比較政治学は各国の政治制度と政治過程の比較検討をとおして政治についての理解を深めることを課題としてきた。しかし,近年では,経済政策や福祉政策をめぐる政治過程など,政治,経済,社会をまたがる複合的な問題群を比較の対象として重視するようになり,いわば比較政治経済学的な傾向が強まっている。これは,一方ではたいへん幅広い領域をカバーする議論となることを意味しており,一歩誤ると焦点のぼやけた拡散的な講義になってしまう危険がある。しかし他方では,うまく議論を組み立てると,これまで学生諸君がばらばらに学んで相互に結びつかないでいた知識を連携させ,クロスワードパズルを完成させるように政治経済の全体像を示すことができる。うまくいったときと,いかなかったときの落差は大きい。
この講義では,だいたい次のような工夫をすることで,講義の凝集力を維持しようとしている。
第一に,若者と雇用の問題,ジェンダー平等の問題など,できるだけ身近な切り口から少しずつ問題を拡げていくかたちで議論をすすめることである。
第二に,第一の点とも関連するが,比較分析の対象としてアメリカ,スウェーデン,日本という大きく異なった政治経済をとりあげ,政治経済のありかたがいかに若者や女性のライフスタイルを違ったものとしているかを強調して,関心を喚起することである。
第三に,映像資料をなるべく多く使うことである。自分で短く編集したものを使って,講義の流れになじませることが大事だと思っている。各国利益集団や行政のウェブサイト等もなるべくみせる。
第四に,レポートの活用である。履修者が少ない時は,すべてのレポートの要点に一言コメントを付したものをプリントして配布するなどしたが,履修学生は増えた現在はなかなかそれが難しい。そこで代わりにある種の「ドリル」型レポートをやっている。それは,具体的な設問を多く設けたレポートに講義時間中に回答させるもので,その際,周囲に座った学生と相談をしながら回答させることで,学生間で議論をするように仕向け,それが問題を主体的に考える機会となるようにしている。
それでも学生によっては,なかなか講義が「つぼ」にはまらず,興味を持てないまま議論がすすむ場合もあるようである。そのような学生に対しても少人数であればなんとか対応できる。今回の学生評価は,履修学生数がかなり少ない条件でのものであった。しかし,カリキュラム改革があってこの講義の配当学年が代わり,履修学生数が大幅に増えた。レポートの方法を変える必要に迫られたのもそのためである。今後は,この新しい条件のなかで,コミュニケーションの密度をいかに維持できるか,考えていかなければならないと思っている。