研究調査報告 the 15th report
底生性小型魚類の定量採集を目的とした水中スクーターを動力としたソリネット開発
新兵器の紹介です。このソリネットについては、研究調査報告10(vol.50)と研究調査報告16(今月号)もお読み下さい。また、新兵器開発に至る裏話(今月号)もどうぞ。
著者: 宗原弘幸
出典: 海洋水産エンジニアリング (2009)11月号, 69-73
はじめに(開発目的): カレイ・ヒラメ、カジカ、コチなど沿岸に生息する底生魚類の多くは、生活史初期の浮遊生活を過ごした後、本来の生息場所に近い浅海域の砂底などに着底する。この時期の個体数は、その種の将来の資源量に相関することから、これまでにも様々な方法によって定量的な調査が試みられてきた。人力での押し網や地曳き網、さらに船を使ってのソリネットやトロールが通常使われる1)。しかし、これらの調査機材では、陸上から人がアクセスできる波打ち際、船舶を使う場合は岩礁が全く混じらない単調な砂底でしか使用できない。実際には、砂底に岩盤が混じる複雑な海底や養殖施設近辺など従来の調査機材では困難な生息地にも魚類群集が形成される。また、調査実施中も曳き網の状態把握や制御が十分でない場合、曳き網が海底から離れてしまう部分が多くなり、カレイやヒラメなど平らな魚の上を曳き網が通過し、正確な資源評価ができない2)。
このような現状で、小回りが利き、網の状態を確認しながら操業ができ、できるだけ定量的に採集可能な調査機材の開発が求められてきた。近年、レジャーダイビングや海中作業用に市販されてきた水中スクーターの性能が向上し、安全に、長時間、パワフルに稼働する機種も入手可能になった。そこで、水中スクーターを動力としたソリネットを開発し、毎月1〜2回の試験調査を2年間実施し、南北海道太平洋岸における浅海砂底域に出現する小型底生魚類の定性、定量的採集を試みた。
その結果、走行速度、航続時間などソリネットの性能は、着底直後の稚魚から全長80o程度までの魚類を採集するのに十分な能力を発揮し、試験海域での初記録5種を含む多数の魚類標本の採集に成功した。これらの結果の詳細については、海洋水産学の国際誌に掲載されるので3)、本誌においてはソリネットのスペックと試験調査の概要を報告したい。
コンテンツ
1. はじめに
2. ソリネットのスペックと組み立ておよび回収
3. 走行性能
4. 標本採集結果
5. あとがき