理系部局

○生物学II 理学研究科・教授・高畑 雅一

1.授業の目的・内容

「生物学II」は,全学教育科目として1年後期に講義形式で開講される。学部や学科に合わせた授業がそれぞれのクラスで行われている。私が担当した20組は,主に生物学科に進学するクラスで,学生は前期(I)後期(II)を通して,細胞生物学の入門的な教科書(Alberts他著"Essential Cell Biology"の邦訳)を全編学ぶ。私は2004年度にその後半を担当した。目的・内容は大学HPのシラバスを参照されたい。

2.授業実行上の取り組み・工夫

授業設計では常に体系性を重視しているが,この授業は教科書が決まっているので,授業計画もおのずと教科書の章立てに沿ったものになった。担当範囲をカバーするため,1回の授業を順に各章にあてた。方法的な取り組みとしては,次の2点を意図した。まず,生物学の授業はともすると,物質名や現象の羅列に陥りがちなので,授業中の説明は原理的なことがらに集中し,具体的な詳しい内容は学生各自が教科書を読むよう指導した(予習と復習!)。試験でも,原理的な事柄の理解と応用的思考を問い,詳細な知識やその暗記は要求しなかった。また,<基礎からの積み上げによって新しい内容や全体の理解を進める>という学的プロセスを,生物学においても明示的に学生に理解させるよう工夫したつもりである。ars topica的な思考・把握に流れがちな生物学だが,そしてそれも生物学では非常に重要ではあるが,授業では基礎訓練の一環としてars critica的思考・把握を実践するよう努力した。この実践の中で教科書のいわば隠し味として役立ったのが,私自身が学部生の頃に「異分野」の友人たちと読み合ったLehningerの"Bioenergetics"で示されていた問題意識だった。ただし,以上はあくまで私の意図であって,それらがどこまで実現できていたかは,受講学生たちが判断することである。

技術的な面では,板書をメインとしたが,筆写する必要がないように毎回ノートを配布し,必要に応じて教科書以外の図もコピーして配布した。AV機器は,いくつかの例外(動画が有効な場合)を除いて使用しなかった。毎回,授業の最後の10分程度で,学んだ内容を各自が整理できるようチェックシートへの記入を行った。重要な術語や概念,cAMPやATPなどの分子構造,細胞分裂での染色体の動態などは,教科書を見るだけではなく紙に書いてもらった。手を動かすことで理解が進み固定できると考えたからである。回収時には,気がついた間違いはその場で訂正させ,また,質疑にも個別に応じた。そのため,授業終了が遅れて学生の不評を買ってしまい,アンケートでも指摘されたので,今年度は機械的回収にとどめた。赤字訂正の後に次週返却,というパターンは変更ない。

いくつかの問題点について。まず授業用ホームページ(http://crayfish3.sci.hokudai.ac.jp/class/class.shtml)。毎回配布する資料や関連図版,試験結果などを掲示したが,学生にとって必要不可欠ではない様子で,投入したエネルギーには見合わなかった。次にグループ学習。基礎科目はいずれも馴染まないと思われる。語学の基礎と同様,個々人が頭の中で一歩ずつ理解・納得しながら自分自身の知識・概念体系として築き上げて行くしかない性質の科目である。知的好奇心を露骨に刺激する性質のものではなく,いわば,見通しのきく尾根筋に立つまでの地味な林道登高といったところか。学部学科縦割りで入学した学生たちはもう歩き始めている。最後に出欠・遅刻管理。これは騙されると分かった上で学生を信頼した。チェックシートが出欠票なので,学生の対処方法は容易に想像できる。一度だけ私の考えを言い,あとは学生の自己管理に委ねた。結果については言うまでもない。逆の不満もあったようだ。

私自身が学生だった頃の授業を思い起こして,ああはするまい,これはよかろう,と考えて授業を行ってきた。が,この頃では,ひょっとしたら,単調で退屈な授業の方が学生を学業に駆り立てる結果になるのだろうか,とも疑っている。至れり尽くせりを目指す授業が教育的に有効なのかどうか,おそらくターゲットである学生の資質に合わせてバランスを取る必要があるのだろうが,私はいまだその塩梅を判断できずにいる。


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