本日、ここに北海道大学 修士・専門職学位・博士の称号を授与された皆さんに対し、心よりお祝いを申し上げます。また、この日まで長い間、皆さんの勉学と研究を支えてこられた、ご家族および関係者の皆様に対しましても、心より敬意を表します。
今回の修士の学位記授与者は1,440名で、留学生が110名含まれています。専門職学位記授与者は152名です。そして、博士学位記授与者は、課程博士358名、論文博士22名、合せて380名で、この中には45名の留学生が含まれています。今回、修士、博士課程を修了された155名の留学生の皆さんにとりましては、言葉も習慣も異にする異国の地での生活は大変だったろうと思いますが、本当によく頑張り、この日を迎えることができたことを、心より嬉しく思います。
さて、最初に3月11日、午後、東北地方太平洋沖で起きた大地震と津波による東北関東大震災で犠牲になられた方々に対し、皆さんと共に、心より哀悼の意を表したいと思います。また、被災者の方々に、心からお見舞いを申し上げます。被災地での災害復旧、並びに、原子力発電所事故への対応に、身を犠牲にして努力されている方々、自衛隊員、消防士、電力関係技術者、医療関係者、地方公務員、それにボランティアの方々などに対して敬意と感謝の念を表したいと思います。
わが国はこれまで関東大震災、伊勢湾台風、阪神・淡路大震災など多くの自然災害に見舞われてきました。また第2次世界大戦直後のわが国の大都市は焦土と化し、広島、長崎は原子爆弾の投下により、甚大な被害を受けました。しかし、国民一人一人の粘り強い努力と、家族や地域の連帯、思いやりによって困難を克服し、発展してきました。
今、私たちは世代を超えて、大災害に強い町づくりや地域づくりを考える必要があります。更に、エネルギー、環境それに食料などを含めた我々自身の将来の生き方をあらためて考える機会になればと思います。
今回の大災害に対して、海外の方々からも、心強い支援、悲しみと祈りのメッセージが寄せられています。図らずも世界は一つという思いを深める機会にもなりました。
皆さんと同様に、社会に巣立っていくはずの、若い命の無念さに思いを寄せ、一日一日を大切に、明るい未来を切り拓いていってください。
さて、これから皆さんは博士課程へ進学される人、国あるいは地方の行政機関、企業や企業等の研究所、さらに大学や海外の研究機関等で研究する人もいると思います。本学で培った知識と研究のスキルを活用し、さらに飛躍、発展されることを、心から願っています。
皆さんが大学院で受けてきた教育や研究は、社会に出てから必ず直面するであろう様々な課題に対して、その解決に挑戦しようとする意欲と、自らの力で解決の糸口を得、解決までのプロセスを見い出す能力を身に付けることを意図したものです。
しかし、社会で対象とされる課題は、皆さんの大学院時代の研究内容と一致することは、ほとんどありません。真の科学や技術は想像以上に広範囲にわたり、高度で複雑であり、奥の深いものです。またそれらの理論や技術を用いて造られる製品や創作物の開発、さらには社会問題等の解決に到っては、分野の異なる研究者や技術者等の共働作業によって可能となることが多いのです。その点で、皆さん自身が大学で学んだ知識の幅を広げ、他分野の方々と、積極的に交流・議論することが大切です。
また、理系や医療系を学んだ人は、社会科学や人文科学の知識を獲得する努力が必要です。社会科学や人文科学を学んだ人は、情報処理や、統計学等 理系の基礎的分野の知識も必要です。将来も研究を続ける人は、研究により得られた成果を、多面的な観点から見直し、それが何に利活用されるかについても、思い描いて下さい。
そして皆さんの成果をわかり易く、一般市民の方々に向けて解説できるような心づもりを常に持って下さい。
21世紀は知識基盤社会といわれています。これからますます国際化が進展し、世界の情報が瞬時に集まります。世界の先端研究の成果もすぐ観ることができ、また発信もできる時代です。研究者としての道を進む予定の方は、オリジナリティーの高い研究を進める際には、その成果を急ぐことはありません。研究に焦りは禁物です。着実に、余裕を持って、一歩一歩、目的に向かうことが大切です。それが、最終的に大きな成果を得る原点だと思います。
さて、昨年の暮れ、本学にとって喜ばしいニュースが届きました。
本学理学部を卒業され、長年、工学部の教授を務められた、鈴木 章名誉教授が、栄えあるノーベル化学賞を受賞されました。本学の学生、院生、それに若手研究者に大きな夢を与えてくれました。本学で学び、母国に帰国している留学生からも、「北海道大学で学んだことを誇りに思う。」とのメールを多数いただきました。北海道大学に関係する全ての人々にとって大きな慶びでした。
鈴木先生は、あるインタビューで、「外国では出身大学は関係ない。仕事の内容と質が問われる。私は北大にいて、不利益を感じたり、不安を持ったことは一度もない。研究者に大切なものは、他にはない思い切ったことをやるという意気込みだ。」と語っておられました。皆さん方も常に目標を高く掲げ、創造性に満ちた成果を求めるよう心懸けて下さい。
本日、各学位を授与された皆さんは、本学で得た知識と、多くの経験をもとに、これからの人生を高い倫理観と高邁な大志を持って歩んでいただきたいと思います。そして、グローバル化が格段に進むであろう将来の社会・経済等の変化に対し、柔軟な思考と、常に一歩先に踏み出す勇気を持って、進んでいただきたいと思います。
皆さんの前途に、輝かしい未来が拓けていくことを念じ、その未来を皆さん自身が切り拓き、前進されることを信じて告辞の結びとします。