北海道大学植物園

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北大植物園における研究・教育活動

 北大植物園では、管理・育成する植物に関する研究や、研究フィールドとして利用していただくための基礎的なデータの収集などの活動とともに、北海道大学での植物学研究において、育成や資源の保全に関わるサポートを行っています。また、所属する教員は、植物園内だけではなく、冷温帯の野生植物を対象に、植物分類学や自然環境の保全や復元に関する研究活動を行っています。ここでは、その一部について紹介します。

レブンアツモリの育成・増殖

 レブンアツモリソウは、北海道の礼文島にのみ自生する希少なランで、美しい白い花が特徴です。かつては島内のあちこちで見ることが出来ましたが、希少なこと、観賞価値が高いことなどから過剰に採取されて数が激減しました。そのため現在では国(環境省)および北海道から絶滅危惧植物に指定されています。北大植物園は、このレブンアツモリソウを保護し、育成方法を確立するための研究を行っています。
 ラン科植物の種子はとても小さく、自力で発芽する栄養分すら持っていません。自然状態ではそれぞれ決まった共生菌(カビの一種)から栄養分を摂ることが必要です。本園では種子に共生菌を人工的に接種する方法で発芽させ、育成することに成功しました。現在では花が咲くまでに成長し、花の時期(6月上旬)には一般の来園者に公開しています。
 また、日本では秋田県の一部にしか自生しないチョウセンキバナアツモリソウの保護育成もおこなっており、レブンアツモリソウと一緒に花を見ることができます。

開花したレブンアツモリソウ

自然林の長期モニタリング

 植物園の一区画である自然林は、開拓以前の札幌周辺の植生が残る場所として、あまり人の手を加えずに長期にその変化を観察している区画です。もとはハルニレの林でしたが、1997年の調査では、低木や林の下にハルニレはなく、イタヤカエデが増加していることがわかっていました。

 2004年の大きな台風によって、自然林の大半の樹木が被害を受け、林の上に大きな空間ができました。この空間によって、暗かった林の下に光が届くようになり、植物たちの新たな生存競争が始まりました。植物園では、倒れた樹木も撤去せず、この林が今後どのように変化してゆくのかを調査してゆきます。

 写真は、自然林内にどのような種が飛んできているのかを調査するためのシードトラップというものです。

 

自然林内のシードトラップ

高山植物の増殖

 北大植物園は、日本では比較的冷涼な地域に存在することから、冷温帯、高山帯の植物の増殖や遺伝資源の保全の役割を担うことを使命としています。地球規模の温暖化が進んでいる状況で、特に冷涼な気候を好む高山植物はその存亡が危ぶまれており、植物園の役割は大きなものとなっています。
 そこで当園では、環境省や都道府県、文化庁、森林管理署の許可を受けて、現地の植物に影響のない範囲で種子の採取を行い、随時植物の導入を行っています。特に石灰岩地に生育するキタダケソウや蛇紋岩地に生育するヒダカソウなど特殊な土壌に生育するものについては、できるだけ現地の土壌と同じ環境にして播種・育成を行い、札幌の気候に適応した株を選抜して種の保存に努めています。
 高山植物を展示しているロックガーデンでは、岩組みの下に水がたまる工夫を施して、札幌の夏の暑さを和らげており、テシオコザクラ、ムシャリンドウ、ヒダカミセバヤなどの絶滅危惧種を展示・育成しています。

 

キタダケソウ

湿原の保全・復元に関する研究

 北海道内には低地・高地に大小さまざまな湿原が数多く残されています。その中には比較的良好な状態が維持されているものがある一方で、排水や河川の直線化、周辺の農地などの影響を受け、湿原の植生が変化しているところもあります。また近年は、エゾシカの生息密度が増加したことによる湿原植生への悪影響も指摘され始めています。さまざまな要因が湿原に与える影響を調査・評価し、湿原の保全や復元につなげていくための研究として、フィールド調査や植物園内設備を使った埋土種子発芽実験などを行っています。

 

乾燥し、ササが侵入している美唄湿原

開花記録

 植物園では、様々な植物の開花記録を調査しています。特定の個体を対象に、毎年開花した日を記録されたデータは、長期的な気候変動や植物の振る舞いの変化の基本的な材料となります。

 データは『北大植物園技術報告・年次報告』で毎年公表しています。

 

潅木園の調査個体

 標本・資料管理部門では、明治初期から収集され続けている学術標本に関わる調査・研究を行っています。現在は、所蔵標本の歴史情報の整理に力を入れ、標本情報の充実を図っています。

鳥類標本管理史

 植物園内の博物館には、1万点を超える鳥類標本が所蔵されています。これらは、明治期から現在に至るまで収集され続けてきた、重要な研究資源です。しかしながら、長い歴史の中で標本情報が欠落したり、混乱している部分があります。これらの問題に対して、明治期からの標本管理台帳や標本ラベルの調査を行い、信頼できる情報の確認、復元に取り組んでいます。

 この結果を基に、標本目録の刊行を行う予定になっています。

 また、鳥類標本だけでなく、民族資料や魚類標本などについても、歴史的背景を明らかにして、利用しやすいものとする調査を進めています。

 

明治時代の標本

明治時代の標本カード

博物館関係者が遺した古写真

 植物園には、大正期から昭和中期にかけて所属した教員が撮影した写真が多数遺されていました。これらは、人に見せるための写真ではなく、調査・研究用の写真ですが、長い歴史を経て、過去の植物園や札幌、北海道を知ることができる貴重な資源となりました。これらの写真の調査を行い、社会に還元できるようにするプロジェクトを進めています。

 

博物館の展示の様子

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