シリーズ2・北海道の国立公園(1992年)

6.釧路湿原国立公園

 昭和62年7月31日に、釧路湿原はわが国で28番目の国立公園に指定されました。この国立公園は、従来の国立公園が観光や利用を目的とした風光明媚な山岳や海洋、湖沼などをその指定対象としてきたのに対し、湿原だけを対象としている点が特徴です。これは今回の指定の目的が、湿原の生態系の保護と湿原生態系のメカニズムの解明や湿原の動植物の研究にあるからです。

 釧路湿原の面積は約29,000ha(公園の面積は26,861ha)で、湿原としては日本で最大です。湿原の母体は潟湖に由来する古釧路湖で(従ってその昔は釧路湿原は海だったのです)、そこに泥炭が長い年月をかけて堆積し、釧路川をはじめとする大小様々な河川が湿原を蛇行しながら流れる現在の形になりました。釧路湿原の景観を最も代表する植生は、ヨシ群落とハンノキ林です。この2つの群落は、天水(雨水)によってかん養されるミズゴケ類を主体とする高層湿原とは異なり、河川水とともに土砂が湿原内に運び込まれるような富栄養的な湿原に生育します。このような湿原を低層湿原といいます。釧路湿原には、高層湿原もかなり分布していますが、低層湿原がもっとも広い面積を占めています。

 3,000年もの間現在と変わらぬ湿原の姿が維持されてきましたが、近年約20年の間に湿原内の植生は変化しています。これは、湿原周辺部の農業的利用のために湿原に注ぐ河川の直線化や河道の整備などが進められ、土砂や農地に由来する栄養塩類の湿原内への供給量が増えたためと考えられています。

ハンノキ
(Alnus japonica)