります。外国語を自分のものとするためには、皆さん方一人一人の自己努力、即ち、「自学自習」が不可欠であります。コンピュータを利用した外国語学習システムであるCALLシステムの積極的な活用、留学生との交流等を通して、コミュニケーション能力向上に心懸けていただきたいと思います。外国語を学ぶに「王道」はありません。日々の着実な努力によってのみ、目的が達成されます。また、皆さんにおかれましては、大学卒業後も、めまぐるしく変化する社会・経済それに科学技術等に対応して、先導的役割を果たしていくためには、「自学自習」の習慣を学生時代に身に付けていただきたいと思います。
二つめは、想像力豊かな挑戦者になっていただきたいということです。
現在、我が国が抱える社会的課題である、少子・高齢化の問題、エネルギー問題や地球規模の環境問題と、それに関連したサステナブルな社会の実現といった差し迫った課題、さらには科学技術や人文・社会科学等の諸課題に対して、それらの課題解決のプロセスで起こり得る、あるいは起こる可能性がある現象や出来事を、想像力を働かせて、予測し、さらに、最短で、最も効果的に解決する方法を推測するといった訓練を日頃から心懸けていることが重要です。想像力の確かさを確実なものにするためには、当然幅広い知識とその知識の体系化が必要ですし、多くの多様な情報を持ち、それらを分析する能力を磨き上げることも重要です。そのためには、いわゆる常識といったものを疑うことも必要ですし、複数の学問分野を組合せ、融合して考える能力も必要でしょう。ある場合には、「閃き」といったものも必要になるかもしれません。少なくとも、今起こっている事象や課題が、その後どのように変化していくかを想像したり、予測したりすることに日常的に慣れておくこと、常に疑問として頭の中に入れておくことが重要で、それがあって、「閃き」を把かむことができるのです。そのような努力と能力開発の後、課題解決に向けて、自ら積極的に挑戦していく姿勢が求められます。本学の理念の一つである「フロンティア精神」を持って、課題解決に向けて努力して欲しいと思います。また、そのような課題解決に向けてリーダーシップを取れるような人材を目指して欲しいと思います。想像力を高める第一歩は、学部教育課程における基本的知識の修得と論理的思考とそれに基づく分析能力の向上にあると思います。学部教育をしっかりと身に付け、想像力溢れた人材に成長し、未来に向かって挑戦する意欲を持って、世界のために貢献することを願っています。
本学は、創立以来、大学あげて人材の育成に取り組んでまいりましたし、立派な人材を世に送り出してまいりました。皆さんが、充実した学生生活を送れるよう、教育研究の環境整備と学生支援活動のさらなる充実に向けて力を入れていく所存であります。
この伝統ある北海道大学を選んで入学された皆さんが、卒業される時、多くのかけがえのない友人を得、社会で必要とされる知識と豊かな想像力を持って未来に挑戦し、御活躍されることを御祈念申し上げて、入学式の告辞を結びたいと思います。

平成20年4月8日