鮮やかな紅色と甘酸っぱい香りでケーキを飾るイチゴ(Fragaria grandiflora)は、江戸時代末期にオランダ人によって初めて日本に伝えられたもので「オランダイチゴ」とも呼ばれます。バラ科イチゴ属に属する多年生草本で、学名の"Fragaria"は「香る」を意味し果実が芳香を持つことから名付けられたようです。日本にも自生する野生のイチゴが数種あり、古くは「枕草子」に登場し当時すでに食用としていたようですが、もちろんオランダイチゴのように立派なものではありませんでした。18世紀のヨーロッパで、北米東部原産のバージニアイチゴ(F. virginiana)と南・北米西部原産のチリイチゴ(F. chiloensis)との自然交雑から生じた大きな実をつける品種が、オランダイチゴのもととなりました。日本に伝播した当初は、毒があるといわれ嫌われていたようです。
葉は縁にギザギザのある長さ5〜8?、幅4〜6?の倒卵形の小葉3枚からなっており、裏面は白っぽく見えます。全体にちぢれた毛を密生し、根際から走出茎(ランナーとも呼びます)を長く伸ばして、この節に子株を生じ繁殖します。5月ごろ5枚の花びらからなる直径2〜2.5?の白い花を咲かせ、おなじみのかわいらしい実をつけます。この果実は砂糖やミルクをかけて生食されるほかジャムなどに加工されますが、赤い肉質の部分は花托(花の付け根)が肥大したもので、子房(めしべの下部)が成熟してできた"真の果実"は表面のくぼみに付着している粒の一つ一つです。
植物園内の草本分科園では、2種類の野生のイチゴを見ることができます。樺太から北海道、本州の中部以北にかけて分布しているノウゴウイチゴ(F. iinumae)は、7〜8枚の花びらからなる直径約2?の花をつけ、果実には微香があります。もう一方のエゾヘビイチゴ(F. vesca)はヨーロッパ、アジアの原産ですが、移入してきたものが北海道西南部で野生化しています。花は直径約1.3?、蕚(がく)が反転していて、芳香のある小さな軟らかい実をつけます。
|