理系部局

○計画設計論I 工学研究科・助教授・瀬戸口 剛

1.授業の目的・内容

工学部建築都市学科の計画設計論はI〜IIIまであるが,Iは専門課程の建築を勉強し始めた2年生が,建築や都市の計画やデザインの考え方を学修する,初学者の科目である。

講義では,学生が理解しやすいように,近代建築の計画デザイン理論を教える。まず,近代建築の多くが単純な形態の様々な操作によって創造されている,計画デザインの「原則」を教える。つぎに,いくつかの「原則」からの「応用」で,様々な計画デザインのバリエーションが生まれていることを説明する。いまの学生は受験勉強の影響か,「原則」とか「鉄則」に親しみやすい。それらを先に教えて,そこから「応用」していくと,学生の思考回路にピッタリはまる。それが功を奏してか,学生からはやさしすぎると言われるほどだ。

2.授業実施上の取組み・工夫等

講義は教師と学生のコミュニケーション。「学生が知りたいこと」と「教師が教えたいこと」が合うといい。こではその両者について,感じることを書いてみたい。

1)学生が知りたいこと

工学部の学生はそれまで理数系の科目は勉強してきたが,計画デザインの学修をほとんどしたことがない。答えがひとつのものには素直に取り組めるが,いくつも解答がある計画デザイン論にはまったく自信が無い。学生は建築都市学科を志したものの,計画デザインは感覚的で,漠然としていて,つかみどころがないと思っている。そのため計画デザイン論には不安を感じている。教える側にも似たような感覚がある。計画デザインはセンスが大切で,理論的に語れるものではない,とよく考えられている。そのため,一般的なデザイン論は様々な写真を数多く見せ解説するため,いきなり「応用」を教えられることになる。これでは,すべての計画デザインが特殊解と,学生には受け取られてしまう。そこで,講義では前述したように「原則」を教えることに力を注いでいる。

2)教師が教えたいこと

学生に迎合するばかりではいられない。計画デザイン論は実は積み上げの理論である。歴史的にみれば,ある時代の計画デザインの考え方は,次の時代に必ず大きな影響を与える。それまでの理論が全部覆されることは無い。これは計画デザインの表層のみでなく,その時代の社会的背景や技術の進化といった深層に目を向けなければ気が付かない。講義では計画デザインの考え方と,その時代の社会思想や美術の潮流,技術のレベルなどとの関連を説明する。しかし,この部分は学生にすぐには理解されない。学生は断片的な事象をつなぎ合わせることが不得手だからだ。そのため講義では,計画デザインとはある時代や個人から断片的に生まれるものではないことを,しつこく伝えている。

3)キーワードを伝えてストーリーを教える

毎回講義のなかで,最後の5分間はまとめを話す。一時間半の内容を,キーワードを使って復習する。黒板を使って,講義中に書いたキーワードをつなぎ合わせて立体的に説明する。学生には「また同じことを話している」という顔をされる。今の学生はキーワードで学修することに慣れている。しかし,ストーリーでものごとを理解することは不得手だ。そこで,「学生が知りたいこと」(原則)のキーワードを黒板上に散在させ,彼らの意識と共通の土俵をつくる。つぎに,これらのキーワードを背景と現象,原因と結果などの,因果関係でつなぎあわせてストーリーをつくり,「教師が伝えたいこと」を学生の目の前で組み立てる。ライブ感覚の講義にすると学生に伝わりやすい。これには古臭いが黒板がもっとも適している。パワーポイントでも試してみたが,画面上のランダムなキーワードをつなぎ合わせて,ひとつのストーリーに組み立てる表現が苦手である。

自分自身もそうだが,大学の講義で覚えている内容は意外に少ない。学生が社会に出てから,実際に計画デザインの仕事に携わったときに,講義の内容をいくつ覚えているかが本当の評価だろう。

図

図 講義の一環で取り組む「光をデザインする」試み。小さなBOXのなかで,自分が考える「光」をデザインしてみる。学生はデザインの面白さと理論を同時に体感する。


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