平成16年度・「知床学」教育プログラム

  文学研究科ではこれまで、知床を中心とした道東圏のフィールドにおいて考古学・地理学・保全生態学・博物館経営学の調査研究を進めてきました。
  平成16年度からは、文学研究科の知床研究室でフィールド体験型一般教育演習「遺跡を探そう」を実施しています。また総合博物館では、学生が中心になった企画・制作した企画展「アイヌ民族楽器?ムックリ・トンコリ?」(平成15年度)を開催し、毎年継続しています。これらの企画展を通して、地域と連携した参加型の博物館活動の手法を開拓しました。
  これらの実績を踏まえ、本プログラムでは、道東地域の博物館を核として、フィールドワーク・博物館展示への学生の能動的参加、博物館における展示を通しての恒常的な地域貢献を結びつけ、地域住民の学校教育・生涯学習と北大の学生教育との有機的な関連づけをはかります。

全学教育科目 複合科目 「アイヌ民族の文化をもっとよく知ろう」
対象 1、2年生
開講時期 平成16年度後期
参加人数 300人
内容   アイヌの伝統的な衣食住に関する文化やアイヌが抱えている現代的課題、および今後のアイヌ文化の保存・継承に関したテーマで展開する。13人の講師が担当する(うち学外講師9人)

学部科目 「文化人類学演習」
対象 文学部2、3、4年生
開講時期 平成16年度前期
参加人数 20人
内容   フィールドワークの考え方・手法についてテキストで学習した後、学内をフィールドに簡単なフィールドワークを体験する。今年度は、北大構内(クラーク像周辺、総合博物館、植物園)を訪れている観光客・地域住民に対して、北大のイメージや展示内容に対する感想などを、アンケート用紙またはヒアリングにより調査する。

大学院科目 「北方人類学特別演習」
対象 文学研究科大学院生
開講時期 平成16年度前後期
参加人数 15人
内容   大学院生各自が自分の研究テーマに関する展示の企画案をプレゼンテーションし、コンペを経て、一つの規格案をゼミとして選定する。その後、約半年かけて、ゼミ参加者メンバー全員で規格案をブラッシュアップし、北大総合博物館の企画展として完成させる。今年度は、「人々の暮らしとオシラサマ信仰」、「道具が伝える日本人の知恵とかたち-置戸町所蔵・秋岡コレクション-」を開催する。

全学教育科目 一般教育演習 「遺跡を探そう」 
開講時期 9月25日から9月30日(6日間)
参加人数 全学教育一般教育演習受講生16人、大学院生のTA4人、
引率教員1人、地元斜里町立博物館の学芸員1人
目的   考古学において「遺跡」とされるものは、過去において人々が自らを取り巻く環境の中で残した生活の痕跡である。そこには生活の拠点としての集落のみではなく、祈りの場や狩の場そして死の場など様々な場を含んでいる。本授業では、このような人々の生活の場としての遺跡が周辺環境の中でどのように形成され、そして現在どのように残されているのかを野外実習作業を通じて授業参加者に理解してもらうことを第一の目標としています。
  長い人類の歴史の中で、自然的に人為的に遺跡を取り巻く環境は変化している。とりわけ都市化した空間において遺跡を取り巻いていた自然環境を感じることは不可能である。この授業では本来の遺跡を取り巻いていた自然環境を体感し、出土遺物のみではなく空間としての遺跡を理解してもらうために実習先を選定しました。
内容   実習地は、知床半島、斜里町に所在する以久科北海岸遺跡である。この遺跡を含む一帯は、国有林で景観保存地域となっており、ある意味で遺跡が残された当時の環境を多く残している空間である。現在、多くの自然を残す北海道においても先史時代の集落を周辺の自然環境を含めて理解できる環境を有している場所は多くない。また以久科北海岸遺跡は、斜里町中心部から東方に伸びる海岸砂丘上に位置する遺跡で、数多くの竪穴住居址が埋没しきらない状態で確認されている集落遺跡である。竪穴住居の構築時期は、推定で縄文文化期から続縄文文化期さらにオホーツク文化期や擦文文化期にわたる。遺跡の全体像は不明であるが、複数時期にわたり集落が営まれた大規模な複合遺跡であると推定されている。以久科北海岸遺跡はこの意味において、貴重な自然遺産と文化遺産が複合した空間といえる。
  授業は、この砂丘上に残されている踏査により学生自身が竪穴群を確認し、正確に測量する。自ら歩き、高さ、方角、景観、水場との距離など立地を観察することから、どのような場所が生活の拠点として選択されているのか、遺跡を周辺環境の中に位置づけ環境との関係で理解する。
  今回の実習では、参加者を4つの班に分け、1)遺跡周辺の地形測量、2)竪穴住居址の測量、3)竪穴住居址の時期特定のための試掘調査の3つの作業を体験してもらった。本年度の授業では新たに竪穴住居を10軒確認・記録し、4軒の竪穴住居の年代が10世紀に位置付けられること、そして竪穴の窪みの上に近世アイヌ期のクマ送りの儀礼空間を1ヶ所確認することができた。

講座風景

アイヌ民族の文化をもっとよく知ろう 北方人類学特別演習
11月26日のテーマ
「旧土人保護法と共有財産訴訟」
講師はアイヌ民族出身の小川隆吉氏
成果である企画展
「人々の暮らしとオシラサマ信仰」
(北大総合博物館)会期は10/26〜11/14

「遺跡を探そう」
竪穴の時期を確認する
(トビニタイ文化、10世紀)
確認された近世アイヌ期のクマの送り場と
出土したヒグマの頭蓋骨



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