甘酸っぱい香りとサクサクした歯触りで親しまれているリンゴ(Malus pumila var. domestica)は、世界各地の温帯で広く栽培されているバラ科リンゴ属の落葉果樹です。原産地であるヨーロッパ・西アジアでは4000年以上の栽培の歴史があり、聖書やウィリアム・テルの弓の的、グリム童話の白雪姫など数多くの神話や伝説、物語に登場しています。長さ5〜10?の広楕円型をした葉は縁がギザギザしていて若葉には両面に軟毛がありますが、後に上面は無毛となります。桜前線から一週間ほど遅れて、芳香のある直径2.5〜3?の淡紅色を帯びた白い花が枝先に5〜7個集まって咲きます。品種は極めて多く、果実の大きさは1個200g前後の「紅玉」や300g前後の「ふじ」から「世界一」のように 700g以上になるものまで、また果皮の色も紅、紅縞、黄、緑とさまざまです。
江戸時代、日本では直径3.5?ほどの小さな紅色の果実をつける中国原産のワリンゴ(M. asiatica)が栽培されていましたが、明治初期に「国光」「紅玉」を含む75品種がアメリカから本格的に導入されたのをはじめとして、大正になると世界の2代品種「デリシャス」「ゴールデン・デリシャス」が輸入されました。昭和に入ってからは国内でも品種改良が盛んに行われるようになり、「陸奥」「王林」「ふじ」「つがる」など数多くの品種が作出されました。当初、海外から導入された品種はワリンゴと区別するためにセイヨウリンゴまたは果実が大きいことからオオリンゴと呼ばれましたが、品質のよいセイヨウリンゴはワリンゴの栽培を圧倒しリンゴといえばセイヨウリンゴを指すようになりました。ワリンゴは現在、庭木としてわずかに植えられる程度です。
植物園内にある高山植物園(ロックガーデン)の近くでも、リンゴ属に分類される2種類の美しい花を5月下旬に見ることができます。本州中部以北および北海道に自生するエゾノコリンゴ(M. accata var. mandshurica)は、リンゴ属の中で最も耐寒性の強い種類といわれておりリンゴに似た白い花をつけます。もう一方のハナカイドウ(M. halliana)は中国中部原産で濃い紅色のつぼみをつけ、開くと淡紅色になり垂れ下がるように咲きます。いずれも果実は1?以下と小さく、庭木や盆栽として観賞されます。
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