1.本年度のアンケートについて

 本学は、授業内容や教育方法の改善の組織的活動の一環として、平成11年度より毎年学生による「授業アンケート」を全学的に実施し、その結果を公開している。平成15年度までは冊子体の報告書(年次報告書に掲載)が刊行されていたが、平成16年度からホームページ上のみの公表となっている。平成18年度後期から、16の設問による新アンケートが用いられている(新旧設問の対照表参照)。本報告は、新アンケートに移行後3年目の結果をまとめたものである。

回答結果の概要

■本年度の調査(平成20年度後期および平成21年度前期)は担当教員1,472名中969名が実施し、実施率は65.8%であった。専任教員の実施率は66.6%、非常勤講師の実施率は60.3%であった。アンケートを実施した授業総数は1,278で、担当教員の実施率は86.8%であった。実施率はこの数年大きな変化はなく、強制力を持たない現行制度の可能な上限に到ったものと推測される。

■総合評価(設問1〜10、設問14〜16までの評定値の平均を指標とする)は、第1回調査(平成11年度)から一貫して上昇しており、今年度の全体平均(3.86)も、昨年度(3.81)より少し上昇している。全学教育科目,専門教育科目および外国語科目の平均値も同様に、昨年度より少し上昇している。学部専門科目については、最も高い文学部(4.16)とともに、医学部と獣医学部(4.02)も4.00を上回っている。本年度は、理学部の平均値が最も低く(3.71)、文学部との差は0.45で、昨年度の文学部と工学部の差(0.27)より大きくなっている。
 昨年度より総合評価の上昇が顕著であったのは、文学部(+0.18)と医学部(+0.16)で、その他の学部は微小な変化に留まっている。学部間の差異は、授業評価が低くなりがちな科目の偏り、担当教員の入れ替わり、改善の努力など様々な要因も関与しているが、各部局でFDなど組織的な教育改善の取り組みが活発になっており(安藤他、2008)(注1)、学部専門科目の総合評価は上限近くまで達しているように見える。今後も、授業アンケートの回答結果を基礎資料として活用し、授業改善に資することが期待される。

■新アンケートには、授業全体に関する指標として満足度を問う設問16が加わった。満足度の全体平均は3.91で、昨年度の3.85からさらに少し上昇した。25名以下のクラス(4.34)の平均が最も高く、文学部専門科目(4.28)、演習科目全体(4.26)、法学部専門科目(4.12)、獣医学部専門科目および選択科目全体(4.11)、医学部専門科目(4.07)の順となっている。最も低いのは薬学部専門科目(3.75)である。

■各設問の回答肢の上位2項目(「強くそう思う」と「そう思う」)を合わせた比率も毎年上昇しており、今年度の結果を表1に示した。学生は非常にまじめに授業に出席しており(出席率80%以上が92.4%を占める)、72.6%が「教員の熱意が伝わった」、67.5%が「授業は全体として満足できるものだった」と回答している。この満足度の比率も前年度の65.2%から上昇している。回答者の72.4%が、シラバスは授業の目標・内容・評価方法を明快に示し、シラバスに沿って授業が行われたと評価している。
 「満足」と回答した学生の割合の高い科目(演習科目:80.7%、全学外国語科目:76.3%)では、授業方法と教員の行動に対する肯定的な回答が80%前後を占めている。「満足」と回答した学生の割合が低い科目(講義科目:66.0%、専門科目:66.7%、全学教育科目:69.1%)では、「満足」と回答した学生の割合の高い科目に比べて、設問5(教員の説明)では10%前後、設問8 (学生参加)では20%以上、肯定的な回答が低くなっている。わかりやすく双方向的な授業の実現のために、教員のスキル向上と教育方法の改善を組織的に行うことがなお期待される。
 授業内容が「難しい」または「極めて難しい」と感じた回答者が41.5%、「質問、発言、調査、自習などにより、この授業に積極的に参加した」が45.1%、「シラバスの到達目標を達成できた」が39.5%、「知的に刺激され、さらに深く勉強したくなった」が56.2%となっている。授業の達成感が得にくいと感じ、学習態度の消極的な学生が依然として多数みられる。このような学生を減らすことも単位の実質化の目的であり、学生の実態をよく把握し、学習意欲を高める授業内容や難易度を工夫する必要があろう。

表1 授業タイプ別「強くそう思う」と「そう思う」を選んだ学生の比率(%)
カテゴリー 項目
番号
内    容 授業形態 科目区分 全体
講義科目 演習科目 専門科目 全学教育 全学外国語
授業について 1 目標,内容,評価方法を明快に示した 71.5 80.1 72.5 72.4 74.8 72.4
2 授業はシラバスに沿って行われた 73.0 81.0 73.6 74.2 77.1 73.8
3 レポート等の作業量は適切だった 67.5 74.8 66.8 71.1 77.7 68.3
4 「C:適切」と回答した学生の% 52.7 54.1 52.5 53.4 59.4 52.8
授業方法,教員の行動 5 教員の説明はわかりやすかった 65.8 78.3 66.9 67.4 75.0 67.1
6 教員の熱意が伝わってきた 71.6 81.8 72.5 73.0 80.5 72.6
7 教員の話し方は聞き取りやすかった 68.6 81.6 69.7 70.4 77.0 69.9
8 教員は効果的に学生参加を促した 53.7 80.6 55.7 58.0 78.5 56.5
9 教員は学生の質問・発言に適切に対応した 66.7 83.8 68.0 69.2 81.3 68.4
10 黒板,教科書・・AV機器など効果的 64.9 70.7 66.1 64.5 65.5 65.5
学生の行動 11 この授業の出席率(80%と100%の合計) 92.1 95.2 92.1 92.9 95.2 92.4
12 自分はこの授業に積極的に参加した 42.6 67.3 43.8 47.7 59.1 45.1
13 授業一回あたりの学習時間 (3時間以上) 9.7 18.5 10.8 10.2 8.4 10.6
教育効果 14 私はシラバスの到達目標を達成できた 37.3 58.1 38.6 41.0 46.2 39.5
15 知的に刺激され,深く勉強したくなった 54.5 70.5 57.0 54.6 57.8 56.2
16 授業は全体として満足できるものだった 66.0 80.7 66.7 69.1 76.3 67.5
回答者数(人) 45,752 5,219 33,364 17,607 4,220 50,971

(注)黒字は70%以上,赤字は50%以下を示す。

■授業1回あたりに費やした予習・復習の時間(設問13)は、「30分以下」が41.1%, 「1時間」が29.2%、「2時間」が19.1%、「3時間」が6.0%、「4時間以上」が4.6%で、昨年度よりも学修時間は増加した。平均自修時間は1.24時間(注2)で、前期(21年度、1.25時間)と後期(20年度、1.23時間)の差はわずかである。回答者の70.3%は、授業1回あたり1時間以下しか自修をしておらず、演習科目や全学外国語科目以外は必要学修時間の充足率が50%以下である。
 本学の全学FD(教育ワークショップ)では平成17年度から「単位の実質化」をとりあげ、授業外学修を促進する授業設計の実習を行っている。授業外学修時間に関する設問は、平成18年度前期の授業アンケート実施分から、単位の実質化の進展状況を把握する指標の一つとして導入した(注3)。表2に示すように、授業外学修時間は毎年少しずつではあるが増加しており、単位の実質化の方策がある程度効果をあげていることが示唆された。学生に自修を促すしくみは分野や授業規模に応じて異なっている。引き続き、各部局や科目担当者会議などで自修時間の実態を把握し、本学の教育資源を活用した特色ある手法の開発を期待したい。

表2 授業外学修時間の推移
  回答者の比率(%) 授業外学修時間平均値(注3)
1時間以下   2時間      3時間    4時間以上
平成18年度*
(H17後期・H18前期)
78.4 13.8 4.2 3.6 1.06
平成19年度
(H18後期・H19前期)
76.1 15.5 4.6 3.8 1.11
平成20年度
(H19後期・H20前期)
74.0 17.9 5.0 4.0 1.16
平成21年度
(H20後期・H21前期)
70.2 19.1 6.0 4.6 1.24

*: 前期のみ

■学生による授業評価は、文系科目に比べて理系科目の評価が一貫して低いことが知られており、本学でもその傾向が認められる。このため昨年度から、教員の所属部局を文系と理系に分け、系別に各自の位置づけが把握できるようにした(詳細は 7.評点平均の度数分布参照)。昨年度と今年度の系別の総合評点の平均値を表3に示した。平成21年度の理系科目の平均値は、文系科目に比べて0.24〜0.33点下回っている。この差は標準偏差の約0.8倍にあたり、かなり大きなちがいである。文系科目と理系科目の授業評価の差異を考慮してフィードバックすることの意義は大きいと思われる。(注4)

   
表3 総合評価の系別の平均値と標準偏差(SD)
  平成20年度 平成21年度
平均値(SD)  範囲   授業数* 平均値(SD)  範囲   授業数*
  全体   3.87 (.40) 2.26-4.92 1,055 3.93 (.39) 2.00-5.00 1,147
  文系   4.05 (.37) 2.65-4.92 314 4.13 (.36) 2.60-5.00 343
  理系   3.80 (.39) 2.26-4.67 741 3.84 (.37) 2.00-4.72 804
専門   文系   4.05 (.36) 2.96-4.83 142 4.12 (.37) 2.60-4.79 166
  理系   3.81 (.37) 2.26-4.67 588 3.85 (.34) 2.00-4.72 641
教養   文系   4.04 (.38) 2.65-4.92 172 4.13 (.35) 2.86-5.00 177
  理系   3.77 (.47) 2.54-4.65 153 3.80 (.46) 2.15-4.71 163

*: 非常勤講師の担当授業は除外

■昨年度まで、満足度の高い授業の中から、学生が何らかの面で特に優れていると判断している意見の多い授業を抽出し、学生の自由意見を紹介してきた。しかし、本学では平成15年度から、授業規模と分野(理系と文系)を組み合わせて「授業アンケートによるエクセレント・ティーチャーズ」を選定し、その授業の紹介も行っている。そこで、今年度からエクセレント・ティーチャーズによる授業紹介の中で、学生の自由意見も紹介することとし、授業の抽出は行わないことにした。高い評価を受ける授業の特性を、学生の視点も加えてとらえることにより、さらに多くの授業改善のヒントが得られることが期待される。

■平成19年度後期から授業アンケートの裏面の自由意見の記入欄を改訂し、授業について「良かったと思う点」「改善した方がよいと思う点」「その他、気づいたこと」の3点に分けて記入する方式を採った。学生には感想や要望をより具体的に書くことを求め、教員には三つの側面のそれぞれに対する意見や感想の一覧が通知されるため、自由意見を次の学期の授業の改善に活用しやすくなったと思われる。

■「良かったと思う点」に関する自由意見の一部は、「授業アンケートによるエクセレント・ティーチャーズ」の授業紹介の中で公開されるが、「改善した方がよいと思う点」に関する自由意見は、担当教員以外に公開されることはない。しかし、改善点に関する自由意見の中には、授業の基本的な側面に関する要望が多数見うけられる。そこで、注意を喚起する意味で、多数意見を表4にまとめた。声の大きさ、黒板やパワーポイントの文字の大きさや提示時間など、教授技法の向上の必要性が示された。
 日本の大学教員の多くは、板書や発声法など教育技術の基本を学ぶ機会のないまま授業を行っており、基本的な授業技術に関して表4に示されたような学生と教員の認識のズレが生じていると思われる。教授技法の向上にむけた支援方策の検討を行う必要がある。

表4 自由意見「改善した方がよいと思う点」に多くみられる回答
1.教員の説明の仕方
 ・声が小さい,後ろまで聞こえない
 ・話が聞きづらい
 ・早口
2.授業の進め方
 ・時間配分を考えて欲しい(後半になると授業のスピードが速くなったり,その都度スピードが違ったりする。)
 ・授業の開始が遅れる,延長が多い
 ・専門用語や定義,新しい用語・単語,高校の知識では足りない部分について詳しく説明してほしい
 ・騒がしい学生には注意をしてほしい
 ・小テストやレポートの解答がほしい
3.黒板の使い方
 ・文字が小さい,薄い,雑,汚い
 ・読みづらい
 ・板書が早い
 ・板書をすぐに消す(ノートに書ききれない)
 ・黒板の下まで書かれると見えない
4.パワーポイント等のAV機器の使用
 ・スライド1枚の情報量,文字数が多い(ノートに書ききれない)
 ・スライドが見にくい(明かりを消す,カーテンを閉める等工夫が必要,全て明かりを消すと見づらいとの意見もあり)
 ・スライドを切り替えるスピードが速すぎる
 ・文字が小さくて読みにくい
 ・文字や背景の色によっては見えにくい
 ・ポインターが見えにくい

単位の実質化と総合評価

■本学は、「単位の実質化」の実現にむけて、平成18年度入学生よりGPA制度の本格的運用と履修単位数の上限設定を導入し、平成17年度から全学FD(教育ワークショップ)で「単位の実質化」を重視した授業設計の実習を行うなど、積極的な取り組みを推進している。平成21年度は、学生の70.3%が授業1回あたり1時間以下しか自修をしていない状況ではあるが、表2に示されたように、「単位の実質化」の方策は着実に効果の兆しが見える段階に入ったといえる。
 従来から、授業内容の難易度や課される作業量について、教員と学生の期待や認識に大きなズレがあることが広く知られている。平成19年度と平成20年度に続き、今年度も作業量(設問3)と難易度(設問4)、授業外学修時間、総合評価との関係について調べてみた。表5は、授業アンケートの各設問について、回答選択肢ごとの自修時間の平均値を示したものである。作業量、難易度、出席率以外の設問では「5.強くそう思う」と回答した学生の平均値が最も高くなっていることが、今年度も確認された。具体的には以下のとおりである。

■以上のことから、過去2年間と同様、「作業量」と「難易度」の回答に対する評点は、単位の実質化のめざす方向と矛盾していることが再度示唆された(注5)。しかし、表5の結果は、よい授業だと評価している学生は自修時間が長い傾向、または自修時間が長い学生は授業を好意的に評価する傾向があることを示しており、単位の実質化の効果を支持する結果といえる。これらの結果を踏まえ、授業外学修時間を増やす教員の努力が報われ、単位の実質化の目的にふさわしい、授業アンケートの設計と活用方法の検討を継続することが期待される。
 「単位の実質化」は、教員の意識や教授法の改善に加え、学生がその意義を理解していなければ実現は困難である。大多数の学生は、依然として授業外学修時間は1時間程度が「適切」と考えており、単位の実質化に相応する作業量に対しては「強く不適切」と考えている。単位の実質化が求める授業外学修時間を「適切」と感じるような学習環境と学生文化への転換が望まれる。

表5 回答選択肢ごとの平均自修時間(実質)注1)

各欄の数値は平均値、(標準偏差),回答者数を示す。網掛け部分は設問毎の最も高い平均値を示す。

設問 回答選択肢2)
内容 番号
A授業内容 授業目標,内容,評価方法が明快なシラバス Q1 1.27 1.19 1.15 1.17 1.40
(1.21) (0.95) (0.81) (0.85) (1.10)
386 782 12,797 19,293 17,354
シラバスに沿って行われた Q2 1.37 1.14 1.16 1.17 1.38
(1.30) (0.90) (0.81) (0.85) (1.08)
380 850 12,035 19,021 18,329
適切な作業量 Q3 1.68 1.30 1.18 1.19 1.31
(1.32) (0.97 (0.81) (0.86) (1.06)
969 2,379 12,741 16,776 17,848
難易度3) Q4 0.95 0.98 1.13 1.28 1.80
(0.97) (0.77) (0.80) (0.91) (1.36)
487 2,389 26,781 15,173 5,889
難易度(変換)4)   1.74   1.24   1.13
(1.36) (0.90) (0.80)
6,364   17,562   26,781
B授業手法・
教員の行動
わかりやすい説明 Q5 1.15 1.08 1.21 1.18 1.38
(1.00) (0.82) (0.82) (0.86) (1.09)
1,390 3,535 11,790 17,144 16,887
熱意が伝わった Q6 1.15 1.08 1.20 1.18 1.34
(1.03) (0.84) (0.82) (0.87) (1.06)
880 2,115 10,907 16,988 19,888
聞き取りやすい Q7 1.12 1.07 1.22 1.19 1.34
(0.95) (0.79) (0.82) (0.87) (1.07)
1,341 3,240 10,685 15,936 19,561
参加を促進 Q8 0.99 0.93 1.11 1.25 1.52
(0.90) (0.71) (0.77) (0.90) (1.16)
1,332 4,465 16,308 14,730 13,926
適切な対応 Q9 1.19 1.14 1.13 1.12 1.40
(1.10) (0.89) (0.79) (0.86) (1.09)
665 1,706 13,652 16,761 17,933
適切な機器使用 Q10 1.18 1.07 1.20 1.12 1.38
(1.04) (0.80) (0.82) (0.87) (1.10)
1,135 3,231 13,121 16,492 16,721
C学生の行動 出席率5) Q11 0.82 1.23 1.53 1.20 1.23
(0.86) (0.94) (0.86) (0.90) (0.96)
223 400 3,252 11,060 35,819
積極的な授業参加 Q12 0.72 0.82 1.07 1.37 1.81
(0.63) (0.60) (0.73) (0.92) (1.27)
1,878 5,648 20,311 13,562 9,323
D教育効果 履修目標の達成 Q14 0.80 0.89 1.09 1.40 1.86
(0.74) (0.64) (0.74) (0.94) (1.34)
1,789 5,494 23,380 12,650 7,306
知的刺激,学習意欲向上 Q15 0.95 0.95 1.12 1.23 1.58
(0.88) (0.71) (0.76) (0.87) (1.20)
2,000 4,217 16,044 16,150 12,365
満足度 Q16 1.14 1.02 1.15 1.18 1.41
(1.04) (0.79) (0.78) (0.86) (1.11)
1,378 2,641 12,480 16,825 17,455
注1) 0.5=30分以下 1=1時間 2=2時間 3=3時間 4=4時間以上として計算した
注2) 1=強くそう思わない 2=そうは思わない 3=どちらともいえない 4=そう思う 5=強くそう思う
注3) 1=極めてやさしい 2=やさしい 3=適切 4=難しい 5=極めて難しい
注4) 1=極めてやさしい+極めて難しい 3=やさしい+難しい 5=適切
注5) 1=20% 2=40% 3=60% 4=80% 5=100%

新アンケートの設問について

■平成19年度から使用されている新アンケートの設問のうち、5つの設問は、旧アンケートの設問を改訂したものである。この5つの設問の平成19年度〜平成21年度の回答結果を、旧設問の回答結果とともに図1に示した。どの設問も、毎年好意的な回答が増えており、授業改善の成果が認められる。新設問14以外の新設問については、それぞれの改訂の意図した方向に機能していることがわかる。

■新設問2は、シラバスが授業に関する教員と学生の了解事項であり、授業はシラバスに照らして評価することが期待されていることを教員と学生の双方に強く認識してもらうことを意図して改訂され、わかりやすい設問になっている。簡潔な表現に改訂された他の3つの設問(設問5、設問10、設問15)は、明らかに旧設問の内容と同等とはいえない。しかし、これらの新設問は焦点を絞ったことで、授業改善の手がかりが明瞭に示され、教員が自覚しやすい内容になっている。

■新設問14については、「そう思う」と「強くそう思う」の回答比率が他の設問に比べ顕著に低い状況が続いており、授業の達成度が実際に低い状態にあるのか、設問の意味を学生がとらえにくいのか、など内容的妥当性を検討する必要がある。最近の大学評価においては、教育の成果を示す根拠資料の提出が求められており、当該設問が適切な指標として用いることができるかどうか、検討が不可欠である。

■新アンケートには設問16(授業全体としての満足度)が加わり、設問14(達成度)、設問15(知的な刺激)とともに授業の「教育効果」を多面的に把握することができるようになった。これら3設問間の相関関係も明確に認められる。改訂されたどの設問も、現在の大学評価において重視される側面を測る指標であり、「単位の実質化」および研究基幹大学にふさわしい授業アンケートのあり方、活用方法を検討する中で、引き続き教育効果の設問の妥当性を検討する必要があろう。

図1 新旧設問の回答結果 の比較

数値は「強くそう思う」と「そう思う」を選択した回答者の比率を示す

         
旧 設問2 授業は体系的に行われた
新 設問2 授業はシラバスに沿って行われた
旧 設問5 授業は、難解な理念、理論があっても、 わかりやすかった
新 設問5 教員の説明はわかりやすかった
設問2 設問5


旧 設問7 黒板、スライド、OHP、ビデオ、教科書、プリント等の
     使われ方が効果的であった
新 設問10 黒板、スライド、プリント、AV機器等の使われ方が
     効果的であった
旧 設問13 授業の履修目標を達成できた   
新 設問14 私はシラバスの到達目標を達成できた
設問10 設問14


旧 設問15 授業により、新しい知識、考え方、技能を習得でき、
     さらに深く勉強したくなった   
新 設問15 授業により、知的に刺激され、 さらに勉強したくなった
設問15

  1. 安藤厚他(2008) 「北海道大学の各部局におけるFD活動の実施状況―平成20年1月調査の結果―」『高等教育ジャーナルー高等教育と生涯学習―』第16号、pp.101-112
  2. 30分以下=0.5、1時間=1、2時間=2、3時間=3、4時間以上=4、に変換して計算した。
  3. 山岸みどり (2008) 「北大生の自習時間―平成18年度前期授業アンケートの分析からー」 『センターニュース』第74号、高等教育機能開発総合センター、pp.1-5
  4. 文系と理系は、授業担当教員の所属部局で区別しているため、若干ではあるが、文系の授業数に理系科目が含まれ、理系科目の授業数に文系科目が含まれる。
  5. 北海道大学評価室(2008)「学生による授業アンケート報告書」(平成19年度)
    北海道大学評価室(2009)「学生による授業アンケート報告書」(平成20年度)

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