文系部局

○ 考古学(旧石器考古学) 文学研究科・助教授・加藤 博文

講義において受け手側のモチベーションは重要な要素でしょう。私の講義に関しては、聞いている学生の大半が考古学の専門ではありません。にも関わらず考古学という授業はつねに多くの学生が履修し、かつ理系も含めた他学部からの履修生も常に存在します。そのため授業計画においては専門領域の仲間内にしか伝わらない用語や概念の説明を放棄して講義を組立てる事にしています。しかし、決まりきった概説の世界では、本学の学生は満足してくれません。そこでこの科目では、なにを追及する学問なのかという問いからスタートします。そして考古学が過去の人間、およびその社会についてあらゆる角度から考察する学問であり、その対象には、経済、社会、政治、芸術など人間の作り出す諸要素が含まれていることを理解してもらいます。常に新たな発見を資料として取り込みつつ、どの学生にも関心が持てる普遍的なテーマに還元して、考古学の視点から見るとどのように解釈できるのか。その方法の多様性を説くことを中心にして、毎回の講義のテーマを考えています。

1.授業の目的・内容

平成17年度は、人類史の最初の段階「旧石器時代を考古学する」ことにしました。授業の目的は、私たち人類の特徴を理解すること。700万年という時間の中でどのように人類の複雑な社会が形成されたのかを考えることにしました。大学において学ぶ学生でも、現在の社会をとりまく民族や人種、言語や宗教という基本的な概念の意味を理解しているとはいえません。そこで最初に人類が、地球上にたった一種のみの存在であること、そしてその生物学的に一種の人類が多文化を開花させる一方で、それが原因となり集団間の衝突や戦争が勃発していることにも眼を向けてもらいました。人類史をさかのぼり、その歴史を辿ることで「ヒトはいかにしてヒトとなったのか」、「ヒトとはどのような存在なのか」を問いかけていきました。人種という概念の不当性、民族という概念の曖昧さ、宗教的行為の本質的意味、神話の意味などを考えることでそれぞれ概念のもつ意味や正当性について再考してもらうことも授業の狙いの一つでした。

2.授業実施上の取組・工夫

講義においては、次の点を重視しました。(1)学生が受講することで新たな発見を得るように工夫する。(2)常識や定説の示される課程を説明する。(3)定説もつねに批判的に検討する。上記の項目を学生自身、自ら考えられるように、a)資料として最新の成果を配布する。b)スライドやビデオを可能な限り利用する。c)解釈については、必ず複数の視点を提示する。という配慮を行いました。またある結論についても概要を説明した後、教室で何人かに受講生各自がどのように判断するのかを直接問いかけるということを行っています。授業の理解度を測るためには、2−3回の講義ごとに内容の質問と学生からの質問要望などを集めています。

こうしてみると特別に目新たしい取組みや秘訣がある訳ではありません。ただ受講することによって新たな世界が開かれるように工夫すること。聞き流すのでなく、立ち止まって問題を認識し考えること。多領域でもその学問の世界を覗いてみようという知的好奇心が刺激されること。このような点に工夫して講義内容を組み立てることは重要であると考えています。

3.そのほか

評価方法として試験はこのところ行っておりません。100名近い受講生もレポートで評価します。その中で受講生がレポートを作成する時間が不十分であると感じています。また講義の内容を仲間内で議論する時間も必要でしょう。別の先生も提案されていましたが、1セメスターの講義を15回の講義だけで終えるのでなく、概論以外の講義では、講義、ディスカッション、そしてレポート作成(小論作成)という形に分割して、学生が課題に取り組む時間の確保も検討すべきではないかと感じています。


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