新年あけましておめでとうございます。平成23年の年頭にあたり教職員と学生の皆様方に心より新年のご挨拶を申し上げます。
平成16年4月1日に法人化された本学も、第1期の6年間を無事通過し、第2期目初年度もまもなく1年が経過しようとしています。第1期の6年間は、運営費交付金の年1%削減と大学病院の経営改善係数による負担等によって、本学の財務状況は厳しいものでしたし、教職員数の年1%、5年間で5%削減も実施され、本学にとって試練の時期でありました。しかしながら、全教職員の知恵と努力によって、人件費削減、諸経費の節約、徹底した入札制度の導入、道内国立大学法人による共同発注や資金の共同運用等により、計画的に、目的積立金として収入の一部を留保し、留学生や一般学生の支援のための施設の充実等に力を入れることができました。この場を借りて、全教職員の皆様に心より御礼を申し上げます。
先進国における高等教育への公財政支出は、平均してそれぞれの国のGDPの1.1%であるのに対して、我が国は0.5%となっていて最低であり、その分、家庭の負担が大きくなっていることを意味しています。資源も乏しく、国土も狭隘な我が国にとっては、21世紀を知識基盤社会と位置づけ、科学技術創造立国を目指すことによってのみ将来の発展を確かなものにすることを可能にするとしていますが、そのためには、まず国際化が進むなかでの、高等教育に対する長期的展望に立脚した政策と財政措置がとられるべきと考えます。我が国の高等教育機関は、我々の属する国立大学法人、地方自治体が有する公立大学それに私立大学等から成ります。しかし学部学生数の約76%が私立大学であり、国立大学は約20%であります。また、大学院生数では国立大学が全体の約60%で、理系大学院では圧倒的に国立大学となっています。しかしながら、国立大学に対する国民の方々の理解が充分とは言えません。現在、我が国の財政状況には極めて厳しいものがあります。このような情況下で国立大学への予算を従来どおり安定的に確保するためには、国民や政治家の方々に国立大学の実体を知っていただき、国立大学法人の財務基盤を強化することこそが我が国の長期的発展に繋がるといったことへの理解を得ることも非常に重要です。そのため、私自身も、道内7国立大学法人の学長とともに、あるときは国立総合7大学と早稲田大学、慶應義塾大学の学長とともに記者会見をし、国立大学法人の現状への理解に努めてまいりました。これからも機会をみて、国立大学法人への理解を深めていただけるよう努力したいと考えています。
国立大学法人も昨年4月から2期目に入りました。この2期目の中期目標・計画の策定に当たっては、本学の規模、創立の由来と歴史それに本学の教育研究の理念から、本学の機能として@世界的研究教育拠点、A高度専門職業人養成、それにB地域貢献や産学連携それに社会貢献や国際交流等の社会貢献を果たしている大学と位置づけ、国内外から高い評価を受ける大学を目指さねばなりません。特に本学が北海道開拓のために創立されたという歴史的経緯からも、北海道の経済や文化にも貢献することは当然と言えるでしょう。
さて、話は変わりますが、最近、世界大学ランキングの話題がマスコミで度々取り上げられています。本学の経営協議会の中でも委員の中から、その話題が出されました。また、昨年末の本学総長選挙における質疑応答において、選考会議メンバーから、世界大学ランキングについてどう思うか、そして本学は将来どのくらいを目指すのかとの質問がありました。大学ランキングを実施している機関によって、その評価の基準や評価項目が異なっていますし、各項目の重みが違っています。日本は島国で、先進国である北米やヨーロッパからも離れていて、高等教育や研究の普及の歴史もあるため、国内で学会組織が古くから充実しています。そのため日本語で書かれる論文が多く、また当然、発表会、シンポジウム等も日本語で実施されることが多いため、世界大学ランキング等においてはそれらが反映されていないなど、日本の実体を正確に反映しているとは言えないとの意見があります。
一方、ヨーロッパでは1999年のボローニャ宣言以来、この10年間のボローニャプロセスの間、高等教育の統一的な体系化がなされてきました。勿論、未だ完全ではありませんが、それぞれの国でボローニャ宣言の主旨の達成に向けて努力されていますし、昨年、本学からオランダのデルフト工科大学とライデン大学での研修に出席された先生方の御意見の中にも、各大学とも、将来の方向性は定まっていて、それに向かって全力で努力中であることを聞きましたし、私自身もポーランドのクラコフ工科大学の先生方からその重要性を聞きました。その中で、EU諸国の有力大学では英語による講義を急速に増やしている状況も明らかになっています。ヨーロッパの歴史ある国々において、それぞれの国の言葉だけでなく英語による教育に力を入れているという事実は、EU域内の各大学が高等教育の国際化の重要性をお互いに認めているからに違いありません。
私は世界大学ランキングを全く無視することはできないと考えています。我が国の受験産業においても、最近は我が国の大学の入学試験に関する情報に加えて、各大学の教育力や研究力といった大学そのものの特性や強さについて積極的に情報を発信していますし、世界大学ランキングと同様の項目の情報も積極的に掲載しています。これらの情報により、今や世界の学生の流動性が高まっているわけです。本学が本学の特徴として位置づけた「世界の教育研究拠点を目指す大学」を実現するためには、日本からは勿論のこと、世界から学生が集まるような大学を目指さねばなりません。そのような情況を加速するためにも、本学がより国際化することが重要となります。
私は第2期中期目標・計画策定においては、本学の4つの教育研究理念と本学が果たすべき3つの機能に基づき、本学の全ての活動を包括する基本目標として次の4つの目標を設定しました。@世界水準の人材育成システムの確立、A世界に開かれた大学の実現、B世界水準の知の創造と活用、そしてC大学経営の基盤強化であります。これら4つの基本目標達成に向けて第2期中期目標・計画が策定されましたし、その策定の過程では本学各部局の教授会等で説明会を開かせていただきました。
この4つの基本目標のうち、最初の二つは、現在世界の高等教育機関に求められている学生の国境を越えたモビリティの向上と国際化の推進を意味していて、特にEU圏域においては将来的には国境を越えての就職を可能とする前提条件を克服するためにも必要とされています。このモビリティの向上は学生に限らず教職員にも当てはまるわけです。また、学生や教職員のモビリティの向上は大学ランキングにおいても重要なファクターとなっています。また、三番目の知の創造と活用については、まさに、国際的に認知されたジャーナル等にその成果が登載されることを意味していて、個々の研究者自身の研究成果の重要性を示しています。本学の研究者にとっては、それぞれが所属する学会活動を重要視することは大切なことではあります。しかし、研究者自身が高い国際的評価を得るためと、本学の名を高めるためには、独創性が高く完成された論文は可能な限り評価の高い国際ジャーナルに投稿して欲しいものです。教職員それぞれの努力と各部局のサポート、それに大学執行部の適切なマネージメントがあって、中期目標の達成も可能となりますし、世界大学ランキングにおいても上位への躍進が期待されることになります。
昨年は硬式野球部が全国大会で準々決勝に進出し、延長14回、3時間半の激闘の末、八戸大学に負けましたが、選手諸君の健闘に本学卒業生は「学生野球の神髄」とあらためて北大を卒業したことに誇りを持ったそうですし、年末には本学名誉教授の鈴木章先生がノーベル化学賞を受賞されました。本学では初めてのノーベル賞受賞者ということで教職員、学生等、本学に関係する多くの方々から喜びの声をいただきました。特に、すでに学位を取り、帰国している元留学生からの「北海道大学で学んだことを誇りに思う」とのメールを見た時には、今回の鈴木先生のノーベル賞受賞が、本学の国際化への足並みをさらに速める効果があると感じました。鈴木章先生に続いて、多くの若い研究者の成果が国際的評価を得ることを期待したいと思います。
最後になりますが、平成23年が北海道大学にとって、また本学の教職員、学生諸君そして同窓生の皆様にとって良き年になることを願って年頭の挨拶の結びとさせていただきます。