-研究成果報告 The 10th report-





新型ソリネット、見参!

 月刊うすじり50号、ウスジリカジカ命名記念特別号に因んだ、新しい有効名 Icelus mororanis が使用された最初の研究成果報告として、7月に印刷される最新の論文を紹介します。 月刊うすじり23号の表紙に登場していたものの全貌を秘密のベールに包んでいた謎の採集ツール、『新型ソリネット』がついに登場です。しかも、今回、研究成果報告に初めて動画を取り入れました。 本論文が掲載される雑誌の冊子体や電子ジャーナルでも見ることのできない動画もぜひご覧ください。



Title:
Novel sledge nets system employing propulsion vehicles for sampling demersal organisms on sand bottoms


邦題-『水中スクーターを動力とした底性生物を収集する新型ソリネットシステム』


著者-Hiroyuki Munehara, Yoshiki Tanaka and Tomoyuki Futamura


出典-Estuarine, Coastal and Shelf Science, 83: 371-377 (2009)




【要約】  
 底性生物の効率的,定量的な採集を目的として、水中スクーターを動力としたソリネットを開発した。 本機はスキューバダイバーが操縦するソリネットで、そりフレームに取り付けられた2台の水中スクーターと方向転換できるハンドルにより,障害物を避けながら砂底を走行する。 網口には、褶曲し複雑な砂底形状にフィットするよう柔らかい生地を取り付け、その前方にはおどしチェーンを付け埋在する魚類にも対応できるようにした。 流速計、コンパス、ストップウオッチ、ダイブコンピューターの計器により,ソリネットの速度とサンプリング面積が求められ、網口にセットしたビデオカメラの映像から、採集効率も試算される。 このソリネットシステムは秒速70cm(=時速約3km)で走行し,高い運動能を持つ底生魚種でも逃がさない。 また最も優れた特長は、従来のボート曳きネット漁具では、魚の逃散により定量分析精度の低下原因となる網前方のボート音と網曳きロープがないため、精度の高い定量調査を可能にすることである。 さらに、小回りが利くため、複雑なハビタットの砂底でも調査することが可能になる。 実際に、函館市臼尻町の海岸において2年間毎月1〜2回の標本採集を行い、その結果、61種2641個体の魚類標本を採集した。 そのうち、5種が調査海域における初記録種であった。 これらの結果から、水中スクーターを動力とした新しいタイプのソリネットは、底性生物の採集に極めて有効であることが示された。





Fig.1.  水中スクーターを動力とした新しいソリネットの図面





Fig.2.  使用中のソリネットとシステムに取り付けられらた計器類。(写真をクリックすると動画を見ることができます)
撮影:佐藤長明氏





Fig.3.網口に取り付けられたビデオカメラの画面(写真をクリックすると動画を見ることができます)





Fig.4.  多数個体が採取されたA)セトヌメリ、B)スナガレイ、C)アイカジカ体長頻度




Table1.ビデオの画像に基づくカレイ類とネズッポ類の採集効率の解析結果。
(カレイ類では37%、ネズッポ類では55%で、この表には示してないが、それぞれ体長70mm、体長60mm程度まではもっと高い採集効率であった)



Appendix Table.採集された種リストと体長データ





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