平成20年度 修士学位記 専門職学位学位記 博士学位記授与式 総長告辞
北海道大学総長 佐伯 浩
本日、ここに北海道大学修士・専門職学位・博士の称号を授与された皆さんに対し心よりお祝いを申し上げます。また、この日まで長い間、皆さんの勉学と研究を支えてこられた御家族および関係者の皆様の御労苦に対しても心より敬意を表したいと思います。
今回の修士の学位記授与者は1,433名、専門職学位記授与者は154名、それに博士学位記授与者は課程博士320名、論文博士は30名です。
さて、これから皆さんは、企業、国あるいは地方の行政機関、国際機関あるいは企業等の研究所や技術開発関連部署で活動される方もいれば、さらに大学で研究を続けられる方や海外の研究機関等で研究される方もおられると思います。本学で培った知識と研究のスキルを活用され、さらに飛躍されることを心より願っています。
さて、人類は長い歴史の中で常に創造・破壊・復興をくり返しながら、着実に自然や社会現象等に対する理解を深め、知識を継承して、高度の文化と文明を育てあげてきました。これらの事が人類に豊かさと大きな恵みを与えてきたわけであります。しかし、一方で、近年、科学と技術の著しい進歩が多くの人々に不安を与えていることも否定できません。20世紀の後半から特に顕著になった、公害に代表される環境問題、新技術を用いた食に対する安全性、先端医療や医薬品等であります。さらに最近では、科学技術の飛躍的進歩により、学問の細分化がすすみ、余りにも専門的すぎるため、一般の人々だけでなく、専門家にとっても全体像が観えず、それが科学技術への不安を高めているとも言えます。
このようなことが継続的に続くと、科学や技術開発そのものが、市民感覚から遊離したものになり、市民の信頼を失うことにもなりかねません。先端的研究に没頭し、問題や課題を解決することは非常に重要なことですが、同時に社会科学や人文科学の知識の獲得と一般市民の感覚を持ち合わせて欲しいものです。研究により得られた成果を、いろいろな角度から観、それが何に利活用されるかについても思いをはせて欲しいものです。また、皆さん方の研究成果をわかり易く、一般市民に向けて解説できるような心づもりを常に持って欲しいものです。
21世紀は知識基盤社会と言われています。これからますます国際化が進展し、世界のあらゆる情報が瞬時に集まりますし、世界の先端研究成果もすぐ読むことができ、また発信できる時代です。皆さんの中にも研究者としての道を進む予定の方もいらっしゃると思いますが、オリジナリティーの高い研究を進める際には、その成果を急ぐことはありません。
本学の中央にあるファカルティハウス「エンレイソウ」の二階会議室に新渡戸稲造の書があります。そこには「Haste not. Rest not.」と書かれています。直訳すると「急ぐな!休むな」となりますが「焦るな、怠けるな!」と言った方が適当だと思います。研究に焦りは禁物です。着実に余裕を持って一歩一歩目的に向かうことが大切ですし、それが最終的に大きな成果を得る原点だと思います。
さて、本日、各学位を授与された皆さんには、北海道大学で得た知識と多くの経験をもとに、これからの人生を、高い倫理観と大志を持って歩んでいただきたいと思います。皆様の前途に輝かしい未来が開けていくこと、その未来を皆さん自身が切り開き、前進されることを信じて告辞の結びとします。
平成21年3月25日
北海道大学総長 佐 伯 浩