シリーズの最後に本年6月にラムサール条約登録湿地となった、霧多布湿原と別寒辺牛湿原について取り上げます。霧多布湿原は北海道厚岸郡浜中町に所在し、指定面積は2,504ヘクタール、厚岸湖・別寒辺牛湿原は北海道厚岸郡厚岸町に所在し、指定面積は4,896ヘクタールです。
霧多布湿原は太平洋に面する部分に発達した約4,000ヘクタールの湿原で、中央部の高層湿原約300ヘクタールは、大正11年に「霧多布泥炭形成植物群落」として天然記念物に指定されています。6月下旬から 7月中旬にかけてはエゾゼンテイカ、ワタスゲ、センダイハギ、クシロハナシノブなどが咲き、近年は花の湿原として知名度が上がっています。この湿原では保全のためのいくつかの新しい試みが行われています。まず湿原をほぼ南北に分断する形で通っている道々の改修工事の際に、学術調査結果をもとに湿原の水環境を損なわないような工夫が道路に施され、成果を上げています。次に、海岸沿いの約400ヘクタールの帯状の地域は、民有地であるために何の規制もないので、有志が結成する「霧多布湿原ファンクラブ」という団体が、その会費で民有地を借り上げ湿原の保護をはかっていることです。このユニークな試みはこれからの自然保護に一石を投じるものとして高く評価されています。
一方、別寒辺牛湿原はその大部分がヨシ群落とハンノキの湿地林に覆われていますが、上流域にミズゴケ群落の発達する約100ヘクタールの高層湿原が分布しています。指定地の中核となるのは全長約56 キロメートルの別寒辺牛川なのですが、北と南の流域だけが登録湿地に指定され、中流の約6キロメートル沿いの約550ヘクタールは除かれてしまいました。この分断指定の陰には、高速道路の建設計画があるのです。中流域は生態系として重要性が薄いからというのが環境庁の説明ですが、別寒辺牛川という一連の生態系を考えた場合、上流から下流までの全域の指定が最も望ましかったと考えられます。
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エゾゼンテイカ
(Hemerocallis middendorffii var.esculenta)
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