日当たりのよい牧草地や、空き地、高速道路の面などを、鮮やかな黄色の花でしばしば一面を埋めつくすブタナ(Hypochaeris radicata)は、キク科エゾコウゾリナ属の多年草です。原産地はヨーロッパですが、現在では世界の熱帯から温帯にかけて広く帰化しています。学名は「ブタのための根がある」を意味し、フランスでは「ブタのサラダ」と呼ばれ、これを直訳した「豚菜」が和名となりました。どれもブタが好んで食べることから付けられた名前です。
濃い緑色の葉は長さ5〜25?、幅3〜4?のへら型長楕円形で、縁には浅い切れ込みがあるものから深く羽状に切れ込むものまで変化に富み、両面にはかたい毛が密生しているため、さわるとゴワゴワとした感触があります。葉はすべて根際から生えて、ロゼットと呼ばれる地表面に放射状に展開した形で生育します。6〜9月頃になると、花茎がひょろひょろと長く伸びて2〜3本に枝を分け、その先に直径3〜4?の黄色い花をつけます。花はセイヨウタンポポによく似ていますが、背丈が高く50?以上になること、花茎が枝分かれしていること、葉に毛が密生していること、などの点から容易に区別することができます。英名のCat's-earは、この毛の生えた厚みのある葉を「猫の耳」に見立てたことによります。
葉が地面に張り付くように生育する性質から踏みつけに強く、また刈り取っても残りやすいためにすぐに再生して花を咲かせます。さらに種子と根茎の両方で増殖し、生育が早く、加えて多年草であることから、繁殖能力はきわめて旺盛です。日本では1933年(昭和8年)に札幌近郊で初めて確認され、現在では北海道から北日本を中心とした各地に広がっています。特に牧場やその周辺で多く見られることから、輸入された牧草の種子または飼料の中に混入していたこの種子が、発芽して定着したものと考えられています。
エゾコウゾリナ属としてまとめられるブタナの仲間は、ヨーロッパから北アフリカ、南アメリカに約100種類が分布しています。このうち北海道のアポイ岳の蛇紋岩地に特産するエゾコウゾリナ(H. crepidioides)は、高さ15〜40?、6〜7月にかけて黄色の花をつける多年草です。ブタナは園内の草本分科園、エゾコウゾリナは高山植物園で見ることができます。
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