| 北海道大学・オークランド大学共同国際シンポジウム 北海道:自然環境と人間社会との共生をめざして |
|---|
| 札幌セッション・講演内容(シンポジウムパンフレットより) |
|---|
|
||
|---|---|---|
| 侵略的外来種(IAS)は、その地理的孤立状態と多数の固有種の存在ゆえに、ニュージーランド特有の問題となっている。意図的であれ偶発的であれ、ニュージーランドに持ち込まれたIASは、実際に多くの固有種の絶滅をもたらし、またさらに多くの種を絶滅の危機へと追いやっている。IASはその生物的影響に加えて、経済ひいては社会そのものにも影響を与えうるものである。孤立した島国であることから、生物安全保障(Biosecurity)はニュージーランドにとって特に重要である。諸外国にみられるような多くの深刻な有害生物や疾病とは未だ無縁であるものの、国際貿易と交通の発達によって、生物安全保障システムには負担がかかっている状況といえる。 IAS対策は、大別すると予防・早期発見/迅速対応・制御・根絶の四領域からなる。予防対策には、IASの国またはその種が未だ存在していない国内の特定の場所・地域への侵略を妨げ続けることが含まれる。早期発見/迅速対応対策は、新種のIASの根絶が実現可能でかつ低コストで行える場合、侵入後でき得る限り速やかにそれを発見・特定するために肝要である。これまで一般に新たな種が定着した際の最良の方法は、その種の他地域への拡大を抑制・防止することとされてきた。制御対策は、当該種の生息密度を規定値以下に抑えること、またIASの分布を特定の地域に制限することをともに含む。根絶は、IAS固体群全体を完全かつ恒久的に排除することを指す。これは、通常侵入の初期段階もしくは、再侵入が妨げられている島々においてのみ達成可能である。ニュージーランドにおいては、IASの根絶に成功したプロジェクトの例は多くみられる。 IAS管理のさらなる改善には、それらの影響を受けた領土同士の協力と効果的なコミュニケーションが求められる。これらの中には、農業・林業・環境保全・健康産業・観光業が含まれている。また、予防と検知能力の向上には、国際間協力も不可欠である。 |
|
||
|---|---|---|
| 侵略的外来種(IAS)をめぐる多くの議論は、対象種の生物学的・生態学的特性や、外来種とそれらを「受け入れる生態系」との間に生じる生物的相互作用に焦点があてられてきた。しかしながら人間の性質や知覚というものはIAS問題において極めて重要な役割を担っているということも事実である。つまりIAS問題をめぐるその要因と解決策には多くの人文・社会科学的側面が関与しているのである。例えば、IASに対する意識の高揚は、利害関係者の管理対策への参加や取り組みを促すのに必要不可欠である。逆に言えば、IAS問題に対する認識の決如は、管理の失敗につながり、さらなるIASの導入や、ルールや規則の無視、時には対策までもが反対されることになりかねない。IAS問題への認識及び理解の促進や、必要な予防・根絶管理計画への支持が得られるようにIAS問題を適切に描写することが重要であり、そのためには政府機関、市民団体、研究機関などの間での協力が必須となる。 本発表では、人間の持つ特性が、IAS問題発生の一因となる一方で、その問題の解決に向けても極めて重要な役割を果たすということを、いくつかの事例から紹介してみたい。これはまた、どのような協力が、外来種の侵入によるさらなる生物的多様性損失の予防へとつながるのかという探求でもある。 |
|
||
|---|---|---|
| 協働管理は、保護区の政策決定に対する社会的不安と地元住民の非協力的姿勢を緩和すると同時に、地域生態系や地域文化を反映しうる政策を構築する技術である。しかし、その試みは、常に地元住民と公園管理者との摩擦を解消してくれるわけではない。本発表では、ニュージーランドのテ・ウレウェラTe Urewera国立公園における協働管理の今後の展望に触れながら、協働管理に対する地元住民の要望について整理・検討する。土地からの疎外という歴史的遺産は、現在のマオリ(ニュージーランド先住民)と保全局との関係に大きな影響力を及ぼしている。このため、協働がマオリの抱く不満に対する解決策として提示されるなら、それはマオリにとって到底容認できない非現実的な提案となる。インタビューと文書による調査の結果、協働に対するマオリの意識は、多くの場合、協働とは相容れない性質のものであることがわかった。つまり協働は、マオリにとって政治闘争により獲得した勝利というよりは、むしろテ・ウレウェラ地区のtangata whenua(土地の人々)が生物中心主義的であるゆえに、歴史を無視した政策によって更なる負荷を押し付けられる可能性のあるものとして認識されていたのである。 |
|
||
|---|---|---|
| 20世紀末の数十年、新しい国立博物館を含め、いくつもの博物館が次々と開館した。これらの博物館はオーストラリアやニュージーランドのような国々にヨーロッパの古い国立博物館とそれらを区別し、文化的展示を通していかに自らの国を表すかということを再考するための機会を与えた。注目すべきことは、先住民文化に関する展示がこのプロジェクトにおいて重要な役割を担っているということである。 ここでは新しいニュージーランドの国立博物館Te Papa Tongarewaを事例研究として取り上げる。 Te Papa博物館はそれ以前の国立博物館と首都国立美術館を合併しひとつの施設にし、先住民であるマオリ族Tangata Whenua、と開拓移民Tangata Tirtiの両方の文化的品々を集めた。両方の文化を収集し、保全することがこの博物館の役目である。 この博物館は、ニュージーランドに受け継がれる二つの文化を反映するようなかたちでコレクションを提案しており、これは展示スペースは別々だが、中央のくさび型のスペースによってつながっていて、そこにはニュージーランドの人々にとって統治権の共有が約束された1840年のワイタンギ条約に関する展示品があり、両者を結びつける共通の歴史について物語っている。また、Te Papa博物館では、すべてのニュージーランド人の集まる場所として博物館に造られた独自のMaraeにおいてもマオリ文化の祭典が執り行われている。 |
|
||
|---|---|---|
| 近代化によって地球規模での人間や物資の移動が盛んになるにともない、本来は生息していないはずの生物が世界各地に定着して様々な問題を引き起こしている。こうした外来種問題は、農業被害をはじめとする人間社会への直接的な影響に加え、在来生態系への影響も危惧され、現在では生物多様性保全にとって最も警戒すべき脅威の一つとして世界的にも注目される問題となっている。 北海道では、現在全国的に問題視されているブラックバスをはじめとして806種の外来生物がリストアップされており、今後の対策が検討されているが、中でも栄養段階の上位に位置するアライグマへの対策は、在来生物への影響の大きさからみても緊急の課題となっている。 アライグマは北米原産の動物であり、愛玩動物として導入されたが、気性の荒さと手先の器用さによって各地で遺棄や逃亡が相次ぎ、平成15年度段階では全道212市町村のうち、108市町村から確認情報が得られている。年間3000万円に達する農業被害や住居侵入の他にも、人獣共通感染症の媒介のみならず、キツネ・タヌキといった生態的地位の近い動物との競合や、アオサギをはじめとする鳥類への捕食や生息環境の攪乱、ニホンザリガニやエゾサンショウウオといった希少種の捕食が確認されてきた。 在来外来種への対策が遅れていた日本では、有害鳥獣捕獲による対策が取られてきたが、この手法は対症療法的対策に過ぎず、外来種除去に向けた科学的データに基づく対策構築が望まれる。北海道では野外からの排除を最終目的とした「北海道アライグマ対策基本方針」が策定され、行動計画に基づいた排除事業が進められている。これは、沖縄・奄美のマングースと並ぶ日本では先駆的な事業ではあるが、効果を上げるまでには至ってはいない。 その理由としては、対策費用の問題もあるが、日本では一部の被害地域を除いては外来種対策の重要性が理解されていないという問題も大きい。ただ単に外来種を排除するという表面的な措置ではなく、在来種・生態系の保全という理念がその根底にあるという外来種対策の本質が一般には充分浸透しておらず、そのために対象外来種の生命を奪うという問題にのみ議論が集中する傾向にある。 外来種の侵入は、生物多様性の単一化につながる。ニュージーランドでは、本来の豊かな自然を取り戻すために積極的に外来種対策が行われている。北海道の自然もまた生物たちの永い営みの中で培われたものである。我々はこの北海道の豊かな自然をどのような形で次世代に受け渡すのか、今一度真剣に考え直すべき時期を迎えている。 |
|
||
|---|---|---|
| 1.日本の自然保護法制の特徴 日本は、ニュージーランドの1.4倍の国土に、約1億2000万人が住む人口稠密な地域であるが、生物多様性にとみ、哺乳類57種32%、高等植物1700種の35%が固有種である。しかし、戦後の工業開発による水質・大気汚染、大規模な基盤整備、農地造成事業、自然林の人工林への改変などによって動植物種の良好な生息地が破壊・分断化され、種の消滅が急速に進行した。 2.日本の自然保護法則の歩み 戦前の日本の法制は、狩猟の規制、学術的価値の高い植物、国家的な価値のある自然景観の保護など、国立公園をのぞき、点的な保護にとどまるものであった。戦後、アメリカ占領軍の指示を受け、政府は、より広範囲の自然保護に取り組むこととなったが、制度自体に大きな変更はなかった。1980年代以降、自然保護運動が高まり、とくに国有林管理に対する批判が強くなった。その結果、国有林における保護林制度の拡大、白神、屋久島などの世界遺産登録などが実現した。1990年以後、日本政府は、生物多様性保護への取り組みを開始し、さらに、鳥獣保護に野生鳥獣管理手法が導入され、国立公園の管理目標に、生物多様性保護が明示された。 3.日本の自然保護法の課題 日本の自然保護法制の特徴として、@総合性、統一性欠如、A省庁間の強い縄張り意識、B開発官庁の自然保護に対する無関心、C少ない生物・生態学の専門家、D環境省の限られた権限、E情報公開、住民参加の欠如、F生物多様性保護を基礎とした協働的意思決定手続の必要性、などあげることができる。すなわち、環境基本計画や生物多様性国家戦略は、環境省が所管する計画であるにすぎず、他の省庁の政策やプロジェクトに対しては拘束力をもたない。また、自然資源管理に関係する省庁は自己の事業を独自に進めており、政策や事業の調整はなされていない。大部分の開発官庁は、自然保護にはほとんど関心がなく、これらの官庁には、生物学、生態学の専門家もほとんどいない。 環境省は、国立公園を含む自然保護区の管理、狩猟鳥獣の保護管理、絶滅のおそれのある種の保護などの権限を有しているが、十分な予算と人員をもたず、強い発言力を有する特定の利害関係者を説得するだけの力量もない。国の開発官庁は、開発事業に関する情報公開に不熱心で、行政手続に対する利害関係者の参加も、特定の業界関係者に大きな参加の機会があたえられ、住民・環境団体にはわずかの発言の機会しか与えられていない。 4.北海道の自然保護行政 北海道は、北海道自然環境保全指針の制定、絶滅危惧鳥類の保護増殖事業、ヒグマ・エゾシカの管理、アライグマなどの外来種対策、公共事業の見直し、さらには環境影響評価条例や絶滅のおそれのある種の保護条例の制定など、全国の都道府県の中で、最も熱心に自然保護に取り組んできた経緯がある。しかし、国の行政機関である北海道開発局が、千歳川放水路計画のように、北海道の意思に反して環境破壊型の大型公共事業を計画し、その実施に邁進することがしばしばみられること、北海道内部においても、部局ごとに各種の事業が実施され、それらに環境担当部局が関与する仕組みが十分でないことなどから、総合的な行政組織としての特徴・メリットを十分に活かしていない。政策全般を環境保全、生物多様性保護の視点からレビューし、それらを統合するために、トップレベルあるいは日常的な行政レベルにおいて、自然資源を管理する部局横断型の組織、あるいは独立した統括組織が設置されるべきである。 |
|
||
|---|---|---|
| 1990年代以降OECD諸国の環境保全対策は大きく転換しつつある。各国の社会経済条件や自然環境に応じて具体的な政策の内容は異なっているが、その基本方向は「地球が主体となって、縦割りをこえて総合化をはかり、最新の科学的な根拠に基づき、様々な利害関係者が協働して環境保全に取り組む」とまとめることができる。 ニュージーランドでは、1991年に資源管理法を制定し、自治体が主体となって総合的な環境保全を進める体制を整備している。この制度の下で多くの自治体は積極的な環境保全政策を展開しており、上述のような環境保全政策の転換に先進的に取り組んでいるといえる。一方、日本でも縦割り行政システムや分権化の遅れなど様々な障害がありながらも、各地で地域に根ざした新たな環境保全の取り組みが行われつつある。 本報告ではニュージーランドと日本の事例をいくつか紹介しながら、新しい環境保全を進めるためにどのような取り組みが必要なのかについて明らかにしたい。 ニュージーランドと日本において「優良」とされる事例をみていくと、いくつかの共通点がある。 第一は、環境保全をまちづくり計画の中に組み込んでいる点である。「これからどのような地域づくりをめざすのか」という議論の中に環境保全を位置付けることにより、地域づくりそのものが環境保全につながることとなる。 第二は、日常生活・経済活動の中に環境保全を組み込もうとしている点である。単に、事業として環境保全を行うのではなく、森林管理・農業経営といった日常的な行為そのものを環境保全の観点から変えていこうとしている。 第三は、環境保全の担い手を育成し、広げている点である。環境保全に取り組む中で、人々が鍛えられ、ネットワークを広げ、地域が環境保全に取り組む能力を高めてきている。様々な人が知恵を持ち寄ることによってより良い環境保全の政策をつくり、実行することができるのである。 第四は、市民による徹底的な議論をもとに政策・計画を策定し、さらに実行・評価までを協働で担おうとしている点である。こうした点で、行政が主体となった政策のあり方が大きく転換し、多様な主体が協働で政策を形成し実行するようになりつつある。またこれと関わって指摘できることは、地域コミュニティの活動が活発なところほど環境保全の取り組みが進みやすいということである。 まちづくりはうまくいってないが、環境保全だけはうまくいっているところはどこにもない。自分たちの住む地域をいかに住みやすくしていくか、まちづくりをどうするかを真剣に議論することが、地域が主体となった環境保全への第一歩となる。 |
|
||
|---|---|---|
| 安全で高品質な商品を安定的に供給すること。私たち「食」に携わる者が果たすべき最低限の責任です。したがって健康に悪影響を与えることが分かっている食品はいうまでもなく、生産方法を理解していない食品も絶対に扱うべきではありません。私たちは食肉についてより深く学ぶためにアレフ牧場、アレフ農場を設立し、健康な土づくり牧草づくりから品種の選定、改良などに積極的に取り組み、豊かな経験と知識を蓄えてきました。アメリカの20倍、金額にして全世界の使用量の47%を占めるとまでいわれる農薬漬けの日本の農業状況のなかで、健康を支える食品を自身をもって提供するためには、まず自分たちの手で安全な食品を確保する方法を模索しなければならなかったのです。このように、私たちはつねに外食産業として正しくあろう、もし誤りやごまかしがあれば、それをひとつひとつ無くしていこう、と努力を続けてきました。それは損得よりも善悪の判断を重視すること、いいかえれば資本の論理を人間の論理でリードすることです。 このようにして私たちは品質への責任を果たすために、食材の研究、生産から加工、流通、そして消費、サービスのすべての段階においてイニシアチブを発揮できる体制、すなわちバーティカル・インテグレーションシステムをつくりあげました。ビールや乳製品などは独自に生産しています。しかしこれからも農業との連携がなければ十全に機能するものではありませんし、農業もまた加工、流通、消費の実体を無視しては成り立ちえない時代を迎えています。もとより食べ物を扱う点において農業を外食産業は一体です。ですから私たちはいま、農業と外食産業を含めた、より大きな「食産業」を構想しています。そうしてこそ、健康を支える食、将来の疾病から人々を守る食の提供が盤石なものとなります。「食」とは「人」を「良」くするものではなければならないのです。 農業に深くかかわっていくと、おのずから自然の大切さが痛感されてきます。いままで子供たちやその次の世代により豊かな自然を残していくために、自然と共存した永続性のある企業活動の在り方を追及していくことも、私たちの使命であると考えています。資本の論理をリードする人間の論理に、さらに自然の論理をプラスするということです。これまでも私たちは省資源、省エネルギーのためのさまざまな取り組みを展開してきましたが、現在ではさらに一歩進んでトータルな意味での循環型企業活動の実践、エコロジカル企業の実現に取り組んでいます。 ヘンリー・デーヴィット・ソローは「釣り人やハンターとして森に入った人も、森から出てくるときは詩人や博物学者になっている」という意味のことを語っています。アレフも「食」から社会という森に分け入り、やがて農業や環境といった問題にかかわるようになりました。そしていま、従来の外食企業の姿からは想像もできないほどの大きな変貌を遂げつつある。 |
|
|