シリーズ10・園内で見られる身近な北海道の植物たちIII(2000年)

12.オオバナノエンレイソウ

 春先に明るい林の下や湿った草原などに群落をつくり、白い大きな花を上向きに咲かせるオオバナノエンレイソウ(Trillium kamtschaticum)は、北海道の本格的な春の到来を告げる花として知られています。本学のシンボルマークにもこの花のデザインが使われ、北大の寮歌にも「雲ゆく雲雀に延齢草の 真白の花影さゆらぎて立つ」と歌われています。高さ15〜40?になるユリ科の多年草で、太くまっすぐに伸びた茎の頂に広卵形で長さ7〜17?の葉を3枚、プロペラの羽根のように輪生させます。 5月ごろ葉の基部から直立する1本の花柄の先に直径5?ほどの白い花をつけます。学名のTrilliumが「3を基数としたユリ」を意味しているように、この花は3片のがく、3片の花弁のほか各器官も3が基数になっています。

 オオバナノエンレイソウの種子ひとつひとつには、エライオソームと呼ばれる白色の甘酸っぱいゼラチンのような物質がついています。アリはこれを目当てに種子を自分の巣へと運び、エライオソームだけを食べて種子を巣の外に捨てます。捨てられた種子は親と離れた新しい土地でその一生をスタートさせることになります。これは足を持たない植物がアリを利用してできるだけ広い範囲に子孫を残そうとする手段といえるでしょう。こうして地面に落ちた種子は、翌春(1年目)に発根し2年目になって親に似ないヘラ状の1枚葉を発芽させます。この後4〜5年間は1枚葉のまま暮らし、その後ようやく3枚葉となりますが、花を咲かせるにはさらに数年かかります。このようにオオバナノエンレイソウは発芽してから最初の花をつけるまでに10〜15年もかかるのです。その後は少なくても10年間ほぼ毎年花を咲かせるといわれていることから、 1個の種子が芽吹いてから枯死するまでの寿命は20〜50年であろうと予測されています。

 植物園内のエンレイソウ実験園南側ではオオバナノエンレイソウの他に、エンレイソウ(T. apetaron)、コジマエンレイソウ(T. smallii)、シロバナエンレイソウ(ミヤマエンレイソウ、T. tschonoskii)を見ることができます。また一般の立ち入りはできませんが、実験園内には日本産の8種、アメリカ産の7種が系統保存されています。

オオバナノエンレイソウ
Trillium kamtschaticum