青白い緑色の葉の上に、濃紅色のかんざしを刺したような花をつけるヒダカミセバヤ(Hylotelephium cauticolum)は、ベンケイソウ科の多肉植物です。日高から十勝、釧路地方のみに分布する北海道固有種で、山地から海岸沿いにかけての岩場に見られ、ときに群生して晩秋の岩場を濃いピンク色に染めることもあります。和名は日高地方に多い‘見せばや’の意味ですが、この‘見せばや’とは‘見せたい’を意味する古語で、美しい花をみつけ「君に見せばや」と感嘆したことに由来しています。またこの仲間の科名にもあるベンケイソウの名は、抜き捨ててもなかなか枯れない強い性質を、武蔵坊弁慶にたとえて付けられたそうです。ヒダカミセバヤも性質は丈夫で、病害虫の心配もなく本州でも比較的育てやすいことから、近年は山野草として観賞用に栽培されることが増えてきました。しかし一方の自生地では年々減少傾向にあり、環境庁の『2000年版レッドデータブック』によれば「絶滅危惧(きぐ)?類(絶滅の危険が増大している種)」に指定されています。推定される現存数はわずかに5,000個体、さらに100年後の絶滅確率は100%といわれ、その主な要因に園芸用の採集、護岸や林道の道路工事などがあげられています。
ヒダカミセバヤの草丈は5〜15?程度と小型で、地下茎を這うようにして伸ばし、茎は斜上もしくは垂れ下がるため、株はマット状に広がります。茎に1〜2枚ずつ付く葉は、長さ1〜2.5?、幅0.7〜1.8?の小さな卵円形もしくは楕円形で、 2?ほどの厚みがあります。青白い緑色にやや紅紫色を帯びた葉は、全体に滑らかで、縁にはゆるやかな波状のきょ歯があります。秋になると直径約1?、濃紅色の5枚の花弁を星形に広げた花が多数集まって、球形の花序を茎の先端につけます。
園内の高山植物園では、例年9月から10月にかけて岩組に咲くこの花を見ることができます。草姿も花も、その色彩の対比も非常に美しいので、「見せばや」の名の由来にきっとうなずくことが出来るでしょう。10月中旬を過ぎて青白い葉が紅紫色に色づくころ、札幌に初雪が降り、間もなく植物園は冬季閉園を迎えます。
参考:改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物 −レッドデータブック−(環境庁 2000)ほか
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ヒダカミセバヤ
(Hylotelephium cauticolum)
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