シリーズ13・ロックガーデンを彩る高山植物たち(2003年)

2.タカネナデシコ

参考:日本の野生植物(平凡社1981)ほか

 過酷な高山環境のもと、優美で繊細な花を咲かせることからその名が付けられたタカネナデシコ(高嶺撫子 Dianthus superbus var. speciosus)は、ナデシコ科ナデシコ属の多年性草本です。その姿はナデシコの名にふさわしく、種小名のsuperbusは「すばらしく立派な〜」、変種名のspeciosusも「華やかな〜」を意味しています。高さ10〜30?ほどで、やや白味がかった緑色の葉は長さ3〜5?、幅2〜5?と細長く、1対ずつ向かい合ってつきます。茎の先に1〜3個つく花は、直径約4?、淡紅〜濃紅色で時に白花もあり、5枚の花びらの先端は、細かく、かつ深く切れ込んで糸状になっているのが特徴的です。また花びらの付け根には、紫褐色の軟毛が密生してよく目立ち、花の中心に蛇の目模様を描き出しています。

 本州の中部以北から北海道、千島、サハリン、朝鮮半島、中国東北部、ヨーロッパにかけて広く分布し、高山帯の岩場や草地に見ることができます。低地の海岸や草原に生えるエゾカワラナデシコ(D. superbus var. superbus)の高山型で、エゾカワラナデシコよりも背丈が

低く、花の切れ込みもより深いのが特徴ですが、両者ともに変異が大きく、中間型もあって区別が難しい場合もあります。また秋の七草の一つに数えられ、一般にナデシコと呼ばれるのは、本州から九州の低地や河原で見られるカワラナデシコ(D. superbus var. longicalycinus)のことで、中国原産のカラナデシコ(別名セキチク D. chinensis)に対してヤマトナデシコとも呼ばれます。このほかナデシコ科ナデシコ属の仲間は花が美しいことから、カーネーション(D. caryophyllus)をはじめ、観賞用として栽培されている種も数多くあります。

 本園の高山植物園では、6月上旬から下旬ごろにかけてタカネナデシコの花を見ることができます。またこの時期は、青紫色のミヤマオダマキ(Aquilegia flabellata var. pumila)や、ピンク色のイブキジャコウソウ(Thymus serpyllum subsp. quinquecostatus)、黄色のキンロバイ(Potentilla fruticosa var. rigida)なども咲いて、高山植物園の一年の中で最も華やかな季節を迎えます。


タカネナデシコ
Dianthus superbus var. speciosus