有機化学3(講義)
薬学研究院・橋本 俊一
| 【授業の目標】 | 有機反応は,反応機構の上からは置換,付加,脱離,転位反応の4つに分類される。一方,モノを創る有機合成化学では,炭素−炭素結合形成反応,官能基変換反応,酸化・還元反応の分類が支配的となる。この授業ではまず初めに,飽和炭素上の求核置換反応について2つの異なる反応機構を取り上げ,一般に有機反応が反応式で提示される程単純でなく,実際には多岐にわたる要因により影響を受けること,また,それらの理解無くしては望みの反応だけを起こすことが出来ないことを学ぶ。有機化学Uでカルボニル化合物は求電子試薬として機能することを学んだ。したがって,求核試薬であるエノラートはハロゲン化アルキルとの求核置換反応のみならず,極めて容易にカルボニル化合物に求核付加する(アルドール反応)。これらの炭素−炭素結合形成反応は,有機合成における骨格構築反応として大変重要なものである。総括として,標的化合物の合成法を考える。基本的な有機反応をしっかり身に付けることから,有機合成への第一歩が始まることを理解してもらいたい。 |
| 【到達目標】 | 1. 求核試薬によるカルボン酸誘導体の求核付加・脱離を経る置換反応と,ここで学ぶ飽和炭素上の求核置換反応の識別を明確にする。 2. SN1機構とSN2機構を経る求核置換反応のそれぞれの特性を十分に理解する。 3. 求核置換反応に及ぼす要因を概ね説明することが出来る。 4. カルボニルα-位のプロトンが何故容易に引き抜かれるのかを理解する。 5. アルドール反応及びClaisen反応の反応機構を理解するとともに,それぞれの反応の適用限界を予測することが出来る。 6. 活性メチレン化合物を用いる有機合成が不滅な理由を述べることが出来る。 7. これまで学習した有機反応を駆使し,標的化合物の合成法が立案出来る。 |
| 【授業計画】 | 1. 飽和炭素上の求核置換反応:SN1機構とSN2機構,反応の立体化学 2. 求核置換反応に及ぼす要因:脱離基,求核試薬,置換位置周辺の構造,溶媒 3. 求核置換反応の範囲(1):ハロアルカン,アルコール,エーテル,及びアミンの合成 4. 求核置換反応の範囲(2):イオウ及びリン求核試薬による置換,隣接基関与 5. 求核置換反応の範囲(3):ヒドリドイオン,シアン化物イオン,及び有機金属試薬による置換 6. エノールとエノラート:カルボニルα-位の脱プロトン化機構,ハロゲン化 7. アルドール反応:反応機構,適用範囲,有機合成への利用 8. Claisen反応:反応機構,適用範囲,分子内Claisen反応(Dieckmann反応) 9. 活性メチレン化合物のアルキル化:脱炭酸,マロン酸エステル合成,アセト酢酸エステル合成 10.その他の炭素求核試薬:エナミン,シアノ及びニトロ安定化アニオン,イリド 11.標的化合物の合成:シントン,合成計画と合成例 |
| 【評価の基準と方法】 | 各授業の終わりに実施する小テストの成績及び定期試験の成績で評価する。これらの重みは小テストの成績:15%,定期試験の成績:85%とする。 |
学生の自由意見