湿った林の下や、林縁などにはえ、夏から秋にかけてカブトのような紫色の美しい花をつけているのがキンポウゲ科のトリカブトです。トリカブト属(Aconitum)の植物は、約300種もあり、北半球の暖帯から寒帯(多くは温帯)に広く分布しています。変異が強くて種の境界が明らかではないため、分類学者泣かせの属となっています。洋の東西を問わず、トリカブトほど毒草として名高いものはなく、多くの民族によって根が矢毒に使われてきました。アイヌの人たちは(樺太を除く)クマやクジラをとるのに矢毒として使っており、漢の時代の中国では矢毒用に調整したトリカブトのエキスを戦争に使ったそうです。トリカブトの毒の本体は、アルカロイドで、それらは強毒性のアコニチン系のものと、低毒性のアチシン系のものの2グループにわけることができます。これらの毒成分は根以外に、茎や葉、花、花粉にも含まれています。そのため毎年、北海道や東北地方では山菜シーズンになると、主にニリンソウと見間違えたトリカブトの食中毒事故が起こります。植物体は根ごと冬に枯れてしまいますが、翌春のためのいくつかの芽をつけた塊根(子根)か、宿存する地下茎が残ります。母根を漢名で「烏頭(うず)」(乾燥させるとカラスの頭のように見える)、子根をブシまたはブス(附子、母に付く子の意から)と呼び、重要な薬用植物とされています。花期は夏〜秋で、両性で左右相称、花びらのように見えるのは実は萼片で5枚あり、頂萼片はかぶと状になり、2枚の側萼片はほぼ円形〜倒卵形、2枚の下萼片は楕円形または長楕円形をしています。花弁は2枚で、頂萼片の内側にかくれています。「鳥兜」という名は、その花の形が雅楽を奏する伶人のかぶる鳳凰の頭をかたどった冠に似ているからといわれています。
本州ではハナトリカブト(Aconitum chinense)が観賞用に栽培されています。北海道には約10種あり、特にエゾトリカブト、オクトリカブトなどが道内の山林で普通に見られます。種類と産地によってその毒性が異なるとも言われています。
草本分科園内の標本は、この毒の研究者であった故杉野目晴貞教授のコレクションが元になっています。
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エゾトリカブト
(Aconitum yesoense)
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