平成24年(2012年) 年頭のご挨拶

 新年明けましておめでとうございます。平成24年の年頭にあたり、教職員、学部・大学院生そして本学同窓生の皆様方に、新年のご挨拶を申し上げます。

 さて、昨年の3月11日、東北地方太平洋沖合に震源を持つマグニチュード9.0の巨大地震が発生し、それに伴い大津波が我が国の北部太平洋岸を襲いました。この地震・津波による大災害は東日本大震災と命名されましたが、この震災による死者と行方不明者の総数は2万名近くとなりました。帰省中の本学経済学部の学生1名が亡くなられましたが、本学学生の実家で家屋等に大きな被害を受けた方々は多数おられました。また、福島第一原子力発電所では、主に津波により原子炉冷却システムのポンプ系統が故障し、3つの原子炉で燃料棒が溶融し、放射性物質が大気中や沿岸域に拡散したため、発電所周辺自治体住民の方々は避難生活を強いられています。

 本学では学務部に学生向けの救援本部を設置し、被災学生に対し、授業料免除措置と一時金の給付等積極的に支援してまいりました。一方、大学として東北地方に位置する国立大学法人への物的支援、被災した研究者や学生の本学への積極的受入れと研究活動支援、さらに本学大学病院医療チームの約3ヶ月にわたる東北での診療活動それに大震災被害者への義捐金集め、学生諸君の現地でのボランティア活動など、大学挙げて支援活動を進めてまいりました。今、あらためて、本学を代表して、地震、津波により被災された全ての方々、そして放射能の影響を避けて避難されている方々に対して謹んでお見舞いを申し上げますとともに、我々は被災者の方々とともに生きていくことと、大学本来の任務でもある研究の面から、巨大地震・津波の発生メカニズムの解明と、巨大災害に対する新しい防災技術の開発やまちづくりのあり方、そして災害への対応策の研究を一層加速することを約束したいと思います。また、この大災害の復旧とその後の復興、そしてそれらが我が国の再生に繋がるよう、大学挙げて努力していきたいと思っています。

 さて、あと数ヶ月で第2期中期目標期間の2年目が終わろうとしています。この第2期の本学の全ての活動を包括する基本目標は、(1)世界水準の人材育成システムの確立、(2)世界に開かれた大学の実現、(3)世界水準の知の創造と活用、そして(4)大学経営の基盤強化、の4つであります。(1)の世界水準の人材育成システムの確立では、大学の第一の使命が人材育成であることから、学生の受け入れから、世に送り出すまでの全ての過程を再検討した結果、本学独自の、今まで以上に一貫した人材育成システムの構築を目指すもので、「大括り入試」、「教養教育の一層の充実」については、すでに実施の段階に進んでいます。今後は学部の再編、学士・大学院課程を通じて、主専攻・副専攻あるいはダブル・ディグリー等、専門教育の複線化への努力が残されていますし、外国語教育の強化にも継続的に努めるとともに、学位認定基準の世界水準化については、日中学長会議や中韓学長会議がすでに機能していることから、日中韓3ヶ国から標準化に向けての努力が開始される可能性が高くなっていると思います。教員の教育能力の向上や倫理意識の高揚については、今年度は全学教育のFD研修のDVD化を高等教育推進機構が実施していますので、まもなくWEBを通して全教員が学ぶことができます。

 (2)の世界に開かれた大学の実現については、大学が世界と日本、世界と地域を繋ぐ役割を担っていますし、大学の教育と研究の評価は世界水準で測る時代となっています。大学に係わる全ての人々にとって、さらなる国際化が急務となっています。大学のキャンパス内は小さな世界となり、そこで生活するためには、異文化への理解、母国語だけではなく異なった言語によるコミュニケーション能力の向上等への努力の必要性を感じる場になって欲しいと思いますし、それが今後の国際社会で生き抜いていかねばならない国や企業が必要とする人物像でもあります。 6年前、中国北京に本学のオフィスを設置して以来、中国からの優秀な留学生が増えましたが、昨年は韓国のソウルに2番目のオフィスを設置いたしました。また、今年中にアフリカのザンビアとフィンランドの首都ヘルシンキに第3、第4の本学のオフィスを設置することが決まっています。本学の教職員、および大学院生等の皆様方にも、これらの海外オフィスを研究のため等の中継基地として積極的に活用していただきたいと思います。

 (3)の世界水準の知の創造と活用については、研究主導型の基幹総合大学である本学としては、世界水準の研究を遂行していくことは当然のことでありますし、創成研究機構を中心に、全学的な新領域・融合分野における学術的研究を開拓し、推進することも重要であります。また、本学の研究成果を産学連携本部が核となって、その活用を促進することが重要です。また、文系の先生方の研究成果を欧文で積極的に海外に発信することも支援していきたいと思います。

 (4) の大学経営の基盤強化につきましては、トップマネージメントを強化しつつ、世界に開かれた基幹総合大学にふさわしい効率的な事務組織への再編と、国際化した大学にふさわしい事務職員、技術職員の能力開発に力を入れるべきと思います。さらに、昨年の大震災の被害状況、都市における避難場所としての大学の役割等を参考に、大学の危機管理体制のあり方を検討するとともに、マスタープランを作成する必要が生じました。また、財政基盤の強化については、我が国の厳しい財政状況、高等教育に対する明確なビジョンが示されていない政治情況下で、国立大学法人の運営費交付金も、前年度末に決まるといった情況であるため、計画的な財務マネージメントがしにくい情況となっていることは、皆様方にもご理解いただきたいと思います。

 最後となりますが、平成24年が北海道大学にとって、また本学の教職員・学生の皆さん、そして本学同窓生の皆様にとって良き年となることを願って年頭の挨拶の結びとさせていただきます。


平成24年1月4日
北海道大学総長  佐 伯  浩