「私を忘れないで」の花言葉で有名なワスレナグサ(Myosotis scorpioides)には、悲しい伝説があります。…ドナウ川のほとりに咲く可憐な青い花を見つけた騎士ルドルフは、恋人ベルタにこの花を贈るために勇敢にも岸を降りて摘み取りました。その時、急流が彼を呑み込み、流されながらも彼はベルタに花を投げて、「私を忘れないで」と叫びながら流れの中に消えてしまったそうです…。ルドルフの最期の言葉から、この花はForget-me-not(忘れな草)と呼ばれるようになりました。しかしForget-me-notと言うと広くワスレナグサ属を示すため、ワスレナグサを正しく表す英名には、True Forget-me-notまたは、Water Forget-me-notが使われます。この他にもヨーロッパの物語や伝説に数多く登場しており、友愛や誠実のシンボルとして広く親しまれています。
ワスレナグサは高さ20〜50cmになるヨーロッパ原産のムラサキ科の多年草で、花壇などに観賞用として栽培されていたものが逃げ出して、野生化したといわれています。伝説からもわかるように湿った水辺を好み、北海道では湿潤地のほか道ばたや空き地でもみることができます。稜角のある茎は下部で節から根を出して横にはい、上部ではよく分岐して直立します。長さ2〜5cmのへら形をした葉は互生して、茎とともに柔らかい短毛があります。ワスレナグサの花穂は、サソリの尾のように先端がくるりと巻いていることから、「サソリの尾に似た?」という意味の種小名 scorpioidesがつけられており、花が開くにつれて徐々にほどけ伸びてゆきます。萼の先端は5片に分かれ、その裂片はほぼ正三角形をしており、平らに寝た毛がまばらに生えています。花期は5〜8月で、直径6〜9cmの淡青色の花は、中心部の黄色がアクセントとなって目を引きます。
ワスレナグサ属(Myosotis)は、北半球の温帯から亜寒帯にかけて約50種あり、属名のMyosotisは「ハツカネズミの耳」を意味しています。これは葉の形が「ネズミの耳」に似て小さくて柔らかく、またネズミ色の軟毛を持つことによるようです。ワスレナグサに良く似て、沢の近くや山地の林内にみられる在来種のエゾムラサキ(M. sylvatica)は茎が基部から直立し、萼にカギ状の毛があることでワスレナグサと区別することができます。
|
ワスレナグサ
(Myosotis scorpioides)
|