北 方 民 族 資 料 室 展 示 室
 北方民族資料室では、北海道の先住民族であるアイヌを中心に、周辺の北方諸民族の資料を展示しています。

 当館の所蔵民族資料には、次のような特徴があります。
 資料が大規模に収集された時期として、1880年代の開拓使の博物館時代と1930年代の民族学研究が盛んだった時代の二つのピークがあります。お雇い外国人の影響を強く受けた開拓使の博物館時代に収集された資料は、国内の他の博物館では数少ない明治前期のアイヌ文化資料が、収集地、収集年代の情報とともに保存されていて、研究資源として、また文化の復元材料として貴重なものとして位置づけられています。また、1930年代には、「アイヌ文化」として一括りにするのではなく、北海道内各地における相違を把握する目的で、同じ資料が各地で収集されました。これらの資料は、研究に協力していただいたアイヌの古老の方々の名前とともに保存され、展示利用とともに現在も研究に利用されています。

 しかし、これらの資料には負の側面があることも認めなければなりません。北海道の「開拓」とは、先住民族のアイヌ文化を否定し、本州に生きる「和人」の価値観で、北海道を変えてゆくことでした。開拓使が収集したアイヌ文化資料は、当時の北海道の様子を示すためのものであり、開拓使主導の産業化が進むにつれて、進んだものと対比するための「遅れたもの」を示すための材料として使われたこともあります。また、アイヌ文化を「変えてゆくべき」異質な存在としてみていたことから、収集資料には本来のアイヌ文化そのものではなく、和人にとって「異質」なものを重点的に集めていた可能性も否定できません。

 1930年代には、上記したようなアイヌ文化の否定がさらに進み、アイヌ蔑視や差別が色濃く存在していました。このような時代背景の中で、研究者たちはアイヌ文化は「滅びゆくもの」という、今では考えられないような思想を持っていました。彼らはアイヌ文化そのものの保護ではなく、失われる前に記録するというスタイルで研究をしていたと考えられます。それゆえ、この時代の収集資料もアイヌ文化がもつ「異質」な部分や、研究対象となるテーマが選択されて収集された可能性が高いものです。

 展示室前に設置してある来館者のご意見ノートでは、展示資料の時代性や特殊性の強さから、アイヌ文化を否定するような表現が散見されます。しかし、過去から現在に至るアイヌ民族およびその文化、また和人とのかかわりを理解するためには、この資料室の展示だけではなく、他の博物館や施設、文献などを総合的に利用して、理解を深めてゆく必要があることについては、ご承知おきいただきたいと考えています。

展示室案内

 展示室内は、アイヌの住宅をイメージして中央に囲炉裏が設置されています。展示ケースでは、住宅模型や、生活道具、儀礼用具、狩猟用具、衣類などに分類して資料を展示しています。
 展示室奥の祭壇の展示ケース内では、1935年に旭川で撮影された熊送りの映像を放映しています。


狩猟用具のコーナー

衣類展示コーナー

展示室の様子

放映している熊送り映像

サハリンアイヌの革帯

サパウンペ(冠)
Last Updated: 2008/07/08