シリーズ13・ロックガーデンを彩る高山植物たち(2003年)

4.タチギボウシ

 夏の日差しが降り注ぐ山間の草原や湿原で、すっと伸びた花茎に涼しげな薄紫色の花を順に咲かせる植物は、ユリ科ギボウシ属のタチギボウシ(Hosta sieboldii var. rectifolia)です。ややうつむき加減に咲く清楚な花に加えて、青々とした美しい葉も魅力のひとつです。和名の「立擬宝珠」は、つぼみの形が擬宝珠(ぎぼし)(古い橋や寺院の欄干(らんかん)につけるネギの花の形をした飾り)に似て、葉が立っていることに由来し、また種小名のrectifoliaも「直立した葉の〜」を意味しています。

 根際から立ち上がる葉は、長さ約20?、幅6〜7?の先がとがった長楕円形で、長い柄を含めると全長30〜40?になります。葉の縁はやや波打っており、縦に走る葉脈がよく目立ちます。初夏から晩夏にかけて、株の中央から1mほどになる長い花茎を伸ばし、淡紫色から濃紫色をした長さ4?ほどの花を数多く付けます。本州の中部以北から北海道、千島南部、樺太、シベリアに分布しており、平地から高山にかけての湿地や草原、湿った原野に生育し、ときに群生します。タチギボウシの若芽は、春の山菜としてお浸しや酢味噌和えなどにされるほか、アイヌの人々は葉の柄の部分を刻み、ご飯やお粥に入れて炊き込んだそうです。しかし若芽の姿が有毒植物のバイケイソウ(Veratrum grandiflorum)とよく似ているため、誤って食べて、体のしびれ、血圧低下、めまいといった中毒症状を引き起こす事故が少なくありません。区別は大変難しいため、判断がつきにくい場合には、採らない、食べないという心掛けが重要です。

 園内の高山植物園には、タチギボウシのほかにシロバナタチギボウシ(H. sieboldii var. rectifolia form. albiflora)が植栽されています。ギボウシ属(Hosta)としてまとめられるこれらの仲間は、日本や中国など東アジアの原産で、20〜40種あるといわれていますが、花の色や形、葉の大きさなど、その変化はきわめて多様で、また交雑しやすく中間型も多いことから、ギボウシ属の分類には様々な見解があります。

参考:植物目録1987(環境庁自然保護局編)ほか

タチギボウシ
Hosta sieboldii var. rectifolia)